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沙織と、マフラーと、2人の距離感。


…いつからだろう。こんなふたりの距離感。

頬をつつくのも、腕を組むのも、手をつなぐのも、そして俺のマフラーをかけるのも、全然躊躇しないふたりの関係。


はたから見たら、まるで恋人同士のようなそれ。けれど、俺たちのそれは違う…


昔から仲のいい幼なじみだから。ただ、それだけ。そこに…恋愛感情は…たぶん、ない。



俺は沙織のことが好きだけど、好きだから沙織に触れるわけじゃない。たぶん、沙織もそうなんだろう…


だから…このままふたりはこの距離感のまま、これ以上距離が縮まることは…ないのかもしれない。


ふとそんなことを思うと、悲しくなった。そんな時


沙織は首にかけた俺のマフラーに顔を埋めながら、


「あーなおきのにおいがするー」


そんなことを言い出した。


「なっなんだよ。イヤなら付けなくていいぞ。」


そう言う俺に


「違うー。なんか、懐かしい。なおきのにおい…すき。」


「…なっ///」


沙織の言葉にまた、照れてしまった。


なんなんだよ、こいつ…。

意味わかんねぇ。俺を男として見ていないから、すき…とか、そんな安易な言葉が出てくるのか?


そんなことを思ったけど、その言葉は俺の中へと飲み込んだ。するとまた沙織は話し始める。


「ねぇなおきー。どうしてなおきは、彼女、作んないの?」


「…え?どうしたんだよ、急に…」


「んーだってさ、なおき、モテるじゃん。今年もたくさん…本命チョコもらうでしょ?その中から誰か選んだり…しないの?」


「んー?今年ももらえるとは限らねーじゃん。つーか、今年は誰からももらわねぇ。おまえが…いつもみたいに面白チョコくれるなら、もらってやるけどなー」


密かに…おまえのチョコが欲しい。そう言ったつもりだった。どんな誰からの本命チョコよりも…沙織からのチョコが欲しい。それがたとえ、義理チョコだとしても…。そう…思った。


けれど。


「んー?だからー、今年はチョコあげないよー?」


さらりと沙織は、俺の想いを断ち切った……。…なんなんだよ。告ることすら…許されない、そんな感じじゃないか…


そんな風に思うと虚しくなる。けど


「ねーなおきー。このマフラーあったかい!ちょーだいっ」


沙織は突然そんなことを言い出した。


「あ?別にいいけど…」


軽くそう答えながらも、心の中では疑問に思う。ただのグレー一色のそのマフラーは、女でも使えそうなデザインではあるけれど、沙織の好みとは明らかにかけ離れている。


沙織なら…赤とかピンクとか茶色とか、そんな暖色系に、ドットとかチェックとかボーダーとか…、そんな柄付きの可愛らしいものを選びそうなのに…。


不思議に思いつつも、少しだけ、こいつは俺のことを好きなんじゃないか…そんな淡い期待をしてしまう。


そうじゃなかったら…高級品でもない男のマフラーなんて、欲しがらないだろ…そう…思ったんだーーーー








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