気まずい。
あの後、無事に適当な空き教室に侵入し、ぐっすりと安眠した。約20分間。うん。足りないね。そんなこんなで放課後、先程のケンカップルが仲よさげな様子で話し合ってる様子に少し萌えながらも颯爽と自宅に帰り、部屋着に着替えて布団に体当たりする勢いで入り込んだ。
やっぱりお布団最高。枕元に置いていたスマホに手を伸ばし、動画アプリを開き、ポチッと押したのはお気に入りのアニメの歌。ゴリゴリのバトル系少年漫画の曲だから凄い元気の溢れる曲だ。それでも寝る時の子守唄に使えてしまうのは、単純に、愛ゆえ…、だめだ、ねむ、
「姉さん。飯食うって兄さんが呼んでる。起きて」
突然の声に意識が戻され、目を開くと、こちらを見下ろしていた弟と目が合った。どうやら夕飯らしい。もうそんな時間なのか。身体を起こしながらそんなふうに考える。
「……おはよ。」
「うん、おはよう」
夜中に藁人形で兄を呪っているとは思えないような柔らかい笑みを浮かべた弟は「先に行ってるね」と言葉を残して部屋から出ていった。駆け足で階段を降りていく足音が聞こえる。
「兄さん!!姉さん起こしてきたよー!!!」
いや、声デカ。テンション高。落差、ヤバ…!!アイツやっぱりおかしいわー。考えながらも部屋を出てゆっくりと階段を降り、リビングに顔を出すと長男に張り付いている弟と、それを疎ましそうに見る次男の姿が見えた。うわっ、修羅場…、
「あぁ、ありがとう。結望」
下心に気が付かない長男は弟の頭を撫でながら笑い、弟は嬉しそうに頬を染めて笑った。次男はそれに眉を一層潜めた。う、うわぁー…。私は今、壁越しに顔だけ出している。こりゃ、まだ出れん。
「おい、優也。流石に甘やかし過ぎだろ。結望だってもう中3だろ」
「なに、和希?もしかして羨ましいのぉ?」
次男の方を見て弟は目を細め、ニヤッと笑った。うわ、悪どい顔。次男はカッと顔を赤くし、拳を握った。
「そもそも俺らは、!」
「和希」
何かを言いかけた次男を長男が止め、弟からそっと距離を取った。不満そうな顔を浮かべた弟とは対照的に、次男は安堵した表情を浮かべた。
「もう飯にするから。紗雪も出てこい」
チラリと視線を向けられた。うわ、バレてら。仕方がないというふうに出てきた私に長男は小さく笑みを見せた。
「早く食べよう。」
長男の言葉にそれぞれ反応は違えど、席についた。微妙に気まずい空気が漂っているし、実際気まずい。長男が、兄が止めたその言葉が原因だ。きっと、次男はこう言おうとしたのだろう。
_片方しか血が繋がってないんだから、と。




