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9話 釣り池で透明バレ!? ~友情と正体バレ実験デー~

春の朝。窓の外からヒヨドリの鳴き声がリズムよく響き、やわらかな陽射しが畳の上に光の模様を描いている。


神原清透の家の前に、黒塗りの高級車が音もなく滑り込んできた。


窓から見えたピカピカのボディに、清透は「あ、やば。もう来てる!」と顔をしかめて、慌てて玄関を飛び出す。


ドアを開けると、すでに陸斗が後部座席に陣取っていた。「また寝坊かよ。お前、毎回伝説更新してんぞ」とニヤリ。

美咲は助手席でにっこり微笑み、「清透くん、髪がまたふわふわ~」と手でジェスチャー。


清透は「ごめんごめん。寝坊キャラの自覚はある」と苦笑いしながら車に乗り込む。

(陸斗、金持ち。僕、庶民――これが社会の現実。でも陸斗は本当にいいやつ。僕、大好き)


ふと隣を見ると、美咲の横顔は相変わらず可愛くてドキドキする。

(美咲、いい香り、きれい、かわいい、マジで天使)


真央は右端にちょこんと座り、水晶玉を転がして遊んでる。

(真央、猫がボールで遊んでるみたいだな)


車は森の奥へと静かに進み、着いた先は成瀬家専用の完全プライベート釣り堀。

陸斗の父が趣味で作ったらしいが、周囲はまるで公園を貸し切りにしたみたいに静かで広い。


ベンチに荷物を置き、みんなで釣り竿をセットする。


「よーし、今日は絶対一番大きいの釣るからな!」と陸斗が張り切って宣言する。

美咲は「釣れたら、記念写真撮ろうね」とスマホをスタンバイ。


清透は(釣り初めて……魚にまでバカにされたら“人間”引退だ……)と妙に弱気になる。

四人並んで釣り糸を垂らす。日差しと風の気持ちよさ、魚のエサの生臭さ、みんなでクスクス笑い合う。


最初のうちは、誰もアタリがなくて空気がゆるむ。

陸斗が少し焦って、「おかしいな、もっと釣れるんだけど?」と苦笑い。

美咲は「釣れなくてもいいよ。みんながいれば」と、まさに天使のように微笑む。


清透はトイレを我慢しつつ、手のひらがじっとり汗で濡れる。

喉がカラカラになり、指先がピリピリと震える。

(いま釣りに集中……いや、もう限界……)


美咲が「清透くん、顔色ヤバいよ」と心配し、

陸斗は「まさかお前、また、消えてる?」と茶化す。

一瞬、空気がピリッと緊張した。


その時――陸斗の竿がグワンと大きくしなり、池に波紋が広がった。「来た、伝説級来た!」と大騒ぎする陸斗。

池の端で必死にリールを巻き、美咲は「え~、すごい」とスマホで動画を回し始める。


この騒動の隙に、清透は(今しかない!)と草むらへ静かに抜け出す。

靴音を殺し、湿った草の匂いに包まれながら全神経を集中――透明化、発動!


ひんやりした草を踏みしめながら、誰にも見えない安心感で思いっきり用を足す。

(青空の下、気分最高……でも、陸斗、ごめん。我慢できなかった)


――が。


陸斗が「うわっ、池の向こう、空中から水出てるぞ!これ絶対幽霊だろ!?」と叫ぶ。

美咲も「やだ、こわい……何あれ!?」と青ざめる。


清透は心臓が止まりそうになる。(バカだ俺……体は消せても、“それ”は消せないじゃん)と焦って逃げようとした瞬間、足がもつれて自分の用の上にダイブ。


(くさっ、涙しかない……)衝撃で透明化が一瞬解除されてしまう。


――何もなかったはずの草の上に、突然現れる清透。


清透は泥だらけで膝を抱え、(人間終わった……妖怪街道まっしぐらだ……)と小さくなる。


陸斗は尻もちをつきながら、「おいおいおい、本気で幽霊かと思った!!」と怯えつつも爆笑。

美咲は駆け寄って、「清透くん、本物?怪我ない?ねえ、本当に清透くんだよね?」と涙目で顔をのぞき込む。

真央は水晶玉をいじるのを止めて「あれ、何が起こったの?」と目を丸くする。


(あれ、僕完全に体消えてたのに……みんな怖がってない。大丈夫なの? ……いや、普通は心配してくれるのか)


清透は泥だらけのまま膝を抱え、「みんな、怖くないの? 僕なら絶対怖いけど」とポツリ。

(僕、チキン……ほんとに怖い)


が、陸斗が「逆だって!これもう主人公案件だろ!」と背中をドンと叩く。

美咲も「何しても清透くんは清透くん」とぎゅっと手を握ってくれる。

真央は目を見開いて、「これ、まじ。私霊感キャラ遊びしてただけ」と本音をもらす。


しばらく全員でしゃがみ込んで、爆笑と混乱の渦に包まれる。


やがて清透は、涙ぐみながら「……みんなに怖がられるのが嫌だった」と素直に打ち明けた。


陸斗は「バカ野郎、全部言えよ!かっこよいだろう!」と両手を上げて叫び、

美咲は「何があっても友達は変わらない」と清透と指きりげんまんを交わす。(美咲、天使……指、きれい)

真央も「ヒトじゃなくてUMA認定!」と霊感キャラモードに戻っていた。


美咲が心配そうに「体、どこも痛くない? 透明になって気分悪いとかない?」と声をかけ、

陸斗は少し笑いながら「そうだ、実験しようぜ、どこまで大丈夫か」と言う。

真央もニヤニヤしながら「これは奇跡、私はついに目覚めた」と、いつの間にか本気の霊感キャラに変貌していた。


四人で桟橋に集まり、「伝説の透明化実験」がいよいよ始まる!


美咲は(陸斗くんも真央も、ネジ外れてるから大丈夫かな)と内心で心配する。


春の空、みんなの笑い声が池に反射して、物語は“好奇心と友情と非日常”のスタート地点に立った。

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