表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
解錠令嬢と魔法の箱  作者: アシコシツヨシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/114

87 約束

 封印の機能を失った亀裂の入った箱から、黒いモヤが大量に排出されて、空中の一箇所に集まると、ヒト型へと変わって行きます。


 その変化が怖いけれど、物珍しくて、上蓋の開いた箱を手に持ったまま、じっと眺めていました。


 首から上の頭部は、モヤモヤと黒くあやふやなのに、それ以外は密度が濃いのか、彫刻のような筋肉隆々の裸体をハッキリと形作っています。


 ただ、排泄機能が必要ないせいか、臀部には何も無く、ツルリとして、お人形のようです。

 身長は三メートル位とかなり大柄です。


 もっと尻尾があったり、角が生えていたり、人ではない部分もあるのかと思いましたが、目の前の魔王は、裸のヒト型男性でした。


 そう、裸なのです。

 今まで散々凝視していながら、急に恥ずかしくなって、思わず回れ右をしてしまいました。


「セシル?怖いのか?」


 隣に立っていたレリック様に、心配されてしまいました。


「その、怖くはありますが、目のやり場にも困ります。その……服は、着ないのでしょうか。」


 しどろもどろに答えると、ブフッとレリック様に吹かれてしまいました。


「あのままじゃないか?私の知る筋肉自慢の奴は、大抵脱ぎたがる傾向にある。魔王もそのタイプと見た。男性としての機能は無いようだが、無くて良かった。」


 レリック様が、何か納得しています。


「さて、真面目な話になるが、そろそろ魔王も完全体になる。緊急措置として、この部屋に魔王を留め、魔王の影響力を無効化する作業に入る。私もやることがあるから、そろそろ行かねばならない。」


 レリック様が魔王を指差して、そちらに向かおうとした時、袖を摘まんで思わず引き止めていました。


「あの、頑張ったご褒美は何が宜しいですか?」

「ご褒美?」


「だって、魔王に対峙するおつもりなのでしょう?そんな命懸けの大変な任務を成し遂げたなら、ご褒美があっても良いですよね?」


「セシルがくれるのか?」

「はい、何でも言って下さい。」


 報償金も頂きましたから、レリック様の欲しい物もプレゼント出来るでしょう。


「何でもって……いやいや。」


 レリック様が片手で顔を覆って呟きながら、上を向いています。

 凄くお高い物が浮かんでいたら、どうしましょう。


 欲しい物が決まったのか、顔から手を離したレリック様が、真剣な表情になりました。


「結婚式までしないつもりだったが、褒美に口付けしても良いだろうか?唇に。」

「そんなので良いのですか?別にご褒美じゃなくても、いつして頂いても……」


 言いかけて、気付きました。

 これでは、いつでも口付けを待っていると言っているようなものです。


 不用意な発言に、思わず赤面してしまいました。


「そうか、いつしても良いなら、今すぐしたい所だが、やはり頑張ったご褒美に取っておくとしよう。」


 レリック様がクスリと微笑みながら、赤くなっている私の頬に、指の背でそっと触れると、親指の腹で唇の輪郭をツ――ッとなぞりました。


「っ!」


 何でしょう、指で触れられただけなのに、凄く恥ずかしいです。

 さっきよりも更に体温が上昇している気がしますし、心臓がバクバクしています。


 指でこんなに恥ずかしいのに、口付けだなんて。

 美しいレリック様のご尊顔が、今までに無い程近付いて、レリック様の唇が私の唇に触れる訳で……。


 いつでも、とか、そんなの、なんてよく言えましたね、私の口よ。

 おでことか、頬にするのとは訳が違います。

 でも、レリック様が望んで下さるなら、嬉しくもあります。


 ああ、でも、今は非常事態です。

 舞い上がっている場合ではありません。


 いよいよレリック様が、エド団長やアレク団長と魔王に対峙する時がやって来ました。


「セシル、少し離れる。護衛はシアーノに任せているから、終わるまで待っていてくれ。」

「はい。くれぐれもお気をつけくださいませ。」


 きっと不安そうな顔をしていたのでしょう。

 レリック様は安心させるように私の頭を優しく撫でてから、魔王へ向かって歩き出しました。


「では、セシル嬢と丸腰クリス副団、いえ、足手まといのクリス副団はこちらへ。」


 明らかに悪意のあるシアーノの発言に対して、クリス副団は顔をしかめました。が、何も言いませんでした。


 シアーノに連れられて、青騎士団が待機している部屋の隅へと向かいました。

 途中、手離してしまった鈴が落ちていないか、足下を見ながら歩きましたが、見付かりません。


 レリック様とお揃いの大切な鈴ですのに……。

 とても小さいので踏まれて壊れたらと思うと、気が気ではありません。


「陣が描いてあるなら、誰かしら気付く筈です。きっと見付かりますから、今は魔王に狙われないように、警戒しておきましょう。」


「シアーノの言う通りね。レリック様達の足を引っ張る訳にはいかないものね。」


 気持ちを切り替えました。

 青騎士団が待機している部屋の隅へ着くと、シアーノは床に陣を描き始めました。


「これは姿消しの陣です。魔王限定にしたので、この中にいれば魔王に居場所を悟られません。絶対に陣から出ないで下さいね。」


「分かったわ。」


 クリス副団と陣の中に入りました。

 上蓋が開いたままの箱を持って、魔王の周りに集まっている騎士達を眺めていました。


 エド団長は、宙に浮いている魔王の真下に陣を展開しています。

 青騎士団の騎士達が数名、紙の束を持っていて、エド団長の指示に従って、紙を手渡しています。


 紙には陣が描かれているようで、床に置くと、陣が床に展開されました。


 一つの陣では直ぐに消えてしまうようで、何重にも陣を重ねて展開しているようです。


 私と待機している青騎士団の騎士達は、床に紙を置いて、ひたすらに黙々と陣を描き続けています。


 シアーノも陣を描いていましたが、私の視線に気づいたのか、顔を上げました。


「自分達の任務は、必要な陣を絶やさないよう描く事なんです。魔王は簡単に陣を消し去ってしまうので、消されるよりも多くの陣を幾重(いくえ)にも展開する必要があるんです。」


「だから、エド団長の側にいる騎士は、大量の紙を持っているのね。」

「彼らはここから転送した陣を、エド団長に渡す助手役です。」


 シアーノは話ながらも、陣を描き続けています。


「忙しいのに邪魔をしてしまって、ごめんなさい。」


「いえいえ、話している方が精神的に楽なんです。描く陣の種類は決まっていて、各々分担して同じ陣を描き続けているので、もう、自動で手を動かしているのと同じですから、色々聞いて貰って良いですよ。」


 確かに、シアーノは手元を全く見ていないのに、美しい陣を描き上げています。


「因みに、黒騎士団の持っている杭は、何百年も前から王家に受け継がれている対魔王用の杭です。魔王を陣に固定する時に使用されるらしくて、四肢と頭部に突き刺すそうです。」


 シアーノに言われて、アレク団長に目を向けました。

 金属製と思われる杭の長さは、一メートル程です。


 太くて、重そうですが、アレク団長やグレン副団を始め、黒騎士団の面々は軽々と肩に担いでいます。


 レリック様が剣を抜いて、空中に浮いている魔王の左足を斬りつけました。

 足は切断されたように見えましたが、直ぐにモヤが発生して再生しています。


「レリック団長の持っている王族専用の剣は、魔王の核までは切れませんが、魔を切れる剣なんです。完全体ならば切断まではいかなくても、傷くらいはつけられたでしょうが、不完全だと、ただの煙を切っているのと同じで、意味が無いようですね。」


 完全体になると、モヤが完全に体を形作って、重量が増し、地に足が着くそうです。


 少しずつ下りて来ていますが、まだ宙に浮いていますから、完全体では無いようです。

 完全体になる前に手を打てないなんて、もどかしいです。


「魔王が、もの凄く弱かったら良いのに。」


 思わず呟いてしまいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2023年12月8日にOFUSEサイトにて、レリックとセシルのイメージイラストを投稿しました。 宜しければご覧くださいませ。 OFUSEサイト・アシコシツヨシ
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ