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1 プロローグ

【☆★おしらせ★☆】


あとがきに、

とても大切なお知らせが書いてあります。


最後まで読んでくださると嬉しいです。

 私の名前はレイ・サイガ。サイガ伯爵家の長女として産まれた。

 

 その日、父に久しぶりに呼び出しを食らった。


「およびでしょうか、御父様」

「来たか、レイ」


 父は書斎にいた。じろり、と私をにらみつけると、ぱさ……と机の上に手紙を置く。


「それを読め」

「……拝見します」


 封筒から書類を取り出して、私は目を通す。

【極東の華族、《一条いちじょう家》が当主、《一条いちじょう さとる》との縁談を、サイガ伯爵令嬢に受諾してほしい】


 王家からの書状には、そう書いてあった。


「極東……たしか、我々の住んでいる大陸から、遙か東にある国ですよね?」

「そうだ。妖魔なるバケモノのうろつく、恐ろしい土地と聞く。そこの華族……つまり、特権階級の長男が、【アリアル】を欲してるそうだ」


 アリアルというのは、私の妹だ。

 父はこの縁談が、アリアルにきたものだと思ってるらしい。


 だが、書面にはサイガ伯爵令嬢としか書いていない。アリアル宛てとは限らない。


「サトル・イチジョーといえば、極東五華族の中で最も権力を持つ名家。その当主は、バケモノを好んでミナゴロシにするという。付いたあだ名が、【極東の悪魔】だそうだ」


 ……ずいぶんと、恐ろしいあだ名がついてるようだ。


「わしはな、可愛い可愛いアリアルを、そんな危険な場所の、危ない男のもとに嫁がせたくないのだ」


 ……まあ、言いたいことはわかる。


「そこで、レイ。おまえに命令だ。アリアルの代わりに、一条家へ嫁げ」

「…………アリアルの代わりに、ですか?」


「そうだ。おまえなら死んでも全然痛手にはならん。なぜかわかるか?」


 ……わかるに決まってる。

 私は、生まれつき魔力がないのだ。


 私たちの住んでいるこの大陸では、魔法が普通に使われている。

 魔物退治にはもちろん、生活にも、魔法が深く関わってる。


 魔法の才能が全て、と言ってもいい。

 そんな中で、私は生まれつき魔力を持っていない、この大陸唯一の存在なのだ。


 ついたあだ名は、【無能令嬢】。

 当然だ。魔力が無いということは、魔法の才能が無いことと同義なのだから。


 そのせいで昔から、周りから、そして父から、酷い扱いを受けていた。

 魔法が全ての世界で、魔法が使えないのだから、仕方ない。


 そんな無能がいなくなろうとも、父にとっては何の痛手にもならないだろう。

 ……だから、アリアルの代わりに嫁げと。


「お姉様ぁ~。かーわいそー」


 ……全く可哀想って思っていないふうに、妹のアリアルが言う。

 父の隣には、ピンクブロンドの、胸の大きな女が立っている。


 この子が、アリアル。真っ白な肌に、美しいピンクブロンド。そして……その大きな胸で、社交界の殿方からとても人気があるそうだ。


「知ってる? 極東の妖魔って魔物、こっちの魔物よりも強いらしいわよぉ。しかもぉ、極東の街にはぁ、女神様の結界がないとかぁ」


 この西の大陸には、聖女神キリエライト様が大昔に、人の住んでいる街に結界を張ってくださった。

 そのおかげで、街の中はどこへいっても安全なのだ。


 ……一方で、極東には聖女神様の結界はないという。


「妖魔が街に溢れてるとかぁ。それとぉ、一条家当主の一条悟さまは、妖魔の母を持ってるせいで、人を食うってもっぱらのう・わ・さですって~! きゃはは! お姉様ってばそんな危険な場所の危ない男に嫁がないといけないなんてぇ~! ちょーかわいそー!」


 可哀想なんて、みじんに思ってないことは、その表情から窺えた。


「まあ、アリアルの言うとおりだ。一条家へ行けば、まあ、命を確実に落とすだろう。しかしこれは王命。断るわけには行かない」


 そこで、と父が私に言う。


「レイ。妹の代わりに極東へ行き、死んでこい」


 ……かなり、酷いことを言われた。

 けれど私の回答は決まっていた。


「承知しました。この縁談、謹んでお受けいたします」


 私があっさり承諾するものだから、父も、アリアルも、ぽかんとしていた。


「な、なによそれ……。もっと怖がりなさいよ、泣きわめきなさいよ!」

「失礼します」


「ちょっとぉ! 面白くないわねえ!」


 私はきびすを返して、底意地の悪い妹、親失格の父の前から、立ち去る。

 ……極東か。


 どんなところかは知らないし、一条悟様がどのような御方なのかは存じない。


 けれど、これだけははっきりしてる。

 この地獄いえよりは、マシであると。


 魔法が全てのこの西の大陸に、魔力の無い私の居場所はなかった。

 また、この家の人たちは、使用人も含めて、誰一人私の味方になってはくれない。


 それどころか、無能の私を虐めてくる始末。

 ……こんな環境から抜け出せるのなら、喜んで、悪魔の元へでも嫁ごう。


 ……それに。


「王家が、本当に危険な家に、貴族令嬢を送るとは思えないしね」


 こうして私は、妹の代わりに、海を渡って極東の悪魔のもとへ嫁ぐことになったのだった。

【お知らせ】

※11/15 

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― 新着の感想 ―
露骨に疎ましく思ってる態度を出してきて、清々しさすら感じる父親ですね。 レイも怒る気も泣く気も起きず、清々するといった様子ですが、どうなるやら。
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