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荒れ狂う山の神


 まずは、手元にある武器を試してみよう。


「【タオさん】!」


 饕餮とうてつのタオさんを、霊源解放れいげんかいほうする。


 現れたのは、もこもこふわふわの羊さんだった。


「めえ」


「タオさん、野槌を吸い込むことは可能ですか?」


 ちら……とタオさんが眼下を見下ろす。そこにはのたうつ野槌の巨体。

 しばらく見つめたのち、ぷるぷると小さく首を振った。


 ……どうやら無理らしい。


「めえ、めえ……」


「敵が大きすぎる……ってことですか?」


「めえ」


 こくん、とタオさんがうなずく。


「だよね、そりゃ無理だわ、あんなサイズ……」


「では、私が野槌を切り刻み、バラバラにしてから吸い込むのはどうでしょうか?」


 真紅郎さんが提案する。


 それを聞いたタオさんが、また小さくうなずいた。


「じゃあ、その方向でいくわよ。レイは待機。切り刻むのは、あたしらに任せて」


 ひのわさんが言うと、すぐに号令をかける。


「いくわよ、【火車】!」


 ひのわさんも相棒を霊源解放れいげんかいほう

 二人の姿が空へと舞い上がり、野槌めがけて飛び出していく。


 ……正直なところ、野槌が山の神であることを思えば、吸い込んだり、異能で切り刻むのは気が引ける。


 でも放っておけば、信濃、ひいてはこの極東の地全体を、あの神様が飲み込んでしまうことになる。


 わたしが知っている神霊たちは、みんな優しい存在だった。


 そんな彼らが、自国を傷つけることをよしとするはずがない。


 ……だから、野槌を止める。


 タオさんの胃袋は異空間へとつながっており、一時的に保管することもできる。


 まずは取り込む。それから、正気を取り戻すための方法を考えよう。


「いくわよ!」


 バッ、と火車さんが宙を舞う。


 尻尾が無数に分裂し、その一本一本が野槌の体へと巻きついていく。


「爆ぜろ!」


 どがんっ! という轟音とともに、野槌のぶっとい胴体が炸裂した。


 一方、真紅郎さんは空中で両手を広げ、自身の血を一点に集中させる。


「血刃!」


 霊力が解放され、凝縮された血が刃となって、ものすごい勢いで野槌へと飛んでいく。


 赤い閃光が走り、肉の山を鋭く切り裂いた。


 二人の連携攻撃で、野槌の巨体の一部がついに切断される。


「タオさん!」


 「めえっ」と一声鳴いたタオさんが、大きく口を開く。


 しゅごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!


 猛烈な吸引力とともに、切断された野槌の肉塊が吸い込まれていく。


 その巨大な塊は、ずるずるとタオさんの口の中に引き寄せられ……


 ごくん、と、タオさんが一飲みにした。


 いける。これは、いける……!

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