山の神の悩み
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「ぬ?」
「どうしたのよ、おちび」
「……山の神への信仰心が、溢れていく」
「はぁ……!? なにそれ!」
どういうことだろう……。
信仰心が薄れているから、山の神は小さくなっているのに……。
「幸子ちゃんれーだー」
幸子ちゃんが、ひのわさんの頭の上に立って、両手を広げる。
「せつめーしよー。幸子ちゃんのお耳はとても敏感なのだ」
「意味わからない……」
「ふんふん。なるほど。理解した」
幸子ちゃんが何かに気づいた様子。
「どうやら、信濃の人たち。守美を、山の神だと勘違いしてる」
「「「はぁ……?」」」
私たちは首をかしげる。守美さまが、山の神……?
「あ、まさか……霊亀を山の神だと……?」
「せーかい」
そんな……。ひのわさんはまだピンと来てない様子。
「どゆこと?」
「守美さまは、霊源解放の姿……つまり、霊亀の姿で、現れたでしょう?」
「そうね」
「その姿を、信濃の人たちは見て、それが山の神だと思ったんでしょう」
「あ……。なるほど……。確かに、守美さんが出たあとに、大地は戻ったもんね」
うり坊姿の山の神もまた、得心いったようにうなずく。
「もとより我は人前に出ないからな」
だからこそ、なおのこと、あれが山の神の御業だと皆思ったのだろう。
「なんだ、結構信仰されてるじゃあないの。山の神って。……って、あれ? じゃあなんで山の神はうり坊姿のままなの?」
「いうて、かせいだ信仰心は、守美へのものだからなのん」
「なるほど……。人違いだものね。神違いか」
どうやら、信濃の人たちは、霊亀を山の神だと思ったらしい。
山の神が信濃を救ったって気持ちが、神の力として満ちてはいる。
でもそれは結局、別の神がかせいだ信仰心であって、山の神のものではない。
だから、山の神に力が戻らないと。
「どうしましょう……」
「ここは、レイの出番ですぞ」
と、幸子ちゃん。え、私……?




