10.リンドウin王宮 ①
一応というか、本当に公爵令嬢だけど、王太子教育は受けなければならないので、毎日格闘している。とはいえ、ある程度まではバカ王子の婚約者時代にも受けていたので、結構進んだ方だと思う。
「流石はリンドウ!もう少しで王太子妃教育終わりだね」
私は「ほぇえ~、長かった……」と思ったのに、リューに「次は王妃教育が待ってるよ」と言われた。
その情報知りたくなかった……
「のちの国王(俺)を支えてもらうから、それなりの知識がないとね?」
こうなったら乗り掛かった舟だよ、頑張るもんね。何よりもリューが望んでるし。
王妃教育は王太子教育の応用編みたいな感じだった。ちょっと国家機密にも踏み込んでるから、コレを勉強したらもうこの国からは出れない……ってなるけど。あっ、でも外交で出るかなぁ?
それと!同時進行でリューとの婚姻式の準備も進められることになったので、私の脳ミソは大パニック!!
スケジュール管理は私付きの侍女ユアン(邸からついてきてもらった)にお願いして一任している。
ユアンは公爵令嬢のお付き侍女から王宮の侍女(王太子妃のお付き侍女)に一気に格上げした。曰く、「実家に仕送りする分が増えたので良かったです。え?自分で使う?いやだなぁ、そんな暇ないですよぉ」。
今日の予定は採寸らしい。
実家だと、男世帯なのに何故だろう?やたらと着せ替え人形のようにされる。気に入った服を着ている時はわざわざ絵師に描かせる。
通常、女性家族が着せ替えさせるのでは?と思いながら、されるがままにしてきたけど。何と言ってもウェディングドレス!ウェディングドレス!!一着だもん楽勝!
……と思っていたのが間違いだった。そうだ、リューはあの家で育ったんだ。ウェディングドレスだけど、見本帳を見て「これは露出し過ぎだろう?」とか「こっちの方がリンドウの良さが引き立ちそうだな」とか言ってる。リューだって王太子としての仕事があるでしょうに。そっちをしててくださいよ。私は奥の手を使うことにした。
「……ウェディングドレスは当日まで、内緒にしてリューを驚かせたいな」
この言葉は結構効いたようで、「過度の露出は控えるように!」という言葉を残してリューは仕事に戻っていった。
「はぁ~」これでのんびり選べる……。と思ったのが間違いだった。
「リンドウ様にはこちらのデザインがいいと思いますわ!」「何を言ってるの?それじゃあ露出が多すぎで殿下にお叱りを受けるわ。こちらのデザインのほうがいいわよ」等々侍女達がウェディングドレスの見本帳に興奮して私のリアクションを見ている。
あぁ、私はのんびり選びたかったのになぁ。なんだか大事。
「そうねぇ、やはり生地は最上級のものを使った方がいいわよね?……それ以外は本番の事を想いながら一人でじっくり考えたいなぁ」
この言葉は、侍女達の心に届いたようで「リンドウ様!私達が邪魔をしてしまいました。申し訳ありません!『過度の露出は控えるように!』との殿下の希望はありますが、どうぞひとりでごゆるりとお考え下さい!」
よし!これでゆっくりできる!…と思ったのに甘かった。
「リンドウ様?王妃となられる方が代々着てきたウェディングドレスがあります。そちらをお召しになってはいかがですか?」
と、古株の侍女に言われた。なんでも現王妃(バカ王子の母)も着ているらしい。サイズを調整するだけだから楽かな?
「そうね。新しく作るよりも伝統的に着た方が…というか先祖代々大事にしてきたものですし、それがいいのかもしれませんね。…でも私は思うのですが現王太子の母上はお召しになったのでしょうか?」
古株の侍女が閉口してしまった。
そうよねー。確かに先祖代々っていうのは大事だけど実際問題リューの母上様が着ていらっしゃらないのなら、私にはほぼ無縁なのよね。思い入れが半減。
「この件について王太子様と相談してみますわ」