表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/49

「むしろ、一人でやれ」

「さて、今日は何をしましょうか」


 朝食を終えた美優さんが、あたしたちを見回しながら言う。ここ『音のファクトリー』は人数が極端に少ないため、事務的なことも専門的なことも、すべてあたしたちがやっている。


「まずは、窓の取り付けじゃない?」


 そのために千尋を呼んだんだし、と付け加えると、


「それは武ちゃん一人で十分でしょ」


「むしろ、一人でやれ」


 祭と美優さんが何気なくひどいことを言う。隣で千尋が小さく舌打ちをした。


「ミュージックビデオの処理がまだ終わってない。それに、ポスターの加工も」


 麗さんが的確な意見を言う。


「じゃ、それに決まり。友香とあたしでビデオの処理しようか」


「はい、了解です」


 基本、パソコン関係が得意なあたしは、動画の処理とか加工を任されることが多い。その分センスがないため、必ず誰かと共同する形にはなるけれど。


「ところで、うちのマネージャーはどこかしらね?」


 ふと呟いた麗さんに、誰もがそういえばという顔をした。


「水木さんは、いつも朝遅いですよね?」


 確認するように言えば、


「確かに」


 という同意の声が上がった。


「下手に起こすと機嫌悪くなるし、そっとしとこうか」


 美優さんの意見に、とりあえずみんな賛成した。


 『事務所』の札がかかったドアを開け、自分のデスクにつく。この部屋は広くて、窓が多い。西側に設置された窓からは、夕日がきれいに差し込む。リビングの隣ということもあり、ちょっと休憩をするにはちょうどいい設計だ。

 自分のパソコンの電源を入れると、起動するまでの時間に身の周りに目薬とかジュースとか飴玉などを用意した。立ち上がった画面にパスワードを入れようとして、


「あ、メガネ」


 自分の目が極端に悪いことを思い出す。引き出しをあさってメガネケースを引っ張り出すと、その中に納まる茶縁のメガネを装着し、あたしはパソコンでの作業に移った。


 複数の動画を総合して加工して、一つのミュージックビデオに仕上げていく。気の遠くなるような細かい作業。そのうえセンスもいる。

 美優さんと話し合いながら、麗さんと祭が騒ぐ声を聞きながら、作業を進める。ぶっちゃけ、細かい作業は苦手だ。あと、神経を使う作業も。つまり、こういう仕事は本来のあたしに向いていない。


 でも、仕事は仕事。


 そう割り切って、集中力がきれそうになるたびに、ジュースを飲んだり飴玉をなめたりしながら凌いだ。


 太るわよ、なんて隣からの声は聞こえないフリだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ