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「腹が減っては戦はできぬ。まだお昼ご飯食べてません」

「とりあえず、壁は作ろう」


 場所が浜辺ということもあり、壁がなければ銃弾を避けるのが難しい。


「そうね、簡易の壁が倉庫にあるかも。男性軍に建ててもらいましょ」


 さすがお嬢様。倉庫には何でもそろっているらしい。品ぞろえの良さにホッとしつつ、次には何が必要かを考える。次は、とつぶやいたところで


「腹ごしらえ」


 祭が言った。


「腹が減っては戦はできぬ。まだお昼ご飯食べてません」


 歌うように、でも恨みがましそうに言う祭に


「そういえば、そうだね」


 と笑みを返す。ご飯を用意するときに騒ぎがあったから仕方ない。今日のお昼は何にしようか。


「じゃ、友香はご飯作って。それまでは作戦会議よ」


 麗さんの声に従って、あたしは席を立つ。水木さんの部屋を出る時とは違い、今度はちゃんと自分の足で立つことができた。


 冷蔵庫を確認する。

 ナポリタンの素とか焼きそばの麺とか、簡単に作れそうなものが大量にストックされているのを発見。今日の昼は麺類に決定した。何種類かのスパゲッティを大皿に盛って、セルフサービスみたいにすればいいだろう。自分の食べたい分だけ食べられて便利だし。自分の発想に満足し、さっそくご飯を作るのにとりかかった。

 絶えず、ごにょごにょと言い合うみんなの声が聞こえている。勝手に銃撃戦を決めたにもかかわらず、真剣に勝とうと努力してくれることがうれしい。そんなみんなが大好きで、ご飯もインスタントながら美味しく作ろうと思った。



「はい、できましたー」


「お邪魔します」


 大皿に盛ったナポリタンとカルボナーラ、焼きそばをリビングに運ぶのと、藤野さんがリビングに入るのはほぼ同時だった。


「あ、どうも」


 軽く頭を下げて、ご飯をテーブルに並べる。


「急に来てくれてありがとー」


 自分の彼氏にお礼を言い、そのまま抱きつく水木さんに


「仲良しですね」


 と茶々を入れたのは麗さん。

 麗さんはカップルに対する扱いがひどい。嫌っているわけではないけれど、常にからかってくる。美優さんいわく、自分が今まで一人としか付き合ったことがない僻みだと言っていたけれど。


「友香たちには負けるわ」 


 それで打倒に言い返す水木さんも水木さんなのだが。っていうか、


「なんであたしたちが出てくるんですか…」


 お箸を並べながら言う。あたしの反応をおもしろそうに見ている水木さんをちょっと睨み返せば、


「おうおう、負けてろ」


 千尋がそう言い返して、あたしの腰を引き寄せた。


「ちょっと」


 思いのほか強い力で千尋が引き寄せるので、自然と千尋の足に乗るような形になってしまう。


「恥ずかしいってば」


 離れようとするも、千尋は放してくれない。それどころか、水木さんと似たような表情を浮かべて、あたしをうかがっている。


「からかうな」


 腹が立ったので、千尋に軽くでこぴんする。


「バカップル」


「早くご飯食べるぞ、バカップル」


 美優さんのからかうような声と、祭の素晴らしく不機嫌で棘のある声。その二つに、ようやく千尋が放してくれた。


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