霊道の中 3
妖魔の妨害を、受けているよう様子だった。
「レイや悟が気づかないって、相手の気配を消す技術はそうとうなもんね」
ひのわさんの言葉に、サトル様がうなずく。
「二人ともが妖魔の気配に気づけないくらいからだな。山の怪は本当に厄介だ」
樹木子のときもそうだったけども、やはり、山の怪は通常の妖魔よりも手強い。
「神域を使いますか? そうすれば、敵はデバフが掛かって……」
「お嬢様。神域は奥の手です。簡単に使ってはなりません」
真紅郎さんが私を止める。
確かに、神域を一度使うと、また霊力を補充する必要がある。
神域を展開せず、見えない敵を見つけ出すなら……。
「宝具を使います」
私は右手を伸ばす。
饕餮の異能で、空間に穴を開ける。
タオさんの胃袋にしまってあった、宝具を取り出す。
神霊の眷属、眼鏡丸さんからもらった、特別な眼鏡の宝具を装備する。
「眼鏡なんてかけてどうするの?」
「この眼鏡を使えば、隠れてる妖魔を見つけられます」
体内妖魔を、可視化できる宝具を使えば、隠れてる妖魔も見つけ出せると考えたのだ。
眼鏡を使うと、ぼぅ……と、隠れている妖魔が姿を現す。
皆さんの頭の上に、茶色い毛皮の、小さな獣が現れる。
「見えました! これは……イタチ? 茶色い毛皮の小さな獣です」
『それは【貉】や! 人を迷わすたちのわるい妖魔やで!』
日車さんが私たちに、敵の正体をおしえてくださる。
「貉ですか。なるほど……どおりで目的地に着かないはずです」
どうやら相手を迷子にさせ、目的地到着できなくさせる異能を持っているらしい。
しかも姿を消す術まで身につけている。
「れいたん、眼鏡を!」
「はいっ!」
私はサトル様に眼鏡の宝具を渡す。
彼はそれを装着し、異能を発動させる。
「【霊亀】!」
霊亀の異能を使い、貉を捕縛しようとする。
けれど、彼の結界は、私たちの頭上にいる貉をとらえられない。
まるで、狙いとは違った場所に結界が展開する。
「くそ! 狙いが定まらない……! どうなってる!?」
『貉は正確に言えば、【方向感覚を狂わせる】んや。せやから、攻撃は無意味やで!』
なるほど。
貉の異能で、方向を狂わされるため、違う方向に異能を放ってしまうというわけだ。
異能での捕縛は駄目。恐らく直接捕まえに行っても無駄だろう。
「日車さん、力お借りします!」
『おう! って、どないすんねん。あたらへんで?』
「大丈夫です、私の頭上の貉にむかって攻撃を放ってください」
日車さんが飛び上がって、火薬操作の異能を発動させる。
黒猫の体から黒色火薬が吹き出し、猫の尻尾となって、貉へと伸びる。
「駄目よレイ、貉の異能で方向を迷わされる……敵を捕らえるのは無理……」
『捕縛できたで!?』
「なんですってぇ……!?」




