よっきゅう。
音が聞こえたのは玄関の方から。こんな時間に外からの来訪者。とはいえ誰かの検討はついている。そう思いながらもグラスを握りしめて屈んだ。端まで移動し、顔を少しだけだしてリビングの方を除いた。
人の歩く音と、聞こえる2つの声。開いた扉の先には2人の男女が立っていた。女の方は我が母だ。なら男の方は父親か、って?いいや、全く知らない人。
電気をつけた母と男は並んでソファーに座り、こちらに背を向けた。肩がぶつかる程の距離で座った2人は、向き直り、倒れ込んだ。あ、ヤバい。
察した瞬間に低い姿勢のままその場を後にした。母と知らない男、つまりそういうことだ。自室に音を立てないように駆け込み、扉を閉めて電気をつけた。いつの間にか奴らの音も再開している。なんて奴らだ。
机にグラスを置き、椅子に腰掛けた。私たち兄弟の血が半分しか繋がっていない原因があれだ。いや、正確にいうと長男と私は両親とも一緒だ。
今こそ母は独身だが、私が小さい頃は旦那がいた。それが私と長男の父。しかし、母が何股もかけていた事が判明したのだ。この浮気相手との子供が次男だ。どっちも父は違うけどね。
これ新しい子供、と悪ぶれもなく連れてきた母に父は激怒した。当然だ。そうして何だかんだあり、親権をどちらにするか、という問題に直面したのだが、これが荒れに荒れた。
母の方は面倒くさいからお前が育てろ、と父に言った。父の方は育てたいけど子供を育てる程の金はない、と突っぱねた。結局、医者をしている母は金だけはあるから、と母が私達を育てることになった。
ごめんな、ごめんな、と涙ながらに謝った父は、光の速度で家から出ていった。言葉と行動が合ってない…!と思った私は、前世の記憶がなかったこともあり、ギャン泣きした。
その後、あの母が育児をするわけもなく、長男が親代わり。兄弟3人で何とかやっていたわけだったが、突然母がもう一人連れてきた。ただのBL漫画の筈が過酷である。
そうして、無事前世の記憶を取り戻した私も家事や弟の世話を手伝い始めたのであった。酷い環境に挫けかけた事もあったけど、兄たちのラブと萌えで何とかやってきた。
そうしてある程度成長した頃、ついに2人の恋が成熟し、おめでとー!と思っていた結果がこれである。寝れないのだよ。もう家出するか、と思いかけた時、前世で好きだったことを思い出した。そう、二次元である。ゲームにアニメ、漫画に小説、たくさんあった。知らない物語に見たことのないゲーム。
無事に前世と変わらないオタクになった私が今の私だの姿である。
…結局のところ、うちがBLになったりシリアスになった理由って、みんなの性的欲求?
とにかくあのソファーには当分、座らないでおこう。




