6.バカ王子の誤算
ふん、スミス公爵家に10年間もぬくぬくといたとはな。王子ともあろう者が、王宮を捨てて公爵家なんぞに逃げるように……情けない。
スミス公爵家が何だっていうんだ?たかが公爵家だろう?あいつだって10年間やることなんてせいぜい公爵家の小間使い?
そして、あろうことかこの俺様が婚約破棄したリンドウと婚約とは笑える。というか、しばらく一緒に住んでいたとは、汚らわしい!婚前交渉していましたと告白しているようなものだろう?
まったくそんなのが実の弟とはなぁ。
はっ、もしや王太子としての初めての大仕事は実の弟の糾弾?胸が痛…まないんだなーこれが。俺だけが王子として、王位継承権を持つ人間となれば俺の王太子としての立場も盤石なものに!
明日の会議が楽しみだなー♪
会議にて、
「ここにいる青年が第2王子であるアンドリューだ。今まではスミス公爵家にて生活をしていた。そこで、領主経営・帝王学など諸々を学び、公爵家の次男殿に剣術を指導していただき、先日スミス家の長女であるリンドウ嬢と婚約をした」
「リンドウ嬢と言えば、その昔第1王子婚約破棄をされた令嬢ではありませんか?しかも今までひとつ屋根の下で暮らしていたという事実!婚前交渉をしていましたという紛れもない証拠ではないでしょうか?」
第1王子派というのも一応いるわけで、目的は第1王子を国王に担ぎ上げて、傀儡の国王として影から操ろうとする派閥。
「陛下、発言してもよろしいでしょうか?」
「当の本人だがまぁいいだろう」
「スミス公爵家には現公爵を含めて4人のリンドウ嬢大好き人間が揃っています。そのような中で、リンドウ嬢に不埒な事をしようなどとはとても思いません。物理的・社会的抹殺が頭をよぎります。スミス現公爵、そうですよね?」
「あぁそうだな。特に息子たちがリンドウを溺愛してるからなぁ。我が家で不埒な行いがされたとなれば、次男は物理的に抹殺するだろうな。長男は社会的抹殺が考えられる。殿下はこれまで我が家で学んできたことをフイにするわけにはいかないから思いとどまっていたのでしょうな。私も抹殺は嫌だなぁ」
「そういうわけで、婚前交渉とかはありえませんよ」
「これまでの話しぶりからもわかるように、第2王子は第1王子よりも賢い。これは事実だ。このことはわかるだろう?よって、王太子を第1王子から第2王子に変更したいと思う。異論のあるものはいるか?」
「しっ…しかしこれまでの10年間第1王子で特に問題はなかったわけで……」
「そうだな、しかしだな何も(・)なかった(・・・・)ことが問題で本来ならば法案の一つでも上げて……というところだな。なにせ10年間もあったわけだし。なおかつ、常にホルシュ家の令嬢と共にいるのか?他国からも不評だ」
「っ父上!」
「陛下と呼べ。そもそもホルシュ家は下級貴族ではないのか?婚前交渉の恐れがあるのは四六時中共にいる第1王子の方ではないだろうか?ん?」
その目は鋭く、阿呆王子を見た。
「では、王太子は第2王子のアンドリューとするということでこれ以上異論はないな?では今後王太子は第2王子に決定する」
このようにして、リューは王太子となった。ん?私は王太子妃(予定)なのか?現陛下はまだまだ若いしなぁ。しばらくは王太子だろう。元・王太子のバカ王子(28)は虎視眈々と(かなり見え見えなんだけど…)王太子の座を狙ってるけど、頭の出来が違うから無理でしょう。
年の差があるのに、年の差が逆転しているような発言力・外交手腕などなど、リューを貶めるようなものはない!
あるとき、バカ王子はリューに剣術の模擬試合を申し込んだらしい(カイト兄さんからの情報)。
馬鹿にもほどがある。
腕にホルスタイン嬢2世をつけていたらしい(カイト兄さん情報)。
結果は当然リューの圧勝。
そもそもバカ王子が剣術の稽古をしているのを見たことがない!模擬試合だから真剣使ってなくて良かったね。……むしろ使って抹殺すれば良かったのに。ハッ、いけない。本音が!
因みにカイト兄さんは前評判の通りに騎士団長になりました!