1.婚約破棄、万歳!
よろしくお願いします!
どうして私が…。
どうしてなんだろう?
どうして私が、こんな頭がお花畑なのか、脳みそがカラッコロいってそうな人達を相手にしなきゃなんないんだろう?
「聞いてるのか?リンドウ=スミス!俺様は、お前と婚約破棄して、この愛くるしいホルシュ=カイン令嬢と婚約するんだ。わかったか!これだから俺みたいな完璧王子に婚約を破棄されるんだよなぁ。せっかくこのまま大人しくしていれば王妃になれたものを……」
「アンドリュー様、そんなに仰っては可哀そうですわ。いくらリンドウ様がアンドリュー様の愛を繋ぎとめられなかったからって」
眠い!
私はただそう思っていた。
この茶番はいつ終わるんだろう?
ん?そういえば完璧王子と聞こえたような気がしたが…。アンドリュー殿下の事ではないよね?だって、公務は疎かで私とか大臣に丸投げして、そこの乳がでかいホルス=タイン令嬢と乳繰り合ってばかりいたんだし。
婚約破棄されたーって事後報告で家に帰ってから報告すればいいよね?と思うけど、私は何か知らないけど、大勢の前で婚約破棄されてるの?非常識な。陛下は知らない……んだろうなぁ。確か数日前から隣国に視察に行っておられたはず。
外野がガヤガヤ言ってるよ。まぁ、未来の国王夫妻だから、自分たちが忠誠を誓うことになるけど、「え?この人たちに忠誠を…?」ってなるよね。領民のことを考えると、自分たちだけ隣国に移住とかも無理っぽいし。
「コラ、俺様の話を聞いているのか?」
主に聞く価値がないペラッペラの話なのであまり聞いてません。ここにとどまっているだけで御の字と思ってくださると助かります。けど、プライドがどんな山よりもはるかに高い貴方にはそのような芸当できないのでしょうね。
「はい、婚約破棄の件は確かに承りました。アンドリュー殿下の方に有責という事で慰謝料を請求させていただきますね。国庫からの支払いではなく、あくまでも殿下のポケットマネーから支払いをしてください。では失礼します。お二人の今後のご多幸をお祈り申し上げます」
はー、帰ったー。外出用のドレスはダルイ。私考案の部屋着でダルダルで過ごそうっと。私は部屋に備えられているフカフカのお気に入りソファにダイビングした。
「お帰りなさいませ、お嬢様。お嬢様考案の部屋着は楽で素晴らしいと思いますよ?しかしですね、このあと晩餐でまたドレスを着なきゃなんないのです。そ・れ・にダルダルした服でダルダル過ごしては体形がダルダルになりますよ!」
彼女は私付きの侍女で乳姉妹のユアン。なんて恐ろしいことを予言するんだろう。私考案の部屋着でダルダル生活をしていると体形が樽?……恐ろしい。
「あのっ、いや、ちがうのよっ。部屋着でもきっちり動くわよ~。ほら、婚約破棄の書類も揃えないといけないし、慰謝料請求の書類も揃えないといけないし、やだわ、ほら忙しいわね~」
「お嬢様…今何と?婚約破棄?…私の耳がおかしいのでしょうか?いやですねぇ。若年性の難聴?お嬢様ほどの方との婚約を破棄するような阿呆がどこの世界にいるのでしょうか?」
ハハハ…笑顔が怖いって…。…はい、この世界にいます。この国の王太子ですよ~。
「あぁ、さっき婚約破棄してきたのよ。ナルシストの馬鹿王子がさぁ、ホルス=タイン令嬢と浮気して、婚約破棄を言ってきたのよ~。
全く、こっちからそんな馬鹿願い下げよ。熨斗つけてホルスタイン令嬢にあげたいわ。
王子は馬鹿だし、ホルスタイン令嬢は脳にいくべき栄養は全部乳にいったみたいだし、この国はこの先危ないんじゃない?」
間違ったことは言ってないわよね?
「王太子には幼い弟がいたはずです。彼は側妃の子で賢い子なのですが王太子は身分から歯牙にもかけないというか、バカにしているというか……。馬鹿に馬鹿にされるのかぁ。幼いって?いくつかわかる~?」
「確か今10才くらいかと思います。恐れながら、お嬢様。ホルシュ=カイン令嬢では?」
「いやぁ、乳が目に入っちゃってだんだん名前が変わっちゃったんだよ」
今では『ホルスタイン嬢』。
「う~ん、よしわかった!このままじゃ馬鹿王子が次期国王になるわ。恐ろしい。その幼い弟が王太子になれるような年齢になるまで、我がスミス公爵家で保護。我が家が後見人となるわ!このまま王宮なんかにいたら絶対に暗殺とか毒殺とか殺されちゃう!」
「……娘よ。バイタリティは素晴らしいと思う。まずは婚約破棄なんかの書類だな」
「お父様……どこから話を聞いて」
というか、どこから湧いて…。
「お前が帰ってきた辺りからか?」
全部じゃんかーーーー!!
「リンドウー!婚約破棄―?!」
「婚約破棄だと⁉どこの阿呆だ?」
「まさか⁉婚約破棄?信じられん…」
三人三様動揺している。……みたい。
3人の兄達が突然参戦しだした。
長男のロルフはこの国の宰相補佐をしております。完全なる文官です。
次男のカイトは騎士団所属で騎士団長最有力候補とか言われています。
ロルフ兄さんとカイト兄さんは廊下で戸に耳をつけて盗み聞きをしていたようです。
三男のコウルは国の影をしているようですが、仕事内容は知りません。
コウル兄さんは、仕事柄でしょうか?天井裏で盗み聞きをしていたようです。
……三人とも所謂シスコンです。早く婚約者でも見つけて婚約でもすればいいのにと思うのです。妹心兄知らず。
「王太子…仕事で忙殺させてやろうか?」
ロルフ兄さん、王太子に行くはずの仕事はだいたい周りの大臣とかに行くからそれは無駄な抵抗です。
「誤ったふりをして、斬りつけようか?」
カイト兄さん、王族の殺人は極刑が免れないのでやめてください。恐らく一族連座となります。あんな馬鹿王子に命を懸けたくありません!
「暗殺……」
??
3人でギャアギャアと王太子に復讐をする方法を模索している。
「お前らー‼」
お父様流石です!諫めてくれるのですね。尊敬です!
「復讐はもっと慎重に真綿で首を絞めるようにするものだ!」
……違った。うちはそうだった。私が待望の女の子だったから私に激甘なのよね……。
「さっきリンドウと侍女のユアンが話していたように、うちで第2王子の後見人をするという話だが……アリだな。男兄弟が一人増えたと思えばどうってことない」
いやいや、王子ですよ。お父様。でも……。王子教育とかそういうのかぁ。それならうちでもできるなぁ。場所が王宮からここに変わるだけだし。いいんじゃない?
あとは陛下が首を縦に振ってくれれば……。
「大丈夫だ。こんな時のために陛下の弱みを握っている」
と、ロルフ兄さん。ロルフ兄さん、ドヤ顔でいう事じゃないですよ。サムアップまで…。文官をしてるとわかることがあるんだろうなぁ。お父様も宰相だし、弱みの一つや二つ、握ってるんだろうなぁ。恐ろしやスミス公爵家…。
「そうと決まれば早い方がいいな。毒殺の恐れもあるし」
王宮コワイ……。
「明日にでも第二王子を保護してこの家に連れて来よう。彼に事情を説明すれば賢いアンドリュー殿下だから、理解してくれるだろう」
「第一王子と名前が同じなの?」
「ああ、なんかなぁ。同じなのに、出来が違う事を強調したかったらしい。当初な。でも現在は逆に第二王子の賢さが強調されているがな」
まったくお父様の言う通りだなぁ。と思う。
6人に増えるのか……我が家の応接室、椅子足りるかな?食堂の長~いテーブルは賑やかになっていいな。と私はのん気に思っていたのです。
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