【番外編】
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
私は極東城の地下深くへと降りていく。
道中に警備兵の姿はない。
不気味なほどの静寂。
まるで、私がここへ来ることを知っていて、あえて招き入れているような――。
『罠かもしれぬが、構わぬ。蹴散らせばよい』
脳内で玉藻様が嗤う。
その言葉に背中を押され、私は最深部にある「封印の間」へと辿り着いた。
巨大な注連縄が張られた岩戸の前。
そこに、一人の男が立っていた。
「お待ちしておりましたよ、レイさん」
白磁のように白い肌に、糸のように細い目。
公家のような狩衣を纏った優男。
極東城の主にして、特務機関の王――九頭竜白夜。
彼は敵意を見せず、まるで茶会の客人を迎えるように微笑んでいた。
「……ここを通してください」
「それはできません。この先にあるのは世界の破滅。管理者として、通すわけにはいきませんね」
「なら、退いてもらいます」
私は地面を蹴った。
【縮地】(霊力を足に集中させ、距離をつめる技術)による神速の踏み込み。
反応できるはずがない速度で、懐に潜り込み、掌底を放つ。
スカッ。
「え……?」
手応えがない。
白夜は、まるで散歩でもするように、半歩だけ横にずれていた。
私の攻撃が空を切る。
「やはり、速いですね。ですが――」
白夜が優雅に扇子を振るう。
私は本能的にバックステップで回避した。
鼻先の空間が、鋭利な刃物で切り裂かれたように歪む。
「『視えて』いれば、当たることはありません」
未来視。
この人は、数秒先の未来を見ることができるハクタクの異能者だ。
だから、私がここに来ることも分かっていた。
『ククク、ならばなぜ、もっと手前で止めなかった? こやつの未来視なら、地上でレイを殺すこともできたはずだぞ?』
玉藻様の言う通りだ。
なぜ、この最深部まで招き入れたのか。
「ここで私を止める自信があるからですか?」
「ええ。それに、ここが最も確率が高いのですよ。あなたが止まる未来のね」
白夜がスゥ……と目を細める。
「残念です。言葉では届かないようですね」
再び、私は仕掛ける。
爆炎、紫電、真空刃。
あらゆる異能を連射する。
だが、当たらない。
白夜は紙一重で、最小限の動きで、全てを回避し続ける。
『鬱陶しい男だ! だがレイ、お前ならできるだろう?』
「……はい」
私は呼吸を整える。
彼の「眼」を見る。
彼が世界をどう視ているのか。その感覚を、波長を、私の魂に同調させる。
異能【鵺】。
私の視界が、ぐにゃりと歪んだ。
そして――「視えた」。
白夜が次に右へ避ける未来が。
「はぁっ!」
私は彼の回避先へと、先回りして拳を放つ。
「おや」
白夜が目を見開いた。
だが、彼はその「先読みされた未来」すらも視ていたのか、空中で無理やり体勢を変え、私の拳を扇子で受け流した。
「私の『未来視』すらコピーしましたか。素晴らしい才能だ」
「でも、これで互角です」
未来の読み合い。
千日手になるかと思われた。
だが。
『互角? 違うな。手数の多さで、お前が勝っている』
そう。
彼は「未来視」しかない。
私は「未来視」に加え、数多の妖怪の異能がある。
私は未来を視つつ、霊亀の結界展開した。
白夜が回避しようとした先、その足が結界によって捕まる。
「っ!?」
「視えていても、避けられなければ意味がありません!」
動きの止まった白夜に、私は全霊の【呪禁】を叩き込む。
ドォォォォォォォン!!
衝撃が地下空間を揺らす。
白夜の体が吹き飛び、岩戸の壁に激突した。
「が、はっ……」
白夜が膝をつき、口から血を吐く。
勝負あった。
『やったぞレイ! これで邪魔者はいなくなった!』
玉藻様が歓喜の声を上げる。
私は白夜を見下ろす。
彼は苦しげに胸を押さえながらも、なぜか――ニヤリと、笑っていた。
「……なにか、おかしいですか」
「いいえ……。ただ、『間に合った』な、と思いまして」
「間に合った……?」
その時だった。
『ぎゃあああああああああああああっ!?』
突然、脳内で玉藻様が絶叫した。
頭が割れるような激痛。
私はその場にうずくまる。
「ぐっ、あぁっ!? な、なにが……!?」
『体が……熱い! 焼ける! こ、この霊力は……まさか!?』
玉藻様が怯えている。
あの不遜な大妖怪が、恐怖に震えている。
「お気づきになりましたか」
白夜がふらつきながら立ち上がり、懐から懐中時計を取り出した。
「極東最強の異能者、一条守美。彼女がなぜ、ここにいないと思いますか?」
そういえば、そうだ。
この国の危機に、最強である彼女が姿を見せないのは不自然だった。
「私があなたを足止めしている間に、彼女には『裏口』から回ってもらったのですよ。封印の内部……白面金毛九尾の本体へ直接、楔を打ち込むためにね」
『謀ったなあああああああっ! 人間風情がぁぁぁぁぁぁっ!』
玉藻様の絶叫が響き渡る。
白夜は涼しい顔で、私に告げた。
「未来視を持つ私が、なぜ勝ち目の薄い戦いを挑んだのか。……それはね、レイさん。あなたに『勝てると錯覚させる』ためですよ」
【おしらせ】
※2/2(月)
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