表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
解錠令嬢と魔法の箱  作者: アシコシツヨシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/114

95 昼食

 正午。

 護衛騎士に付き添われて私室に戻ると、侍女のレミがテーブルに昼食の配膳を始めていました。


「お帰りなさいませ、セシル様。素敵な柄の箱をお持ちですね。」

「ええ。レリック様から預かっている箱なの。」


 魔を吸引する箱、なんて正直には言えません。


「レミ、レリック様と大事なお話があるから、食事中は外して貰えるかしら。」

「畏まりました。何かございましたら、ベルでお呼びくださいませ。」


 レミは配膳を終えると、大部屋から退室しました。

 テーブルに箱を置くと、椅子に座ってレリック様を待ちます。


 他国の王女と結婚した方が国益になる……。

 メリーク殿下の言葉が頭から離れません。


 十二時を少し過ぎた頃、レリック様が大部屋に入室して来ました。

 レリック様の姿を見るなり駆け寄って、ギュッと抱き付きました。


「セシル?」

「お話、したい事があります。」

「分かった。」


 レリック様は優しくハグしてくださってから、そっと頬に触れて、私の髪に飾られていた赤い花を手に取ると、顔をしかめました。


「これは、メリークからか。」


「はい、お近づきの印にと。ホワーズ魔法王国から魔法で呼び出したそうで、枯れないようになっているそうです。」


「……セシル、済まない。」

「何ですか?突然謝ったりして。」


 レリック様は、グシャッと花を手で握り潰しました。


「悪いが、ホワーズ魔法王国の花が、ただの花とは思えない。何か情報を盗む機能が付いているかもしれない。警戒はするべきだろう。少し待っていてくれ。直ぐ戻る。」


 レリック様は握り潰した花を持って、一旦個室に戻りました。

 椅子に座って待っていると、数分で戻って来ました。


「花は?」

「元の形に再生したから、調査するようエドに転送した。」


 レリック様の予想通り、ただの花ではなかったようです。


「そうでした、メリーク殿下から箱を預かりました。」

「勇者が箱を解錠する様を見たいと言うから渡した。反応はどうだった?」


「驚かれていました。あと、ホワーズ魔法王国への移住を勧められました。」

「移住!?」


 レリック様が、危うく手にした箱を、落としそうになっていました。


「詳しく聞かせてくれ。と、その前に食事にしようか。」


 昼食後。

 紅茶を飲みながら、お茶会での話を報告しました。


「私を研究に協力させる為だとしても、メリーク殿下の話は正論だと思います。でも、私はこの国を離れるのも、婚約破棄もしたくありません。他国の王女ほど役に立てなくても、私なりにレリック様を支えたいのです。」


 私の個人的な願望だと理解しているだけに、レリック様の返事を聞くのが怖くて、声が震えました。


「セシル、私は王族として、国のために生きる覚悟をした。だから、最も国の為になる道を選ぶ。それは揺るがない。」


 レリック様の真剣な声に頷きました。

 では、婚約破棄、でしょうか。


「王族として、メリークの考えも分かる。が、我が国の王族に限って、他国の王女との結婚はあり得ない。そもそもメリットがあるなら、兄上がそうしている。」


 確かに言われてみれば、第二王子のレリック様よりも、次期国王のピューリッツ王太子殿下の方が、政略結婚のメリットは大きいでしょう。


「我々は神から加護を授かるが、その力は、我が国の王公貴族にだけ発現すると分かっている。

そして、我が国の常識は、加護のある者が王公貴族で、無い者は平民だ。

つまり、加護のない他国の王女は、我が国では平民扱いとなり、王家の結婚相手としては認められない。

仮に結婚しても、生まれてくる子は加護を授かれず、結局平民扱いとなり、跡継ぎにはなれない。」


 私達貴族にとって当たり前の加護が、他国では授かれないなんて、知りませんでした。


「だから、他国の王女を迎える訳が無いし、セシルを手離しはしない。予定通り結婚して、一生セシルと共に生きる。それが私の、最も国の為になる選択だ。」


 レリック様は、真っすぐ私の目を見て言って下さいました。


「嬉しいです。私、また婚約破棄されてしまうのかと、不安だったのです。」

「それは絶対にあり得ない。セシルは私にとって、唯一無二の存在だ。この先もずっと。」

「私も、レリック様だけです。」


 どちらからともなく、手を繋ぎました。

 以前よりも、レリック様との絆が深まった気がします。

 話し合うって、本当に大事です。

 

「それにしても、魔王討伐協会。

いや、ホワーズ魔法王国は、思ったより怪しい国かもしれない。

勇者と密室で聞き取り調査出来る権利を利用して、必要なら保護。できなければ勧誘して、どのみち勇者を連れ帰る魂胆なのだろう。

世界を救うほどの力を持つ勇者ならば、国の内部情報に関わる機会も多い筈だ。

勇者を通して、各国の機密情報を得て優位に立ち、他国を属国にでもするつもりかも知れない。」


「そんな、考え過ぎでは?」


「そうなら良い。だが、警戒するに越したことはない。調査が三日なのも妙だ。勧誘の失敗も考えて、国の情報を聞き出す期間かもしれない。これ以上、セシルをメリークに接触させるのは良くない気がする。」


「メリーク殿下と二人きりにならなくて済むならば、私は嬉しいですが、聞き取り調査を中断するなんて、可能なのでしょうか。世界から認められている権利なのでしょう?」


「世界に認められているとしても、自国にとって不利だと判断すれば、中断するだろう。交渉材料はある。これから騎士棟に戻って策を練る。明日は私も聞き取り調査に同行するから、そのつもりでいてくれ。」


「はい。レリック様が一緒ならば心強いです。」


 レリック様には、いつも助けて頂いてばかりで、感謝の気持ちを伝えても、伝え足りません。


 昼休みが終わって、転移陣で騎士棟へ戻る直前のレリック様と、いつものようにハグをした後、背伸びをして、レリック様の頬に口付けをしました。


「!」

「レリック様、有り難うございます。お帰り、お待ちしております。」


 自分から口付けをしておきながら、恥ずかしくなって、思わず逃げるようにレリック様の個室を退室して、扉の前で悶えてしまいました。


 きっと、もうレリック様は騎士棟へ行ったでしょう。


 レリック様の個室に目を向けると、僅かに開いている扉の隙間から、個室内が見えました。

 退室した時、完全に扉を閉めきっていなかったようです。


 右手で顔を覆ったまま、左手を腰に当てて、立ち尽くしているレリック様が見えました。


 まだいます。

 どうしたのでしょうか?


「……い過ぎる。」


 溜め息混じりに何か呟いていましたが、語尾の方だけしか聞き取れませんでした。


 いすぎる?

 何か大量発生した連絡でも来たのでしょうか?

 婚約者でも、盗み見なんていけませんね。


 そっと扉を閉めたのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2023年12月8日にOFUSEサイトにて、レリックとセシルのイメージイラストを投稿しました。 宜しければご覧くださいませ。 OFUSEサイト・アシコシツヨシ
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ