7.リュー、ロス@スミス公爵家
リューが王宮に戻ってしまって、我が家はなんだか静かになった。
「リューがいなくて寂しいなぁ……」
お父様、それは当主として情けない発言です。
「「「俺も思う」」」
兄さん達まで……。そんな私も寂しいんですけど。
使用人たちもなんだか覇気がない……。
「リュー様がいないとはりあいがいがなくって…」
仕事はきちんとして欲しいものです。
ガチャーン!
「申し訳ありません!」
これもリューがいなくて使用人の気が抜けているからだろうか?
うーん、お父様も兄さん達も仕事はきちんとしているみたいだけど、表情が生き生きしていないと苦情が来ています。邸内各所から。
私だってリューがいなくて寂しいんですよ。でも仕方ないじゃないですか!元々そういうつもりで預かっていたわけですし。ここは一つ、番犬でも仔犬の段階から飼育しましょうか?3匹くらい。大きくなれば、この邸の番犬として役に立ってくれるし、仔犬の時は家族と使用人、邸の者達全員から大きな愛を受ければいい。
あと…恥ずかしながら……私もリューの元に嫁ぐことになるし。そしたら、また邸が葬式みたいに暗~くなるかもしれないし。
そういった理由で、スミス公爵家が番犬(になる予定)を3匹飼うことにしました。
社交界では可愛らしい小型の犬を飼う事が流行っているようで、とあるお茶会にて……。
「あら、リンドウ嬢も犬を飼う事にしましたの?」
「ええ」
「この子(多分ポメラニアン。よく吠える)のように庇護欲をそそる、可愛らしいワンちゃんなのでしょうね」
「いいえ。後々はうちの番犬になる予定ですの。今は仔犬ですからそれは可愛いですけれども、1年もすれば油断すれば私の指など噛み切られてしまうような犬ですの。もちろん躾をしっかりし、無駄に吠えるような駄犬には育てませんよ?」
ポメラニアンらしき犬を抱えた令嬢は用事を思い出したようでどこかに行ってしまった。
ふん、うちのリル・リレ・リロと一緒にするんじゃないわよ。用事を思い出した?躾がなってなくてドレスの上で飼い犬に粗相をされたんでしょ?情けない。
スミス公爵家では、活気を取り戻した。…ようだ。
「リル~!リレ~!リロ~!厨房から肉を分けてもらったんだ。お食べ」
「お父様!!甘やかしてはいけません。と、何度言ったらわかるのですか?3匹のエサはきちんと使用人が管理しています。病気にならないように、毎日体重計にも乗せています。お父様のように、中途半端に食べ物を与えたりして甘やかしてはいけません」
「だって~」
「だってじゃありません!」
いい年のオッサン、あら言葉が悪いわ。おじ様が『だって』とか『だもん』とか言っても可愛くありません!
「ロルフもカイトもコウルもやってたぞ?」
なんですってー?全く、甘やかして病気になったらどうするんですの?
「では、お父様も兄さん達も三匹と一緒に遊んでください。そっちの方が健康的です。犬的にも運動の方がいいでしょう。こればかりは使用人もできないですしね」
使用人は元々の仕事もあるから。それはお父様も兄さん達も同じだけど、餌を勝手に増やされたりするよりもいい。
「ほら、後々は番犬になる予定ですし、カイト兄さんにはしっかりと躾をしてほしいわ」
4人皆納得したようで、犬達と戯れることに専念するようになった。
……お父様については、仕事しろよーという執事からの目線が付きまとってたけど。