け、牽制。
起きたら例のイチャコラソファーに弟が寝転がっている件について。声を、かけるべきなのだろうか。
我が家は母があんななので、家事は分担して行っている。今日は私が朝食作り当番、というわけでいつもより早く起きていたわけなのだが、とてもまずいことになっているぞ…。
さっきまでは眠気でどうにかなりそうだったというのに、気まずすぎて睡魔もどこかに飛んでいった。そんな状態で立ち尽くしていると、寝転がってスマホを見ていた弟がこちらに気がついた。
「姉さん、どうしたの?そんな所で立ち止まって」
「ア、ハイ。ナンデモナイ、デス。」
テンパり過ぎて片言になってしまった。言及されても面倒なのでそそくさと台所に向かった。冷蔵庫から具材を取り出していると、突然弟が隣に現れた。なぜ
「暇だから僕も手伝うけど何すれば良い?」
「…じゃあ、目玉焼き作っといて」
「りょ。」とだけ呟き、卵を持っていった弟の姿に疑問しか浮かばない。いつもならあいつは手伝いなんて絶対にしない。…昨日の抱きつけたあれがそんなに嬉しかったのだろうか。どっちにしろ謎すぎて怖い。
「…ところで何で早く起きてたの?」
何も喋らないのも気まずくなり、意を決して聞いてみることにした。機嫌も良さそうだし。案の定、気に触った様子もない。
「んー…、ちょっと色々あって寝れなくてさぁ」
「寝不足、ってこと?」
「そういうことー。姉さんと一緒だよ」
そう言いながら笑顔を向けた弟は、目の下辺りを指差した。隈が出来ている。
「私のよりは薄いね」
「そりゃ、姉さんには負けるよ」
私のこれは最早アイデンティティーだ。舐めてもらっちゃ困る。そう考えていると弟が声を出して笑った。珍しい。いつもは食えない笑みしか浮かべないのに。
「やっぱり姉さんは兄さんに似てるね」
「…そうかな?」
「うん。表情の作り方とか、自信満々な時とかは瓜二つ」
しっかりした長男と怠け者の私は兄妹で似てるね、なんて言われることは少ないし私自身、似ているとは思わない。
「…やっぱりそんなに似てないと思うけど」
「いや、そっくりだよ。…だから僕も信用してるんだし」
お、デレか?照れた顔を期待して弟の方に視線を向けると、なぜか病んだ表情をしていた。さっきまで浮かべていた笑みも無くなり、表情が抜け落ちている。
「姉さんと兄さんはちゃんとした『兄妹』だもんね。あいつと違って邪魔なんかしないよね。姉さんはあいつと違うしさぁ、だって半分しか血繋がってないもんね。」
や、やばい…。今にも藁人形と金槌を出しそうな雰囲気だ。それに何だか焦げくさ、
「卵焦げてる!!」
「えっ、あっ!!やばい、」
正気に戻った様子で火を止め、卵を皿に移した弟はうなだれた。
「はぁ…、失敗しちゃったや。」
「う、うん。まぁ、失敗は誰にでもあるから、ね。」
「…仕方ないよね。こういう時もある!」
おぉ、急にポジティブだ。卵を割り、2つ目を作ろうとした姿を見て、自分も作業に戻ろうとした時、弟がまた笑みを浮かべた。
「だから、姉さんは僕に意地悪しないでね。そうじゃなきゃ僕、姉さんのこと嫌いになっちゃうよ」
こてん、と首を傾け、愛らしい仕草で言った弟には恐怖しか浮かばない。
コトン、と音を立てて置かれた皿に乗っているのは例の目玉焼きだ。綺麗に焼けたそれらに混ざる黒焦げの目玉焼きは、弟の手によって次男の席に置かれた。
私は何も見てません!異論は受け付けないよ!!




