【番外編】
私は、逃げた。
悟様からは、異常者扱いされてしまった。
頼れるのは、もう、玉藻様しかいない。
『残念なお知らせだよ、レイ』
夜空を駆ける私に、玉藻様が話しかけてくる。
足元に【霊亀】の結界を作れば、空だって飛べるのだ。
風が頬を打ち、髪が乱れる。
玉藻様の要件はわかっていた。
「追っ手ですね」
霊力感知ができるので、私はすぐに敵の接近に気付けた。
背後から迫る、鋭い気配。
『くひっ。敵ね、うん、そうだよ、レイ。敵だ。百目鬼の鬼だね』
多分、真紅郎さんだろう。
霊力を消して、私に気取られないようにしている。
でも、甘い。
その程度で、私の感知の網を潜り抜けることはできない。
『で、どうするんだい?』
どうする。
真紅郎さんを傷つけることはできない。
したくない。
だって、大事な人だもの。
私のことを支えてくれた、百目鬼の人たちは。
だから。
「無視します」
私がさらに速度を上げたことに、真紅郎さんは気づいたようだ。
彼は【吸血鬼】の異能力を持つ。
自らの手首を切り、血を流す。
そして血液から眷属である、赤黒い蝙蝠を作り出すのが見えた。
キィィィィン!
蝙蝠の群れが、私に向かって押し寄せてくる。
多分、私を足止めするつもりなのだろう。
『殺そうとするんじゃあないのかい?』
「ふざけないでください」
私は声を震わせる。
いくら玉藻様でも、言っていいことと悪いことがある。
真紅郎さんは、そんな人じゃあない。
『そうか、すまないね。で、どうするんだい、あの蝙蝠を』
普通の人が相手なら、こんな酷い侮辱をした時点でキレていた。
相手が玉藻様だから、まあ、許してあげるけれど。
私に押し寄せる蝙蝠たち。
「どうもしません」
バジュッ!
蝙蝠が私に近づいた瞬間、ボッと音を立てて滅した。
『今のは霊亀の結界、いや、違う。ただの霊力だ。レイの体から迸る異能ですらない、単なる霊力で、眷属が消し飛んだんだね』
あんなの、異能を使うまでもない。
問題は、相手が本気で異能を使ってくる場合だ。
すなわち、真紅郎さんが吸血鬼の異能を発動し、血液のロープを放ってくる。
その未来を、【白澤】の異能による予知で視た。
来る。
私は右手を向ける。タオさん、【饕餮】の異能を発動。
異能無効化が、相手が異能を使ったまさにその瞬間、ドンピシャりで発動する。
相手からすれば、異能が不発に終わったのだと思うはずだ。
私がしたかったのはそれだ。
相手に心理的な不安を与える。考えさせる。
その困惑した一瞬の隙を突く。
私は身を翻し、一瞬で真紅郎さんに接近する。
驚愕に目を見開く彼の胸に、そっと手で触れて、【呪禁】を発動させた。
相手の脳神経に、陽のエネルギーを一気に流し込む。
神経を揺らされ、許容量を超えた真紅郎さんは、カクンと意識を落とした。
私は落下する彼を結界でふわりと包み、安全な屋根の上に寝かせる。
その場を後にする際、私は小さく呟いた。
傷つけて、ごめんなさい。
でも、私にはやらないといけないことがあるの。
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※1/22(木)
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