【番外編】
――え?
「お嬢様? どうしました、お嬢様?」
「え……? 朱乃さん……あれ……私……あれ……?」
私は、気付いたら、一条家の屋敷の廊下に立っていた。
視界がぐらりと揺れる。まるで、今まで別の場所にいたかのような、奇妙な感覚。
あ、あれ……?
「朱乃さん……私……今……何やってました……?」
「? さぁ。お嬢様は、ぼうっと庭を見つめておりましたけど……」
ぼうっと? 私が?
嘘だ。
何か……私、とても大事なことを、していたような気がする。
それも、何かトンデモナイことを、してしまったような……。
なにか……何を……あ、あれ……?
思い出せない。記憶に霧がかかっているみたいだ。
「お嬢様?」
「…………」
わからない。なに? 怖い……何か、すごい……胸のざわめきがある。
何かしてしまったという……焦燥感と罪悪感。
取り返しのつかないことをしてしまったような……。
こ、怖い……怖いよ! 怖いよ!
「お嬢様、大丈夫ですかっ!」
心配して駆け寄ってくる朱乃さんに、私は反射的に叫んでいた。
「うるさい!」
パシッ!
「え……?」
乾いた音が廊下に響く。
朱乃さんの差し伸べた手を……私、払ってしまった。
「あ、いや……ごめんなさい……」
自分でも信じられなくて、震える手を見つめる。
「いえ……。でも、お嬢様。だいぶ、お疲れの様子……。横になった方がよいのでは?」
「そ、そうですね……すみません。そうします……」
私は逃げるように、朱乃さんのもとを去って、自分の部屋へと向かう。
一体……何をしてたんだろう……。
怖い、怖いな……。不安だよ……。
自分の頭がおかしくなってしまったんじゃないかって、押しつぶされそうだ。
こんなときは……。
『レイ』
「玉藻さんっ!」
そうだ、玉藻さんだ。こういうとき、玉藻さんが、そばにいてくれるんだったっ。
私の心の支え。唯一の理解者。
「もう、玉藻さんどこいってたんですかっ。ずうっと黙ってっ」
『はは、すまないねレイ。それより何かあったのかい?』
「はい……でも、何かあったのか、思い出せなくて……怖くて……」
『大丈夫、大丈夫だよ、レイ。大丈夫……』
脳内に響く、甘く、優しい声。
その声を聞くと、ささくれ立っていた神経が、嘘のように鎮まっていく。
……玉藻さんが大丈夫っていうなら、大丈夫、か。
うん……なんだか、心が……晴れやかになっていくようだ。
私は安心して、深い眠りへと落ちていく。
『……きひひっ。縛りはちゃあんと、結ばれているようだなぁ……きひひっ』
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※1/2(金)
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