「水木さんを、返して」
――こいつの、仲間?
異形のモノの声がする。
「水木さんを、返して」
殺すなんて言わせない。実験台にするとも言わせない。
それだけの思いで、震える声を必死に隠して伝えた。きっと伝わってるはずなのに。相手は何とも言わない。指一本さえも動かさない。
なんだか怖くなって唇をかみしめれば、
――公共の、電波
また、頭の中で声が響いた。
「電波が、欲しいの…?」
相手はゆっくりとうなずく。
――お前たちの持つ、影響力が、ほしい
影響力、か。
なんのために、とは聞けなかった。聞きたくなかった。
「あたしたちは、あなたたちが思っているような力を持っていない。電波だって、公共のものじゃない」
相手の意に背いたら? どうなるか、わからない。だったら、最初から状況を分かってもらっておかなくては。
こんな状況に陥っても、意外と冷静な判断ができている自分をちょっと褒めたい。
――駆け引き
その言葉に、なぜか体が反応した。
「駆け引き? 駆け引きをしろと言うの?」
尋ねれば、
――駆け引き
もう一度、同じ言葉が繰り返される。
駆け引き。おそらく、向こうが勝てばあたしたちは向こうの言いなり。あたしたちが発信する電波で、地球征服なり何なり、やりたいことをするのだろう。それに対して、あたしたちはどうしたいんだろう?
うつむいて、視界の端に水木さんが映って、覚悟を決めた。
「水木さんを返して。午後3時から、銃撃戦をしよう」
銃撃戦、という単語がでたのは、おそらく昨日の襲撃がまだ尾を引いていたから。心の奥底できっと、仕返ししてやりたいと思っていたんだろう。
「どちらかのメンバーが一人でも傷ついたところで、試合は終了。メンバーは、」
そこでいったん言葉を区切る。メンバーは、あたしと祭、美優さん、麗さん、千尋。水木さんも意識が戻れば手伝ってもらうつもりだし、できれば藤野さんも。
頭の中で、メンバーを数えてから言葉にする。
「7人ね。勝ったチームは負けたチームを言いなりにできる。これでどう?」
ゆっくりと、異形のモノがうなずく。赤い目が、ぎらりと一際鋭く光を放った。
「銃撃戦はここのビーチで。武器としては銃のみ使用。ナイフや爆弾は、持った時点で反則負けね。…銃撃戦のために、水木さんを返して」
言いたいことを言い切ってしまう。自分たちに不利なことを言ったかどうか、慎重に自分の言葉を見返す。たぶん、大丈夫だ。
――3時
すうっと、異形のモノが後ろへ下がる。いつの間にかあらわれていた船のような、けれど空中へ浮かんだ乗り物に乗りこんだ。それを見送った途端、そのまま膝から崩れ落ちる。
「っはぁ…」
息が苦しい。心臓がどくどく言っている。異形のモノと対面したという恐怖は、なかなか払拭されない。
「はぁ」
再度、大きく息を吐く。深呼吸で、少しは呼吸が楽になったような気がした。




