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10話 透明ボーイと釣り池でチャレンジ!

春の空の下、池のほとり。

澄んだ風に草の匂いが混じり、桟橋や芝生にレジャーシートを広げて、みんなで持ち寄った食事会が始まっている。


陸斗は釣り竿を肩に、「さっきの鯉、マジでデカかった!これ、盛らなくても自慢できるやつ」とニヤリ。

スマホで魚の写真を見せびらかし、「オレのドヤ顔撮っとけ!」と、ひときわ大きな声。


真央は小さな箱からドーナツやクッキーを取り出し、「糖分補給は大事」と真顔で頬張る。

その横で**「このドーナツ、霊的にパワーある感じ。食べすぎると三途の川で甘党判定されるから注意」**と、

**“地獄の裁きフレーズ”も交えたオカルト節をぶちかます。**場が一瞬だけ静まり、また笑いが広がる。


美咲はおにぎりを分けたり、サンドイッチをみんなに配ったりしながら、穏やかな微笑み。「こういう時間、最近なかったよね」

ほんの小さな気遣いが、春の光と混ざり合っていく。


清透はみんなの様子を見渡しながら――

(大丈夫かな、陸斗悪乗りするからな。美咲止めて。真央は何も言わないで、でも、言葉に出せない、僕ダメ男)

そんな心配が心に湧いてくるが、みんなと話すのは楽しい。


空はどこまでも青く、池の水面には、銀色に波立つ光がきらきらと跳ねていた。


腹ごしらえが終わると、陸斗が「さて、本番はこれからだ!」とテンション高く立ち上がる。

「清透、今日は伝説残すぞ!」

キラキラした視線が一斉に清透に向けられる。


美咲はペットボトルのフタをキュッと締めながら、「無茶は絶対ダメだからね」と柔らかく注意を促す。

真央は「全て、記載」と言って、黒い紙と“呪いのペン”を持ち出した。**「これ地獄から届いた筆記具。ウソつくと手がしびれるってウワサ」**と真顔で補足し、

美咲は「やめて怖いって!」と本気でビビる。


みんなでレジャーシートや荷物をまとめ、木陰に移動して座る。


陸斗が「で、清透、何ができるんだ?」と尋ねてくる。


「手を透明にして水に入れられると思う」と清透が答え、みんなを池のほとりに案内する。


右手をそっと透明化する。

(すご……)(大丈夫かな)(え、これ、本当に!?)


「じゃあ、つけるね」と言って、透明な手を池の水の中に入れた。


清透の手は水の中にあるはずなのに、見た目には何も変化がない。


陸斗がさらに驚いて、「なんだ、どうなってるんだ?」と声を上げる。

美咲は怖くて見られないのか、そっと目をつぶっている。

真央は黒い紙と呪いのペンを落としたまま、固まっていた。


清透は心配そうにみんなの顔を覗き込みながら、「僕も最初はびっくりした。でも、何も起きないんだ。このままだと僕にも何も感じない。でも、動かしてみるね」と言う。

(みんな怖がってないかな、心配120%)


次の瞬間、水面にははっきりと波紋が広がった。


見えないはずの“手”が、水に確かに“触れている”――

光の反射とともに、波がいくつも円を描いて広がっていく。


陸斗が「うわっ、見えねーのに波だけ出てる!」と身を乗り出す。

真央は黒いノートを拾い上げて、「波紋発生……物理干渉アリ。霊的現象、幽体干渉……証拠三つ同時!」と、研究者モード全開で記録を始めた。


美咲はそっと清透のそばに寄り、「……でも、清透くんの手はちゃんと“ここ”にあるんだね」と、優しく実感を込めて言う。


みんなでじっと水面に広がる波紋を見つめる。不思議な静けさと、小さな感動がその場に満ちていく。


清透は心の中で(自分の手が消えても、みんなはちゃんと受け入れてくれる。よかった……)とそっとつぶやいた。


池のほとりに並ぶ四人。清透はみんなの視線を一身に浴びながら、そっと息を吸い込む。

「じゃあ……いくよ」

その言葉とともに、ゆっくりと右手を消してみせた。


「お~、右手消えてる!」「清透すごい!」「UMA発見!」と、みんなが拍手を送る。


(え、なんかウケてる……面白い。じゃあ、次いくか)


そのまま左手、両足、そして胴体までを順番に消していく。自分からは見えないので、つい考えずにやってしまった。


気づけば、顔だけが宙に浮いている。……これは、さすがにダメなやつだった。


「清透、おまえやりすぎ!俺はおもしろいけど、お前、顔しか残ってねーぞ」と陸斗がツッコミを入れる。


美咲はその場でしゃがみ込んで下を向き、「こわいこわいこわい、清透くん、無理しないでよ」と、半泣きで呟く。

真央は再び黒い紙と呪いのペンを取り落として固まっている。

「これが“生首現象”…未成仏幽霊の最終形態…!」と小声でつぶやく。


「あ、ごめん!」と慌てて元に戻すと、全身がしっかりと実体化した。


美咲は少し震える声で「よかった……体が戻らないかと思った。無理しないでね」と心配そうに言う。


真央は「ゾンビ存在、幽霊の謎解明……」と黒いノートにメモを走らせていた。


陸斗が目を輝かせて尋ねてくる。好奇心いっぱいの声で、「清透、お前、透明だと何でも体を通り抜けるのか?」


清透は真面目な顔で答える。「うん、何でも通り抜けるってわけじゃないけど、けっこう大丈夫みたい」


陸斗は得意げに小枝をつかむ。「じゃ、当ててみていい?」


「ダメだってば、危ないから!」と美咲が慌てて止めるが、真央は「有効な検証方法。記録したい」と前のめり。

「魂だけ通り抜けたら、閻魔大王に没収されるかも。転生回数マイナス1だよ」と、オカルトジョークまで飛び出す。


「いくぞー!」

陸斗が小枝を優しく投げると、透明にした清透の体をすうっと通り抜け、足を透明化していた清透の後ろに落ちた。


陸斗は、さらに大きな枝や石などを投げてみるが、どれもきれいに通り抜ける。

「うおっ、物理の法則バグってる!マジで神の奇跡級だぞ」と本気で大騒ぎ。


美咲は涙目になり、「本当にもうやめて、お願い……」と心配そうに訴えると、やっと実験は中断された。


ひとしきり盛り上がったあと、陸斗が次のミッションを発表する。


「じゃあ次、服着たまま池に入れるかやってみようぜ!」


真央は「水中での透明化現象も観察したい」と興味津々。

「失敗したら、池の主に魂ごと食べられるパターン」と真顔で忠告。

美咲は少し不安げな笑顔で、「無理しないでね。私たち、ここでちゃんと見てるから」と優しく声をかける。


清透は体を完全に透明化して、そっと池に入っていく。(これは風呂場で実験済み。濡れるの嫌だから全身透明)


透明化しているため、水面に何の変化も起きない。波紋も一切広がらない。


「……何も起きてないようにしか見えないな」と陸斗がぽつりとつぶやく。


「今から戻るね」と、池の浅い水の上から清透の声だけが響く。


清透はみんなのそばで静かに実体化した。服も体も靴も、まったく濡れていなかった。


「えっ……ほんとに全然濡れてないじゃん!」と陸斗は目を丸くする。


真央は「物理法則、崩壊中……これは新しい」と、すっかり夢中になっている。

「次は地獄の業火ごうかもすり抜けるか実験していい?」と前のめりで提案。


美咲は安堵の笑みを浮かべ、「よかった、ちゃんと帰ってきてくれて……」とそっと手を合わせる。

清透は「本当に一滴も濡れてない……」と、改めて何度も自分の服や体を確かめた。みんなで服をつまんだり、池の水を指で触ったりして大盛り上がり。


最後は陸斗が「どこまで潜れるか、記録更新だ!」と声を上げる。

真央も「水中透明化=人類初」と目を輝かせる。

清透は少し緊張しながら、「う~ん、試してみよう」と池に入っていく。(水中実験、風呂場でしてなかった。試そう)


最初は浅瀬だったが、思ったより急に深くなっていた。(あ、やばい)と思った瞬間、体ごと水に沈んでしまう。でも、なぜか苦しくはない。

しかし清透は泳げなかった。(溺れる~死ぬ~)とパニックになり、思わず実体化――そのまま本気で溺れてしまう。


「大変!」と美咲が叫び、陸斗は一瞬も迷わず池に飛び込む。


陸斗はスポーツ万能で泳ぎも得意だ。すぐに清透を助けて戻ってくる。


みんなで引き上げて、ゼェゼェと呼吸を整える清透。

美咲が涙目で「本当にもう無茶しないで……」と優しく叱り、

陸斗も真央も「マジで怖かった」「今度から慎重に!」と真剣な表情を見せる。


――一連の実験が終わり、全員しばらく無言で池と空を眺めていた。


陸斗が「バカやっても、仲間がいるからこそ面白いんだな」とふっとつぶやく。

美咲は「みんな無事で本当によかった……」と涙をぬぐい、やわらかく微笑む。


真央は「今日のデータ、全部伝説にしてまとめる」と黒い紙と呪いのペンを閉じた。

「次の研究テーマ、“魂の釜茹で耐性”」と新たな恐怖ワードを投下し、場を和ませる。


最後はみんなで池のほとりに座り込み、ゆっくりと余韻にひたる。

清透は(こんなバカな実験も、今しかできない“青春”なんだろうな)と胸の中で思う。


春の夕陽が水面を照らし、四人の笑い声と友情が、いつまでも池に響き続けていた――。

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