【番外編】
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
《守美Side》
視界が反転する。
そこは、物理法則の通用しない混沌の海だった。
赤黒い怨念が渦巻き、重力さえもがねじ曲がる、絶対の封印領域。
殺生石の内部――白面金毛九尾の魂が鎮座する「異空間」である。
本来、肉体を持つ人間が入れば、瞬く間に魂ごと溶解する死の世界。
だが、私はその虚空に、凛と立っていた。
『貴様……一条守美か!』
空間の最奥から、憎悪に満ちた絶叫が轟いた。
闇が凝縮し、巨大な九つの尾を持つ狐の姿が浮かび上がる。
伝説の大妖怪、白面金毛九尾。その本体だ。
『忌々しい……! かつて我をこの石ころの中に封じ込めた張本人が、ノコノコと何の用だ!』
「お久しぶりですね、白面。貴女にとっては昨日のことかもしれませんが、私にとっては随分と昔の話です」
私は静かに告げる。
かつて、私が命を賭して施した封印。
以前の私なら、この空間を「外から閉じる」ことしかできなかったでしょう。
けれど、レイさんという規格外の異能者と触れ合ったことで、私の「結界」に対する解釈は次元を一つ上げた。
「結界とは、単なる壁ではありません。空間そのものを定義し、支配する概念。……一度貴女を封じた私なら、この領域の合鍵を作ることなど、造作もないことです」
私は人差し指を立てる。
それだけで、赤黒い混沌の空間が、幾何学的な光の格子によって塗り替えられていく。
『ぐ、ぅぅぅぅっ!? 体が……動かぬ!?』
白面が呻いた。
彼女の手足、そして九つの尾が、空間そのものに縫い付けられたように固定されている。
私がこの異空間の「管理者権限」を奪い取り、彼女をシステム的にロックしたのだ。
『ば、馬鹿な……! 我が領域を、内側から掌握したというのか……!』
「ええ。貴女はもう、指一本動かせません」
白面がギリリと歯を鳴らす。
だが、すぐにその瞳に狡猾な光が宿った。
『……ククク、なるほど。流石は現代最強の術者よ。だが、それがどうした?』
白面が嗤う。
『我を縛ることはできても、滅ぼすことはできまい? 貴様の結界術は「守り」と「封印」に特化している。貴様の息子を守るために磨いたその力では、我のような災厄を殺しきることはできん!』
図星だった。
私の術は、大切なものを守るための力。
相手を無力化できても、トドメを刺す決定打に欠ける。
「その通りです。私一人では、貴女を殺しきれない」
私は素直に認める。
『ならば無駄なあがきよ! いずれ貴様の霊力が尽きれば、我は再び――』
「――だから、連れてきたのですよ」
私が空間の一角を開く。
ズズズッ……と時空が歪み、そこに新たな人影が現れる道を繋ぐ。
「私の自慢の息子……『処刑人』を」
『あ……?』
白面の思考が停止する。
現れたのは、一人の少年――サトルだった。
『なっ……!? 小僧だと!? 馬鹿な、ありえん! 貴様ごときの力量で、この高密度の霊的空間に転移になどできるわけが……!』
白面の叫びはもっともだ。
サトルの実力は成長しているとはいえ、まだ人間としての器の限界がある。
生身でここに踏み込めば、圧死するのが道理。
だが、今の彼には「加護」があった。
「待たせたな、母上」
「すみ。またせた」
サトルの肩に、ちょこんと座る幼い少女の姿があった。
おかっぱ頭に着物姿。
座敷童の幸子だ。
『ザ、ザシキワラシ……!? まさか、その「幸運」の異能で……!?』
「ご名答」
サトルが不敵に笑う。
本来なら成功率ゼロ%の次元転移。
それを、私が結界で道を切り開き、さらに幸子の「幸運(確率操作)」による補正を掛けることで、無理やり「成功」という事実に書き換えたのだ。
「最強の結界師が縛り、最強の幸運が道を繋ぐ。……これでお前を殺せない道理はないだろ?」
サトルが右手を掲げる。
その手の中に、眩いばかりの光を放つ霊剣が出現した。
『ひ、ひぃぃぃぃっ!? や、やめろ! 待て! 話し合おう! 我がいなくなれば、世界のバランスが――』
「知るかよ」
サトルは一切の容赦なく、踏み込んだ。
白面は、私の結界によって拘束され、回避どころか防御の姿勢すら取れない。
ただの巨大な的だ。
「俺たちの日常から、退場しな」
サトルが霊剣を振りかぶる。
狙うは白面の眉間。魂の核。
「ぶっ殺す」
閃光が、永遠の闇を切り裂いた。
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