表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/247

山の神 1



 年明けて、4日ほどが経過した。

 このところ、毎日のように、お客さんが来て、サトル様のもとに挨拶に来る。


 そして、新年からずっと、お祝い&宴会ムードが続いた。 

 幸せな年末年始だったと思う。


 そんな、年明けのある日の朝。

 私たちのもとに、来客があった。


「れーいー!」

「りさと姫?」


 極東王家がひとり、りさと姫が、やってきたのだ。


「れいー! 中々遊びに来ないから、こっちからきちゃったわ!」

「も、申し訳ないです……」


 かつて、りさと姫の異能を、制御できるようにした。

 それ以降、私は彼女から好かれるようになっているのである。


「やぁ、レイ。悟」

「く、九頭竜くずりゅう様!」


 この国の王、九頭竜くずりゅう 白夜さまが、私たちの元へやってきたのだっ!?


「こ、こちらから新年の挨拶に向かわねばならないところを……申し訳ありません」

「気にしないでおくれ。王家も年末年始は忙しくしていたからね」


 うちですら、忙しかったのだ。王家も千客万来で忙しかったのだろう。


「それにしても……ふむ。レイ」

「なんでしょう?」

「また一段と綺麗になったね」


 にこっ、と白夜さまが笑顔でおっしゃる。


「白夜さま」


 ぎゅーっ、とサトル様が私を抱きしめる。


「確かにれいたんは、最近より一層美しくなった。特に胸と尻に肉が付いたことで、最強無敵に……」

「さ、さとるんのばかっ! へんなこといわないでっ!」


 た、確かに?

 年末年始は、美味しいご飯が朝昼晩と出たため、ちょっと……お肉が付いてきた。


 そこ、気にしていたのにっ。


「全然標準体型じゃあないか。むしろ、前は痩せすぎだ。このくらい肉があるほうが、抱いたとき心地よくてな」

「もう……バカ……。私、エッチな人は嫌いです」


「口では嫌いと言いつつ、俺のことほんとは好きなんだろう?」

「さとるんのことは好きですけど、意地悪な人は嫌いです」

「ごめんってれいたん~」


「謝ったので許します~♡」

「れいたーん♡」


 ……そんな私たちのやりとりを見て、白夜様がぽかんとしていた。

 りさと姫も、ぽかーんと……。はっ! し、しまった……!


 王様の前で、なんて姿を見せてしまったんだ。


「すみません……」

「あ、いや。その……あれだ。れ、れいたん? さ、さとるん……? いつの間に……?」


「あ、ついこないだから言うようになりました」


 王様の前でさすがに、れいたん♡ さとるん♡ は舐めていると思われてしまうだろう。

 気をつけないと。

 ……あれ?


「白夜様は未来を見通せるのに、私たちの呼び名が変化したことについては、知らなかったのですね」


 白夜様の異能は、【ハクタク】。未来視の異能だ。

 なら、私たちがこうなる未来も見えてても不思議じゃあないような……。


「未来は、確かに見える。だが一人一人の未来を見ている時間はないのだよ」


 なるほど……。視る、ことはできるが、裏を返すと未来を視る必要がある。

 そうなると、視る行為に時間がかかってしまう。


 他にも重要な事項について、未来を視ないといけないのだ。個々人の未来を視てる暇はないのである。


「今日は君たちに、相談があってきたんだ」

「相談……?」


「ああ。依頼をしたくてね。信濃に住む、神霊を助けにいってほしいのだ」


 信濃……?


「どこですか、信濃って?」

「東都からはるか西にいった先にある、山に囲まれた街のことだよ」


 信濃の神霊を……助けて欲しい、か。


「わかりま……」

「れいたん」


 私の口を、サトル様が唇で塞いできたっ!


「うむぅう!?」


 な、なんでこんなときに……キスなんて……。ああ、だめだ……サトル様にキスされたら、体からチカラが抜けちゃう……。


 思い、出しちゃう。この三日間のことを。


「れ、レイ……。あんた、三日間ずっと……」


 かぁあ……とりさと姫が顔を真っ赤にする。

 し、しまった。りさと姫の異能は、【さとり】。心を読む異能だ。


 ……私が、年明けからずっと、毎晩サトル様と……その……肌を重ねてることがバレてしまったっ。


「お盛んで何よりじゃあないか。子供の性別は……」

「し、調べなくていいですっ」


 一方、サトル様は真面目な顔で言う。


「レイ。正義感の強い君のことだ。信濃に行こうとしていただろう?」

「それは……もちろん」


 困っている人がいるなら、チカラを持つ私が行くのは、当然かと。


「白面に狙われてることを、忘れたのかい?」

「……忘れたわけではないです」


 呪禁じゅごん存思ぞんし。蘇生の術を使える私は、白面から狙われてるそうだ。

 白面は現在、封印されている。彼らは復活の機会を虎視眈々と狙っているのだ。

 信濃へ行くということは、東都を出るということ。


「東都……というか、一条家がレイにとって最も安全な場所です。そこを離れるのは、危険すぎます」


 なるほど……。


「悟の言うとおりだ。私としても、レイを派遣するのは避けたい……。が、もうレイにしか頼めないくらい、状況は悪いのだ」


 ……一体、信濃で何が起きてるというのだろうか……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ