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竹本美月の公理8  作者: 日野ねぎ
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珈琲と公費5 君は二次的接触を極端に好むね

「さあ、美月。また推理の時間だよ」


 シュータさんはカッコつけます。ようやく名探偵のエンジンがかかってきました!


「……美月とノエルは、俺を乗り気にさせるのが上手いな」

 さて、シュータさんが乗り気のうちに突き止めてしまうとしましょう。わたしは長丁場になりそうなので、とりあえず最前の席に座りました。黒板の前に立つシュータさんがよく見えます。


「さて、第三者が犯人だと仮定した場合だ。大前提の問題がある」

「なぜ、その人が生物室に来たか、っすね」


 この教室は授業で使うことはあっても、放課後に来る場所ではありません。特別棟の三階はアクセスも悪いです。


「この場所を部室にしているSF研も、今日は活動日ではないっす」


 となれば、第三者さんはどうしてここに来たのでしょう。ノエルくんがコーヒーを淹れることも、知らなかったはずですよね。


「放課後の清掃が行われたのは、もっと前か。すると、特別棟に部室を持つ大所帯の部活は、確かPC部と演劇部。演劇部は阿部が所属していて、今は別の場所で何かやっているんだったか?」


 人の出入りが全くないわけではないでしょうね。


「まあいいや。考えてもわからない所に手掛かりは無い。他を当たろう」

 シュータさんが黒板を睨みます。四つの項目が書かれています。


「まず、何者かが入って来て間違えて『こぼした』、という可能性について考えようか」


 はい、それについては先週掲載した場面でおおよそ検討しました。間違えてこぼした。こぼしたコーヒーは綺麗さっぱり拭き取るも、カップは洗わずに戻したのです。


 シュータさんは眉間にしわを寄せます。


「なあ美月、第三者が侵入してきたことはあり得るとしよう。だが、彼もしくは彼女が間違えてこぼし、それを拭いて逃げることはあり得るだろうか?」


 どうでしょうか。こぼしたら拭くというのは、当たり前です。前回も言いましたが、わたしならカップも綺麗にします。そして、教室に誰もいなくても、誰かが戻って来るまで待って謝罪します。


「うん、そうだね。でもまず、こぼすだろうか?」


 はて。


「コーヒーカップは教卓にあった。コーヒーメーカーと共に。入って来たやつは、黒板に用事でもあったのか?」


 シュータさんの言う通りかもしれません。間違ってこぼすにしても、どうしてこぼすのでしょうか? 仮に黒板の前で何かの作業を始めても、コーヒーカップに気付かないことはないでしょう。ではカップを移動しようと、持ち上げてこぼしたのですか? なんのために?


「人間だから、何をしでかしても不思議ではない。だが、偶然入った教室で、偶然置いてあったコーヒーカップを、偶然にもこぼすなんてことは、あまりに偶然が重なり過ぎている」


 ノエルくんは微笑を漏らします。

「それに時間の問題もありますね。俺が外していたのは、せいぜい10分。福岡先輩、チャラ田先輩、タコちゃんの三人が訪れ、コーヒーはまだあった。その後に第三者が来たならば、時間的余裕もない」


 つまり……どういうことでしょう?


「偶然じゃないんだよ、美月。犯人は、生物室に入って来てすぐ、コーヒーの中身を空にしたんだ。それを終えると、すぐにまた出て行った」


 な、なんでそんなことになってしまうのでしょうか?


「こうなると、俺が最初にした質問がやはり鍵になってきたな。俺の勘は正しかった」


 シュータさんの最初の質問――『コーヒーカップは洗われていたか?』でした。

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