表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
解錠令嬢と魔法の箱  作者: アシコシツヨシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/114

92 魔王討伐後(レリック視点)

レリック視点です。

 魔王討伐したその日の正午。


 大部屋の人払いをして、昼食を食べながら、セシルから話を聞いた。

 クリス副団に拐われた時、何があったのか?と。

 

 セシルは、私が誘拐されたとクリス副団から聞いたらしいが、その内容は昔、騎士団が対処した『伯爵令息誘拐事件』そのままの内容だった。


 もし、本当にそんな状況になったら、私は存在を消して襲撃者の武器を奪い、再びセシルを取り返せる。


 それに、先読み出来るクリス副団ならば、丸腰でも相手の動きを(かわ)して武器を奪い、多勢でも、的確にダメージを与えて、簡単に形勢逆転出来る。


 だが、セシルは混乱状態で考える暇を与えられず、魔王は、クリス副団の記憶にある実際の事件を偽装し、真実味を持たせて話をしていたようだ。


 セシルが話を信じてしまうのも仕方がない。


 そもそも私が周囲を警戒していれば、セシルを手放す事態にはならなかった。

 二度とこのような失態は犯さないと、大いに反省した。


 午後。

 少し遅れて騎士棟へ出勤し、執務室にクリス副団を呼んで、聞き取りをした。


「夜会開始直前、父と口論になりました。

母や祖父は事故死だと、兄や妹に伝えていたのです。

家族には真実を告げるべきだと主張しましたが、まだ二人は受け止め切れないと父に言われ、夜会が始まって直ぐ、私は頭を冷やす為、一旦、バルコニーへ行ったのですが、そこから記憶がありません。」


 溜め息が出た。


 クリス副団は夜会が始まった時、既に魔に囚われ、魔王に操られたまま夜会会場に戻り、普通にクリスとして過ごしていたらしい。


 もしかしたら、参加者が魔に囚われた切っ掛けは、魔王に操られていたクリス副団が何かしたのかもしれない。

 記憶が無いだけに調べようがないが。


「それで、睡眠の陣は、いつ手にした。」

「念のため、元々二枚だけ持っていました。気づいたら無くなっていましたが。」

「なるほど。」


 初めに持っていた二枚は、私とセシルに使って、地下の部屋を見張っている青騎士団には、セシルのポーチから抜き取って使ったのだろう。


「あ!そういえば……」

「クリス副団、何か思い出したのか?」

「一瞬ですが、セシル嬢に頬を包まれて、何度も名前を呼ばれた気が……」

「は?」


 何故、そんな幸せそうな事だけ思い出す。

 思わず、聞き取りでメモしていた紙を、グシャッと握り潰しそうになった。


 そう言えば、一瞬だけクリス副団の後頭部にある錠前を解錠したが、再び現れてしまったと、セシルが言っていた。


 恐らく、セシルが錠前を解錠した時、一瞬我に返ったのだろう。


 操られていたので、仕方ないと言えば仕方ないのだが、分かっていてもやるせない。


 私はクリス副団が操られている間、何をしたのか、自分が知る全てを話して聞かせた。


「記憶がないとは言え、とんでもない事を。ただ、セルリアンが魔に囚われたのは、セルリアンのせいだと思いますが。」


 男爵家次男のセルリアンは、自分より家格が上の令嬢に恋をして、その令嬢と結婚したいが為に、武勲を立てようと努力している。


 そして、その令嬢に言い寄る男が現れると、影ながら排除しているらしい。

 騎士団内では、有名な話だ。


 ただ、その令嬢が、セルリアンに好意があるのか、誰も知らない。と言うか、そこまで興味がないので知ろうともしていない。


「クリス副団も知っていたのだろう?セルリアンが、ある令嬢に片想いしていると。」


「はい、ストーカー並みに重いと団員達の間では有名でしたから。」


「魔王はクリス副団を使って、セルリアンの弱い部分をついたのだろう。まあ、言われても記憶がないのだから困るだろうが。」


「そうですね。ただ、仕出かした事の責任は取ります。やはり極刑、でしょうか?」


 クリス副団は真面目な男だ。

 追い詰めてしまったらしい。


「済まない、八つ当たりをしてしまった。魔は誰にでも囚われる可能性がある。そうならないよう対策する為に、話を聞くのが目的だ。追い詰めたい訳ではなかった。」


「しかし、許されない事をしたのは事実です。エド団長のように首輪を着けて、一生王家に仕えます。」


 恐らく我々が魔王と戦っている間、そんなことを考えていたのだろう。


「首輪は着けなくても良いが、一生王家に仕えて貰えるのは有難い。総長にも話しておこう。」


 その日の午後四時。

 団長会議が行われた。

 メンバーは、四人。


 白騎士団の代表として総長のピューリッツ兄上、青騎士団団長のエド、黒騎士団団長のアレク、そして、赤騎士団団長の私だ。


 私は、セシルとクリス副団の聞き取りについて報告し、クリス副団の希望について伝えた。


「魔に囚われた事について罰するつもりはないが、王家の犬になりたいなら、大歓迎だ。首輪をしないまでも、気が変わらない内に、一生王家に仕えると、誓約書に一筆書いて貰おうか。」


 総長のピューリッツ兄上が、キラリと目を光らせている。

 有能な人材を決して逃さないとでも言いたげだ。


「それ、いいね。僕達のように、一生王家に縛られる仲間が、また一人増えるわけだ。ね、エド。」


 アレクが嬉しそうに、エドの肩を叩いている。


「喜ばしい限りだな。それに比べて、我が部下のセルリアンは、クリス副団のせいだと言いはっている。が、何も無かった事にするつもりはない。」


 いつかまた生まれるかもしれない魔王に備えて、エドはセルリアンと教会の地下へ同行していた部下達に、連帯責任として、魔王封印の箱を一年で修復するよう、命じたらしい。


「俺はもうやらない。手を出せば、俺が一人でやる羽目になるしな。俺が一人で出来たんだ。一から部下にやらせれば、人数いるし、一年もあれば出来るだろう。多分。」


 エドは簡単に言うが、セルリアンや部下達は、エドのような天才ではない。

 任務をしながらの作業に、これから一年、いや、もっとかもしれない。

 連日徹夜必至だと悟って、肩を落としたに違いない。


「それにしても、今回は全てが後手になったよね。

仲間が魔に囚われて、魔王に操られていると気付けずに、魔王の復活を許してしまった。

拐われたセシル嬢が無事で、箱が魔王を吸引したから事なきを得たけれど、こんな幸運、なかなか無いよ。」


「確かに、アレクの言う通り、今回は本当に運が良かった。」


 総長の言葉に、私やエドも頷いた。

 今回の反省点を踏まえて、今後の対策が話し合われた。


 その結果、騎士棟では、団員が魔に囚われていないかチェックするため、扉がある全ての床に、魔を感知する陣を設置するとなった。


 また、セシルが二度と利用されないよう、護衛を一人増やし、護衛当番に錠前が着いていないかを毎回、セシルに確認して貰うと決定した。


 これで会議も終わりかと思ったら、兄上が口を開いた。

 まだ何かあるのか。


「次は外交の話だ。

先日の魔溜まり任務について、ホワーズ魔法王国には既に報告しているが、魔王吸引についても報告する。

数日の間に返事が来て、使者の訪問日程が決定するだろう。

対応は王家と白騎士以外の騎士団長で行うから、そのつもりでいて欲しい。」


 魔王の脅威が無くなり、安心して結婚式を迎えられると思ったら、次は外交か。


「レリック、詳しい事が決まったら、セシルにも伝えてくれ。」

「はい。」


 ホワーズ魔法王国は、魔王討伐協会の本拠地がある国だ。


 大昔、魔王討伐のアイテムを発明した国であり、魔王の情報を世界の国々と共有するため、世界を代表して情報を集めている。


 従って、魔王討伐した国は、世界平和の為にも、聞き取り調査の協力が義務となっている。

 貴重なアイテムを使えるセシルも、聞き取り調査の対象だ。


 二日後の午後四時。

 団長会議で、兄上から報告があった。


「早速、ホワーズ魔法王国から返事が来た。使者の訪問は六月二十四日。丁度、レリックの挙式一週間前に決定した。滞在予定は三日だ。」


 面倒事が挙式前に終わるなら何よりだが、事前に届いた調査協力書に目を通して、思わず顔をしかめた。


「アイテムを使える者と、二人きりでの聞き取り調査だと?」


 二人きりで調査を行う理由は全うで、先方はアイテムを使える者を『勇者』と表現して、男女の区別をしていない。


 ただ、使者が私より年下の男……。


「この要求を全て受け入れなければならないのか……。三日も。」


 嫌だ、嫌すぎる。本来なら、絶対に断る内容だ。


 だが、調査協力書の内容は、協力する義務があり、基本的に拒否権はない。

 拒否したら、逆に面倒な事態になると分かっているだけに、我慢するしかない。


 結婚はもうすぐなのに、本当に面倒事ばかり起こる。

 セシル成分を補給しなければやっていられない。


 私室に戻って、私の帰りを待っていたセシルを見た瞬間、抱き締めた。


「あの……レリック様、夕食が……。」

「もう少しだけ。」


 この後、セシルに外交の話をする。

 私にも心の準備が必要だ。


 ハグする時間が、回数を重ねる度に長くなってしまうのは、私の精神衛生上、仕方がない。


 シーナが、これ見よがしに咳払いをしている……。

 が、聞こえない振りをしておいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2023年12月8日にOFUSEサイトにて、レリックとセシルのイメージイラストを投稿しました。 宜しければご覧くださいませ。 OFUSEサイト・アシコシツヨシ
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ