22話 Break the Wall ― 新時代の伝説
夜明け前の東京都内。静まり返った音楽スタジオの一室。巨大なディスプレイが淡い光を放ち、池と山に囲まれた野外ステージを映し出していた。サビの**「Break the Wall」**に合わせ、銀色のスパンコールが一斉にきらめき、大自然がその熱気を静かに受け止めている。
ディスプレイの前には、音楽プロデューサーや映像ディレクターたちが集まっていた。誰もが息を呑み、画面の“事件”に圧倒されている。
「……この歌詞、リアルすぎる。高校生でここまでやるのか?」
「演出も映像も、本気で時代の壁を壊しにきてるな」
仮面をつけた四人組。ゾンビ役はゾンビの仮面の奥から圧倒的な歌声を響かせ、勇者はキレのあるダンスを決め、お姫様は流れるようなターンを舞う。魔導士は子猫顔ドクロのユーモラスな仕草で目を引いた。
誰が見ても高校生。しかし、その表現力と演出は明らかにプロの域に達している。
「これ本当にCG? どうやって透明化してるんだ?」
「SNSじゃ“新しいVFX”とか“超能力”って騒がれてるぞ」
現実と虚構の境界が揺らぎ、誰もが映像に引き込まれていった。
「このゾンビ、仮面なのに、あの歌声……」
「勇者もお姫様も魔導士も、雰囲気は高校生にしか見えない」
「演出もカメラワークも凝ってる。まさかプロの映像班か?」
ベテランも若手も、繰り返し再生し、巻き戻す。その場の空気には、嫉妬と衝撃、そしてバズへの本気の熱気が満ちていた。
“この4人組――今までにない”
誰もが画面の仮面の四人を追わずにはいられなかった。
その頃、都心の大手テレビ局でも同じ動画が流れていた。
報道スタッフや情報番組のディレクターたちが、真剣な表情で映像を見つめている。
「編集部に“これ本物?”って問い合わせが殺到しています」
「CGじゃなかったら……本当に高校生なのか?」
「衣装もセットも素人離れしてるが、どこにもプロダクションの痕跡がない」
「勇者役の子、プロのブレイクダンサー、後方伸身宙返り4回ひねり、オリンピック選手か?」
「お姫様のターン、バレエ経験者だろう」
「魔導士の動き、猫ドクロ?ロボットのクセが強い」
「ゾンビは顔までペイント、歌もうますぎる。仮面の下、見てみたい」
プロデューサーが机を叩いた。「正体を突き止めろ。最初にインタビューを取った局が勝ちだ」
各局スタッフは熱い視線を交わし、正体探しに動き出す。
一方、SNSのタイムラインでも動画の拡散は止まらない。
「これ絶対CGでしょ?」
「本物だったらヤバすぎ!」
「ゾンビの消え方、謎すぎ」「勇者のダンス、何回も見ちゃう。体操技も使うし、マジ勇者」
「お姫様、映えすぎ」「魔導士の動きで爆笑したw」
《Break the Wall》《透明人間ショー》《謎の仮面ダンサー》などの関連ワードが次々とトレンド入り。
とりわけ注目されたのは**“透明化”の仕掛けだった**。
「#透明化エフェクト」「#フェイク動画」などのタグが溢れ、コメント欄も盛り上がる。
「CGだとしてもセンスありすぎ」
「証拠用カメラって言ってたけど、本当に証明できるの?」
「衣装も演出もプロレベル。これ、高校生が作ったの?」
……あちこちで「正体は誰か」「どこの学校か」と憶測が飛び交い、フォロワー数や再生数は加速度的に伸び続けていた。
だが、誰も“本当のこと”にはたどり着けない。「若者たちの魂の歌」「閉塞感をぶち破るメッセージ」――そう語られても、四人組の素顔や名前はどこにも見当たらなかった。
音楽プロデューサーの事務所でもスタッフが騒然としていた。
「おい、この動画見たか? 何なんだこれ」
「どうやって消えてる? CGじゃ説明つかない」
「バレエ、ストリート、ロボットダンスまで混ざって……こんなの初めて見た!」
モニターには池と山に囲まれた野外ステージで踊る仮面ダンサーたち。
プロデューサーは腕を組み、何度も動画を再生する。
「マイケル・ジャクソンの導入から、お姫様と黒魔導士、そして勇者が大技でゾンビの前に立つ。この演出はプロでは無理だ。素人だからこそできる演出だ。既存の枠を超えている。」
「勇者……この足さばき、高校生か? バレエ姫、指の先まで訓練されてる。魔導士……なんでドクロで子猫顔?」
「歌詞も今の高校生、そのまま。これ、若者の叫びだ」
「この力強さとコミカルさ、絶対売れる。どこの誰か徹底的に探せ」
「SNSも全部チェックしてるが、特定は難しそうです」
「顔も名前もわからない。でも、この才能は本物だ」
音楽業界の大人たちも、前代未聞の“高校生バズり動画”に翻弄され始めていた。
ネットでも“あの動画”は一瞬で拡散された。
「#透明ダンサー」「#断崖絶壁」「#謎の四人」などのタグがトレンド入りする。
「演出すごすぎ。消えてるのガチ?」
「勇者の動き、半端ない!」
「お姫様、かわいすぎ。バレエ経験者でしょ?」
「魔導士の猫ドクロ、謎すぎて逆に萌える」
「歌詞、リアルすぎて感動した。私もそう思ってた」
「これ絶対プロの仕業。でないと無理。業界のチラ出しだよ」
「ハリウッドでないと、こんなCG作れないでしょw」
検証系ユーチューバーも「CG合成説」「ステージ仕掛け説」で徹底分析し、専門家すら「これが本当にCGじゃなかったら、日本の技術ヤバい」と首をひねる。
SNSのDMやコメント欄には「出てきて!」「インタビューさせて!」と取材希望が殺到し、全国の高校生たちの間でも“現代の伝説”が話題になり始めていた。
SNSでは #BreakTheWallダンス、#透明ゾンビ、#謎の高校生バンド などが同時にトレンド入り。
驚きや共感、分析、挑戦動画まで投稿が相次いだ。
「勇者の技、家で真似したけど即転倒」
「歌詞に泣いた。これが若者の本音」
「今の社会を変えてくれ。僕達の壁を壊して」
音楽業界のプロデューサーやディレクターも動画を巻き戻し、何度も議論を交わす。
「どこの芸能事務所も知らない顔ぶれ。完全に素人?」
「透明になるCGでここまでリアルにできるか? 何か仕掛けが?」
「歌詞がリアル。“断崖絶壁”“Break the Wall”……今の若者の本音だ」
「ゾンビ役の声、透明感がすごい。勇者のダンスのキレも映える」
「バレエの子はコンクール級、魔導士の猫ドクロも謎すぎる」
「やっぱりこの4人、高校生で間違いない。でもどこの学校?」
誰もが正体を突き止めようとSNSやコメントをくまなくチェックするが、決定的なヒントはなく、関心はますます高まるばかり。
「これは絶対に見逃せない素材」
「うちでデビューさせたい!」
そんな声が業界のあちこちで上がっていた。
動画の再生回数は一晩で何十万回を突破し、コメント欄には正体探しの書き込みが溢れていた。
――その正体不明の四人組は、すでにSNSと業界で一大センセーションになっていた。
けれど、当の本人たちはまだ、自分たちが日本中、いや世界中で“伝説”になりつつあることを知らなかった。
静かな夜。清透はスマホの通知音で目を覚まし、ふと動画の再生回数を見て驚く。
陸斗はベッドでガッツポーズ。美咲は星空に手を伸ばし、真央は新しい“魔導士衣装”のAIデザインを夢中で描いていた。
そうして物語は静かに次のステージへ。
“Break the Wall”の余韻とともに、未来へ続いていく――。
ここまで一気に流行ったのは、成瀬グループ企業の力が大きかった。陸斗が親父に動画を見せると、「これはすごい」と喜び、「よし、俺が流行らせてやる」と言って、成瀬グループの影響力を使い拡散していた。
しかし、実際にバズったのは、彼らの力と絆の強さであった。




