8話 公園ヒーロー!? 透明ボイス大作戦と仲間の休日
春の休日。
清透は朝寝坊しながら、ゴロゴロとスマホで動画を流していた。
(今日は絶対ダラダラするって決めてる)と心に誓う。
リビングに行くと、妹とスマホゲームで対決。
「もう三連敗だよ!」「兄ちゃん弱っ!」
妹のドヤ顔にムキになって言い訳を連発する。
母が「外の空気でも吸ってきたら?」とすすめても、「いや今日は家で……」と渋る。
だがスマホを見ると、グループLINEがすでに“カオス”状態だった。
《陸斗:ヒマな奴、〇〇公園集合な!》
《真央:今こそ座敷童チャレンジ》
《美咲:じゃ私も行く♡》
(美咲も来るなら……これはもう行くしかない!)
と、寝癖を直して少しだけ髪型に気を使って家を出る。
公園につくと、陸斗がフリスビーを手に「おせーぞ!」と元気に出迎える。
美咲は春色ワンピースと日傘、可憐な笑顔。真央は帽子とリュックでベンチに座り、異様な存在感。
「よし、軽く運動だ!」陸斗がフリスビーを投げ、みんなで順にキャッチ。
美咲が「久々にみんなで遊ぶの、なんか嬉しい」と柔らかく微笑む。
真央は「この公園、霊的に強い場所。座敷童が出るんだよ」と真顔でオカルト爆弾。
陸斗が「そんなんで出たら面白すぎだろ!」と即ツッコミ。
美咲も「でも、座敷童は、幸運をよぶと聞いた、ちょっと見てみたいかも」と苦笑い。
遊び疲れてベンチで一息。
清透は「やっぱ休日、最高だな、みんなといると楽しいな」と本音が漏れる。
ちらちらと美咲を見る。美咲も少し顔を赤らめている。
そのとき、公園の片隅から「踊れよ」「面白いことしろよ」と怒鳴り声。
見ると、浮浪者風の男性がチンピラ三人組に絡まれている。
困惑と怯えの表情の浮浪者。男たちはニヤついている。
陸斗が「またあいつらかよ……」とあきれた顔をしている。
美咲は不安そうに「どうしよう、助けた方がいいよね……」と小声。
真央は真剣な表情でその光景を見つめる。
「黒いオーラが渦巻いてる。あれ、もうすぐ“何か”起きる」
その言葉で、場の空気が一気に引き締まる。
清透はポケットの中で拳を握る。
(今なら、俺にしかできないことがある――)
「ちょっとトイレ行ってくる」と仲間に言い、その場を離れる。
物陰で深呼吸し、(やるしかない……透明化、発動!声だけでビビらせてやるか)
(くくく、美咲を泣かせたお前らには、お仕置き百倍返しだ)
浮浪者に絡むチンピラ。「さっさと踊れって言ってんだろ!」
――その時、ひとりの耳元に、低く威厳ある声がささやく。
「やめておけ。閻魔大王が見ているぞ……」
「は? 何だよ、今の声?」
「――このまま悪事を続ければ、お前の魂、地獄の釜でグツグツ煮られるぞ」
「お、おい冗談やめろよ……」
もう一人の耳元には、深夜アニメのモノマネでざわめく声が忍び寄る。
「神の怒りが今にも落ちる。雷も炎も……ほら、頭の上だ!」
「おい、誰が言ってるんだ、お前か?」とヤンキーたちは内輪もめを始める。
さらに清透は、あえて“ボスキャラ風”のセリフでトドメを刺す。
「おい、そこの人間。私は“魂を喰らう者”――お前の悪事は、ぜんぶ丸見えだ。
お前が震えて泣くまで、地獄の使いが見張ってるぞ」
「この声、誰だ……なんかいるのか……」とヤンキーたちはついに震えだした。
「さて、そろそろ魂を食らおう!!」
「やめろやめろ……」「やめてくれ…………」「しにたくない!!」
浮浪者までも「しにたくない!」と叫びながら逃げ出し、チンピラたちはガチでパニック状態に。風のようにその場を去っていった。
(ははは、いい気味だ、おもしろすぎ)と清透は内心で思っていたが、足がもつれて派手にこけてしまった。
「痛っ!」と声を出した瞬間、体が実体化。たまたま垣根の陰だったため、仲間たちからは見えなかった。
(やりすぎた……透明やりすぎる。天罰ルール発動か)と、震えながら垣根の陰をハイハイでそっと移動し、みんなの視線から逃げる。
ベンチに戻ると、陸斗が「今の声、絶対ヤバかった!何あれ?!」と青ざめている。
美咲は「清透……声が似てない?」と小さくつぶやく。
真央は黒いノートを取り出しながら「閻魔大王、召喚成功。今日の現場、超A級」とご満悦。
(清透がいると何か起こる……私が謎を解き明かそう)
清透は内心、(やりすぎた、でも、美咲の仇討ちはできたと大満足)と心臓ドキドキ。
ふと見ると手の甲がまた薄く消えかけていた。
(……え、また天罰……いや、制御できる……と根拠のない自信だけは湧いてくる)
そして、みんなで真央が撮った動画を確認したが、裏路地と同じく雑音だけで、何も映っていなかった。
「なんでだよ~」とみんなは残念がるが、清透は(よかった、映ってない、全身透明はまだ言う勇気がない)と心の中で安堵していた。
――透明化を使うと、録画も録音もただのノイズになる。それがこの力の“さらなるな怪奇現象”だった。
春の光と微かな不安が入り混じる昼下がり――
物語は新たな事件の予兆を残し、静かに幕を下ろす。