12話 スーパー生首伝説! 万引きバスターズ大作戦
放課後、神原清透たちは、美咲の親戚が経営する大型スーパー「スーパーマルシェ」に集まっていた。
美咲はアルバイトも兼ねて、ここで手伝いをしている。
店員用ベストを羽織り、レジ横でそわそわ落ち着かない様子だ。
「お願い、みんなも一緒に見張って!最近、万引き多すぎて親戚が困ってるの……!」
陸斗はやる気満々で手を叩く。「任せろ、美咲!俺たち“万引きバスターズ”発足な!」
真央はメモ帳を取り出し、「初任務、監視カメラより優秀目視係。目標:不審ムーブ検出」と実況モード。
清透もスーパーの制服を着せられて、「俺、本当にバイトじゃないよね……?」と困り顔。(美咲のためだ…)
美咲は「レジの奥、あの棚のとこ、絶対怪しいの!」と目線で合図を送る。
陸斗「おっけー、怪しい動きは全部マークだ!」
真央「変な歩き方、手つき、目線、全部メモする」と実況が止まらない。
しばらく張り込んでいると、制服姿の男子高校生グループがやってくる。
陸斗がすかさず「怪しいオーラMAX。あの集団だ」とウインク。
美咲「ねえ、絶対やる気だよね……」
清透「え、えっと……どうする?」
陸斗「よし、作戦名“透明ストーキング”!清透、お前しかできない!後ろに忍び寄ってプレッシャー与えろ!」
清透「えっ!? まじでやるの!?」
真央「観察観察、伝説の目撃情報、記録する」
美咲「でも、怪我だけはしないでね!」
陸斗「“生首注意報”は絶対効果ある。お前ならやれる!」
清透は「まじでやるのか……」と小声で呟きながら、こっそり死角で完全透明化。
高校生グループは、陳列棚の陰でヒソヒソ相談。ひとりが袋を持ち、明らかに何かをカバンに――。
清透は背後にそっと近づく。(お願いだからバレないで…!)
完全透明状態で「……それ、やめた方がいいよ」と小声でささやく。(僕もやめたい。どうしてこうなる)
男子高校生たち「うわっ!?」「今、誰かいた!?」「気のせいだろ……」
美咲は「あの子たち、強そうだけど大丈夫かな……」と不安顔。
真央「都市伝説構築中、追加情報収集中……」と実況を続ける。
男子グループは戸惑いながらも、またカバンに手を伸ばす。
陸斗が通路から笑いながら「清透!“店内の妖怪伝説”やれ!」とジェスチャー。
真央は「幽体出現、未確認飛行物体発生」と小声で盛り上がる。
そこで、清透の頭だけがふっと棚の上から登場。(やるしかない!)
生首の顔にはサングラスをかけ、黒いマスクをつけていた。「そこ、見てるからね」と恐ろしい声で言う。
(これで逃げてくれるかな。もし襲ってこられたら怖いなぁ。できるだけ恐そうな声を使おう)
男子たち「うわあああ!?」「頭だけ!?」「やべぇ、ガチの店の妖怪じゃん!」とパニック。
陸斗「出た~!スーパーの伝説級UMA!」と大笑い。
美咲「清透くん、やりすぎないで…!」と心配顔。
真央「未成仏生首現象、記録完了……!」と薄笑い。
男子たちは慌てて商品を戻し、「な、なにこの店……」と、飛ぶように出口から逃げ出した。
美咲は安堵の息をつきつつも、「あれ……逃げちゃった?」とつぶやく。
陸斗「くそ、逃がした、次は、必ず捕まえる!」
清透「いや、あんまりやりすぎるとヤバいから……」(怖かった、ナイフとかで刺されたら、マジ即死)
透明化してたらナイフも通らないのだが、清透の生身の時の恐怖が強く残っている。
――しかし、事件は一度で終わらなかった。
週が明けた放課後、またスーパーに集まる四人。
美咲はレジを手伝いながら、どこか落ち着かない。
(昨日の一件で終わり……のはずだったけど。あの子たち、まさかもう来ないよね?)
夕方、またもやあの三人組の男子高校生たちが現れる。
「……あ、また来た」
美咲がそっとみんなに合図する。
陸斗はやる気満々で通路の端に立ち、真央はスーパー防犯ノートを広げ観察欄を埋めている。
清透は目立たぬよう冷凍食品コーナーの陰で“透明化準備”に入る。
(さて、今度はどんな作戦でいく?昨日はやりすぎたかもだけど、今日は本当に止めないと)
男子たちはキョロキョロしながらお菓子コーナーへ。
「おい、今日は見つかるなよ?」「スリル満点、やめられない」「あの生首は怖いな……でるな」
そんなささやきが聞こえてくるが、三人ともまたこっそりポケットにガムやチョコを滑り込ませ始める。
陸斗が今度は逃げ道を塞いでいた。「はいはい、ここは通行止めでーす!」
たくましい体から、強者の風格がでていた。男子たちは「あ、やば……」と立ち往生。
真央が「目撃・証拠撮影完了。今回こそ“スーパーの生首現象”と一緒に検証します」とわざと大声。
男子たちは「や、やめてください!」と泣きそうな声。
その隙に、清透は棚の裏手から顔だけ透明化解除してぬっと出現。
「また来たのか、お前たち――」
蛍光灯の下、棚からぬらりと生首が現れ、薄笑いを浮かべる。今日は、サングラスとマスクと、念入りに赤い血も書いていた。陸斗がノリノリで書いていた。完璧ホラー顔。
「悪いことばっかりしてると、お前たちもこうなるんだぞ……!」
声を潜め、ぞっとするほど低い声で“呪いの警告”。
男子たちは「ギャアアアッ!」と叫んで床に座り込み、「ご、ごめんなさい!」「もうやめます、許してください!」と泣き叫ぶ。
陸斗は両腕を組み「ここ通行止めね」と決め台詞。
真央は「やっぱり生首現象の再発率100%。これは本物だ」と実況。
男子たちが「どうすればいいですか……?」と縋るような目で見上げると、
美咲がカウンター越しにそっと微笑みながら、
「お店の人に謝まったらよいと思う」と優しく言う。
男子たちは、ガタガタ震えながらレジへ歩き、親戚のおばちゃんの前でぺこりと頭を下げる。
「ほんとうに……すみませんでした」
おばちゃんは腕組みしつつ、少し困ったように笑い、「次からは、ちゃんとお金を払って帰ってね。それが当たり前のことだし、あなたたちのためなんだから。」と優しく言う。
高校生たちはその言葉に強く納得して、
「すみませんでした。もう二度としません」
「万引きは止めます。ここでもお金は払います。ありがとうございました」
そういううと、お金を払って出ていった。
その姿を見送る美咲はほっと息を吐き、
「ありがとう、清透くん、みんなも……本当に助かった」
陸斗は「これが正義チームの力ってやつだな!」とドヤ顔。
美咲は、清透の手を取ると、「大丈夫だった?」と優しい笑顔で声をかけた。
清透は美咲に手を握られ心臓爆発状態。(かわいすぎる。天使すぎる。手があったかい。僕は今日死んでよい)と天国へ旅立った。
夕方のスーパーの出入り口で、四人は揃ってガッツポーズ。
春風に髪をなびかせ、「また困ったことがあったら、正義チームで解決しよう!」と声を合わせ、
少し照れた笑顔で帰路についた。
しかし、この小さな一つの事件が、清遠たち4人を巻き込む大事件へと発展することは、まだ誰も気づいていなかった。
そして、別の場所から、異なるまなざしが、清遠の行動をじっと追いかけているのだった。




