荒れ狂う山の神
二つに分裂した野槌を、私たちは手分けして相手する。
野槌は再生する都度霊力を失ってく。
最初は、連なる山よりも大きく長く見えた巨体も、今や小さな山に見える……。
「これなら……いけるわね! あとは小さくし、饕餮に食ってもらって、山の神を元の姿へと戻すだけ!」
ひのわさんは喜色をにじませながら同意を求めてくる。
……そう、それが当初の作戦だった。でも……事情が変わったのだ。
それをすると、山の神は滅してしまう。だからそれをするわけにはいかない。
……そして、敵に、自分の思惑が見抜かれてることを、知られてはいけない。
まもなく野槌は饕餮が食べられるサイズにまでなった。
「よし……! レイ……! 今よ……!」
「…………」
「どうしたの、レイ!? 早く野槌を……」
そのときである。
『やっほ~☆ ママ、みっけたよー!』
女の声が脳内に響き渡る。
よし……!
「サトル様、結界で野槌を動けないように捕縛してください!」
真紅郎さんの眷属を通して、私はサトル様に連絡する。
彼は私の言ったとおり、野槌を二つ閉じ込める。
野槌はだいぶ弱ってる状態なので、彼一人でも、封じることができるようだ(陰陽の力でパワーアップしてることもあって)。
「れ、レイ……どうしたのよ?」
私はひのわさんたちと供に、とある場所へと向かう。
それは私たちが戦っていた場所から……離れた場所。
信濃の北にある、お寺だ。
元々山の神が住んでいたというそのお寺の中へと向かう。
そこには……。
「くそっ! 離せ……! 離せよ……!」
一匹の妖魔が居た。そして……その妖魔を捕縛しているのは……。
「れ、レイ!? なんでレイがもう一人!?」
私そっくりの女の子(しかし軽装)が、妖魔をロープでグルグルまきにしている。
女の子はニコッと笑う。
「ママの式神……椎でぇす☆」




