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解錠令嬢と魔法の箱  作者: アシコシツヨシ


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80 地下二階

 私達は時計塔の地下三階から地下二階へ移動しました。

 この部屋も鈴の音がして、やはり二十名位の人が仰向けに寝かされています。


 全員のお腹の上には、陣の描かれている紙が二枚、睡眠の陣と、魔を祓い終えると点灯する陣が乗せられています。


 魔を祓い終えると点灯する陣は、まだ点灯していません。


 騎士達が全員の顔を横に向けると、予想通り、後頭部に黒いモヤのかかった錠前が見えました。


「今度は箱で魔を吸引する前に、錠前を解錠してみてくれ。何か起きても箱で魔を吸引すれば、問題無いだろう。」


 エド団長の指示で錠前に触れようとして、躊躇いました。


 私は解錠出来ても、元には戻せません。

 錠前が魔と繋がりがあるのは確かでしょう。

 でも、何のために存在しているのか、まだハッキリしていません。


「本当に解錠しても大丈夫でしょうか。」


「セシル、何が起きても私が共に背負う。それに、セシルの加護は閉じているモノを開けたり、解いたり、解放のようなイメージだ。危害を加えるには至らないだろうから、そんなに心配する必要は無いと思っている。」


 レリック様には謎の説得力があります。

 しかも、優しく手を握られると、何だか大丈夫な気がするから不思議です。


「解錠、してみます。」


 勇気を出して、後頭部の錠前に触れました。

 錠前は簡単に解錠出来て、直ぐに消えました。


「え!?」

「どうした、セシル。」

「セシル嬢、何があった。」


 レリック様とエド団長が心配そうに私を見つめています。


「錠前は解錠して消えましたが、再び同じ場所に、錠前が出現しました。もう一度、解錠してみます。」


 錠前に触れて解錠すると、錠前は消えます。

 でも、やはり同じ場所に、再び錠前が現れます。

 何度やっても、結果は同じでした。


「後頭部に出来た錠前は、魔を吸引しなければ、完全に消せないようだな。セシル嬢、取り敢えず魔を吸引して貰おうか。」

「はい。」


 エド団長の指示で、箱を解錠して、箱が自然に閉まるまで、数分掛けて魔を吸引しました。

 すると、錠前は自然に解錠されて崩れて消えました。

 その直後、全員のお腹に貼っている陣が点灯して、魔が祓われたと証明されました。


「セシル嬢のお陰で、捕獲した全員を王都北の教会で解放出来る。」


 エド団長の言葉に首を傾げました。

 王都北の教会は、今いる時計塔から随分と離れた場所にあります。


 確かレミーナ嬢のお墓(生きているけれど、亡くなった事にされていた)があった教会です。


「エド団長、教会ならば、この近くにもありますが、何故遠く離れた王都北の教会で解放するのですか?」

「セシル嬢、直ぐ終わるから、話は少し待ってくれ。」


 エド団長は私の話を遮るように、手で制止した後、壁に貼ってある『鈴の音を流し続ける陣』まで行きました。

 そして、指で二回、陣をノックして、鳴り続けていた鈴の音を止めました。


 全員の魔を吸引したので、鈴の音はもう必要無いですし、話をするには音が邪魔だったからでしょう。


 室内が静かになると、エド団長は、私とレリック様の元へ戻って来ました。


「さて、セシル嬢、王都北の教会を使う理由だったな。それは、王国騎士団の拠点の一つだからだ。確かにここから近い教会は幾つかあるが、我々は陣で移動するから、距離はあまり関係無い。あと、王都北のほうが辺鄙な場所にあるから、人目に付きにくく、活動しやすい。」


「そうだったのですね。ただの教会としか認識していませんでした。」

「表向きは教会だから、任務としての利用は教会が閉まってからになる。」


 大体どこの教会も、朝九時の祓いの鐘が鳴り終わってから一般開放され、閉まるのは、夜九時の祓いの鐘が鳴り終わってからです。


 騎士団が教会内で何かをする場合、朝九時前か、夜九時以降でしょう。


「とは言っても、地下室や裏口からの出入りは、時間関係無く自由に出来る。だが、捕えた貴族を解放出来る機会は、朝だけだ。魔を祓った者達を朝一番の鐘が鳴る九時までに教会へ運び、祓いの鐘が鳴ると同時に、睡眠の陣を外して、彼らを解放する。」


「確かに、朝一番に鳴る九時ならば、祓いの鐘が鳴り終わった後に教会が開放されますから、その間、誰かに目撃される心配がありませんね。」


 ガリア王国に住む全ての国民は、身分関係無く、祓いの鐘が鳴ったら、鳴り終わるまで目を閉じて胸に手を当て、上を向いて深呼吸を繰り返すよう、幼い頃より教わります。


 だからその行為が、習慣として身に付いています。


 睡眠の陣を外されて、訳も分からない状態で意識を取り戻した時、祓いの鐘が鳴っていたら、誰もが反射的に、目を閉じて深呼吸を始めるでしょう。


「では、騎士団は全員が目を閉じている隙に撤退する訳ですね。」


「いや、解放任務に当たる団員は、普通の格好をして、一緒に祓いの鐘を聞く。その方が変に思われないからな。」


 教会で解放された貴族は、周りの人も自分と同じように拐われたと思い込むに違いありません。


 記憶も無いので、その中に自分を捕らえた騎士がいるなんて、思いもしないでしょう。


「因みに、神父や教会の全てを管理している者全員が、王国騎士団の元団員で、協力者だ。」

「それはまた、徹底していますね。」


 魔を祓った人を教会で解放するには、神父様や教会の協力は必要不可欠でしょう。


 魔に関係する任務は秘匿ですから、例え神父様でも、一般人に知られる訳にはいきません。


 だからと言って、神父様を初め、教会に関わっている全ての人が、王国騎士団の元騎士だなんて、思いもしませんでした。


「教会だけではなく、王都には様々な場所に拠点があって、様々な理由で引退した者が、道楽で手伝っている。秘匿事項に関わっていただけに、見て見ぬふりは出来ないのだろうな。」


 王国騎士団ならば引退後は、遊んで暮らせるだけの土地と屋敷、そして、お金が貰えます。


 でも、様々な真実に触れて、国の為に働いていた彼らからすれば、何も知らないふりをして、普通の貴族として生活するのは我慢ならないのでしょう。


 私だってそうです。

 もう、何も知らなかった頃には戻れません。


「何かせずにはいられないその気持ち、分かる気がします。」

「箱に選ばれさえしなければ、そんな気持ちを持たずに済んだのに、災難だったな、セシル嬢は。」


 エド団長の言葉に、初めて箱を解錠してしまった日の事を思い出して、クスリと笑ってしまいました。


「確かに、初めてレリック様に呼び出された時は、どうして開けてしまったのかと後悔しました。でも、今は違いますよ。」


「そうか、なら良かっ――」 

「セシル、本当に後悔していないか?」


 レリック様ったら、エド団長の言葉を遮ってまで、今更何を不安に思っているのでしょう。


 私は加護を生かせる場所を得られて、初めて異性に対して、特別に好きという感情を知りました。


 レリック様と、ずっと共に生きて行きたいと伝えたつもりでしたが、伝わっていなかったのでしょうか。


「後悔していないと断言できます。だって、私はとても幸せですから。」

「そうか。」


 私が笑いかけると、レリック様は、ほっとしたように微笑んで、いつものように、手を繋いできました。

 想いは伝えたつもりですが、伝わっていなければ意味がありません。


 何も後悔していません、幸せです、好きです、生涯を共に生きて行きたいです。

 刷り込むように、毎日伝えるべきでしょうか?


 先ずは、刺繍のハンカチを渡して、想いを伝えましょう。

 私に好かれていると、もっと自覚して下さるでしょうか。


 手を繋いでいない方の手で、ポケットに忍ばせていたハンカチに触れながら、レリック様の顔を見上げたのでした。

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2023年12月8日にOFUSEサイトにて、レリックとセシルのイメージイラストを投稿しました。 宜しければご覧くださいませ。 OFUSEサイト・アシコシツヨシ
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