エピローグ
……信濃での事件を解決した私たちは、自動車を回収して、東都へと戻ってきた。
随分と長いこと、東都を離れていたような気がする。
けれど、日数でいえば、それほど開けていたわけではない。
ガス灯の明かりを見た瞬間、ふぅっと安堵の息が漏れた。
「れいたん……今回はお疲れ様」
隣に座るサトル様が微笑んで、私の手をぎゅっと握る。
……この手の温かさが、好き。
そして、こうして労ってくれる、サトル様の優しさも……大好きだ。
「さとるんこそ、お疲れ様でした」
「いやいや、俺は今回、何もしてないよ」
「何をおっしゃる! さとるんがいなかったら、信濃の傷ついた大地はそのままでしたよ」
「そうか……」
「そうですよ」
「じゃあ……みんな頑張った、だな。うん」
「はいっ!」
私だけじゃない。ひのわさんも、真紅郎さんも、みんなが頑張った。
そのおかげで、山の神は力を取り戻し、極東にはまた、平和が戻った。
「れいたんが来てから、幸運が……奇跡ばかりが続くな」
「奇跡……?」
「ああ。れいたんがいなかったら、今頃、極東は崩壊していただろう。それくらい、れいたんがいなかったらどうにもならない事件ばかりが、最近起きてるな」
そう、なのかな……。
極東に来る前のことはわからないけれど、そう言ってもらえるのは……嬉しい。
「れいたん。これからも……ずっと俺の側に居てくれるか?」
「そんなの、聞かなくてもいいですよ」
すっと言葉が口を突いた。
そう……そんなの、わざわざ聞かなくたって、わかってることだ。
「前に言ったじゃないですか。あなたの隣が、わたしの新しい居場所になったって」
……思えば、今日までいろんなことがあった。
でも、いつだって隣には、サトル様がいた。
彼の隣が、私の“特等席”になったのだ。
「これからも、あなたの側にいさせてください。さとるん」
「ああ! もちろん!」
自動車が、見慣れた浅草の街へ入っていく。
ガス灯に照らされた街並み、歩く人たちの笑顔が見えた。
そして——
「レイさん! 悟ぅ!!!!!!!!!」
一条家の前には、お義母さまをはじめ、一条家のみなさんが集まっていて、私たちを出迎えてくれた。
「「「おかえりなさい!」」」
車が止まり、私たちは外に出て……
みんなに、久しぶりの——再会の挨拶をする。
「「ただいまっ!」」




