5.陛下に謁見
赤絨毯にきらびやかなシャンデリア、その先のデカい椅子に陛下はいらっしゃった。
「お久しぶりです。陛下。本日ここに参上いたしましたのは、スミス公爵家の長女リンドウとの婚約をお知らせしようと思いまして。それから……いつまで兄上の状況を放っておくのですか?兄上を廃太子し、私を王太子の座につかせていただきたく思います」
「久しいな、アンドリュー、リンドウ。あいつだが、お前がずっといなかったからなぁ。あいつが王太子というわけだ。お前はスミス公爵家でぬくぬくとしていたわけではあるまい?」
流石は陛下。お見通しなのかな?カマかけたのかな?
「当然のことではありますが、帝王学など王太子として必要な事はスミス公爵家にて学んできました。その他に、スミス公爵家の長男に領主経営について、次男に剣術を指導していただきました。日常生活として馬術は当然、貴族たるもの当たり前のように出来ることは全てマスターしてきました」
ところがどっこいバカ王子は貴族たるものが当たり前のことができないんだよなぁ。私は遠くを見てしまう。
「うむ。このことを次の会議にかけよう」
「有難き」
「ところで……アンドリューよ。ゴホンッ、非常に言いにくいんだが……」
「あ、父上。言いにくいなら後日聞きます。王宮に私の部屋はありますか?」
リューは立派に育ったなぁ。感無量だよぉ。で、何故だろう?私の婚約者なんだよねぇ。他にいい子が沢山いると思うんだけど。リューの希望なんだよね、これは譲れないって。
「ちょっ、ちょっと待て。王宮に開いている部屋はたくさんあるからっ。そうじゃなくてだなぁ。ずーっとこの10年間リンドウ嬢と一緒に暮らしていたわけだろう?二人は清い仲だろうな?」
「父上。なんて当然のことを聞くのですかっ。スミス公爵家ですよ?リンドウのことを大好きな人が私以外にも4人いるんです。4人ですよ?リンドウのお父上、そしてリンドウの3人の兄上達が。そんな中、抜け駆けのようなことをするわけがないでしょう?私はそんな命知らずではありません」
私も思う。もし、私とリューがどうにかなっていたら、リューは結構なことになっていたと思う。物理的にボコボコにされていたかもしれないし、せっかく育ったというのに社会的に抹殺ということも考えられる。我が家ながら、恐ろしい……。
「二人の事を会議にかけようと思うのだが、私と同じ疑念を持つ貴族もいるであろうと思ってなぁ。いやなに、お前を疑ってたわけじゃない。私だってスミス公爵家を敵に回したくない」
ここまでくると我が家が怖くなる。王家も怖いが我が家も怖い!
「兄上とはさっき顔を合わせてしまったからなぁ。でも、コウル兄さんが影で守ってくれるかな?私に何かあったらリンドウが悲しむし」
おぉう、兄さんを操る技をマスターしたのか?『私が悲しむ』と言えば兄さん達はだいたいの私のおねだりを聞いてくれる。
「名残惜しいけど、今日から王宮で暮らすことにするよ」
長いこと一緒に暮らしてたから寂しくなるなぁ。特にお父様が寂しがるかも。リューのこと末っ子みたいに可愛がってたからなぁ。