【Side】幸子(ザシキワラシ)
うちはザシキワラシの幸子。
レイのマブダチであり、体内妖魔の一柱。
先日……レイは呪禁存思という、シャーマン王でよくみるすんごいスキルを身につけた。
でも、レイは呪禁存思を使うと、しばらく異能が使えなくなってしまう。
うちらと、レイのつながりがキレてしまうというデメリットありけり。
だから、連続して発動できない、ちょーひってやつだ。
レイが異能を使えないとなって、タオ(饕餮)、つぐみ(鵺)は、すっごく心配していた。
なぜって、白面にとって、レイを襲う絶好の機会だったからである。
レイは、ハイパーつよつよ異能者だ。
正直、この世界のだれよりも強い異能者だろう。全盛期の守美に匹敵する強さを保っている。
そんなレイが、異能で身を守れないのだ。 白面側からすれば、異能で抵抗してこないレイなんて、カモネギもいいところである。
でも……やつらは、襲ってこなかった。
「守美」
うちらは、今、初日の出を見ている。
レイとサトルが、いちゃいちゃしてるとこから、ちょっと離れた場所に、うちと守美はいる。
「おかしーと、おもわない?」
守美は、元・現代最強の異能者だ。
親馬鹿だけども。
彼女も、多分違和感に気づいてるだろう。
「ええ、わたくしも……オカシイと思っております」
やはり、守美も気づいてる様子。
白面は、どうして襲ってこなかったのか……と。
「確かに、レイさんが弱体化したことで、わたくしたちの警戒レベルはあがりました。それにしても……やつらが何もアクションを起こしてこなかったのは変ですわ」
守美や百目鬼の鬼たち、そして一条家の全員が、レイを守ることに意識を集中させていた。
だから、白面側も、手がだせなかった……。
そう考えると、いちおうはつじつまが合うように、うちにも思える。
でもうちも、守美も、その考えに対して違和感を覚えてるようだ。
「白面……なにか企んでる。静かすぎる」
「……とりあえず、王に報告しますわ。彼の未来視で何かわかるやもしれませんし」
現王である、九頭竜 白夜には、ハクタクの異能が備わっている。
未来を見通す異能をもってして、白面側の狙いを読もうとしてるわけだ。
「いやなかんじ。する」
「ええ……」
きゅっ、と守美が拳を握りしめる。
守美の目は、覚悟が決まったような目をしていた。
……前に、白面と戦い、死んだときと……同じ目してる。
うちは……守美の手を握る。
「すみ……また、死ぬの。やだよ、うちは」
「! ……幸子さんには、なんでもお見通しのようですね」
うちは……さみしくなった。また、友人が、一人で無茶しようとしてたから。
「レイ……まもるなら、みんなで。ひとり、たたかっても……のこったひとたち、みんなかなしむ」
「幸子さん……」
もちろん、うちも。その他の、人や妖魔たちも。
レイが居なくなっても、守美がいなくなったも、駄目なのだ。
「……またわたくしは、同じ過ちを犯そうとしていたのですね」
前も、守美は勝手に、自分が犠牲になることを、決めていた。
その結果、上手く行ったことはいったけど、でも多くの悲しみが残った。
うちは、もちろん。そして……。
「おなじことしたら、レイが……かなしむ」
守美が死ねば、彼女を慕っていたレイが、悲しみに暮れてしまう。
「そんなの……駄目」
レイも、守美も……マブなのだ。マブには、笑っていて欲しい。
「みんなで、レイを守る。OK?」
「…………承知しました」
守美がしゃがみこんで、手を差し伸べてくる。
「守りましょう、あの娘を」
「うむ。まもろー、レイのみらいを」
うちらは、そう固く決心したのだった。




