表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
解錠令嬢と魔法の箱  作者: アシコシツヨシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/114

77 東屋にて

 お昼前、ルルーシェ妃殿下が東屋を退席すると、侍女長のシーナ、そして、侍女のレミとラナが素早く食事の準備を始めました。


 テーブルには初めてレリック様と食事をしたメニューとほぼ同じ、具沢山のサンドイッチやスープ、フルーツに焼き菓子まで用意されています。


「済まない、待たせた。」


 赤騎士団の騎士服姿のまま、レリック様がやって来て、私の隣に座りました。


「さっきまで、偶然お会いしたルルーシェお義姉様と、ここでお茶をしていたのですよ。」

「義姉上と?珍しい。」


 レリック様と食事をしながら、ルルーシェ妃殿下にお会いした経緯をお話しました。


「それで、お義姉様から王都について聞いた話なのですが……。」


 話を濁す時は、内密な話を意味します。

 レリック様は直ぐに察して下さいました。


「大丈夫だ。二人きりの時間を邪魔されたくないから、最初から人払いはしてある。」

「え!?」


 周囲に目を向けると、いつの間にか、侍女や護衛は、声の届かない僅かに姿が確認出来る距離まで離れていました。


「で、王都について何を聞いた。」

「最近、王都で貴族を狙った誘拐事件が起きているそうですね。何か御存知ですか?」


 サンドイッチを手にしたレリック様の手が止まりました。


「……セシルの耳にも入ったか。」

「やはり御存知なのですね。」


 取りあえず昼食を頂きます。

 具沢山のサンドイッチも、焼き菓子も何もかもが美味しいです。


 お腹も落ち着いて紅茶を飲んでいると、レリック様が話し始めました。


「今は社交シーズンで毎日どこかで夜会が開かれている。で、ここ数日は毎日、夜会に参加した数名の身柄を拘束する羽目になっている。それが事実で、誘拐事件は噂だ。」


「ここ数日。ということは、今まではそのような事態になっていなかったのですね。理由は分かっているのですか?」

「ああ。ここでは流石に言えないが。」


 秘匿事項なのでしょう。

 人払いをしても誰が聞いているか分かりません。

 頷くだけにしました。


「それと、拘束する。とは、騎士団が、ですか?」


 レリック様が肯定の頷きをしました。


「だが、彼らが犯罪者だからではない。青騎士団の担当。と言えば、セシルなら察しがつくだろう。」


 青騎士団は祓い屋に扮して、王都で魔に囚われた人を、人知れず祓う任務もしています。

 今回は何かしらの理由で、夜会に参加した一部の貴族が、魔に囚われやすくなったようです。


 確か、レミーナ嬢の魔を吸引して、レミーナ嬢が目覚めた時、魔に囚われていた間の記憶はありませんでした。


 おそらく、魔に囚われている間の記憶は残らないのでしょう。

 拘束されている貴族が、捕えられていた期間の記憶が無いと証言するのも、納得です。


「解決には、どれくらいかかりそうですか?」

「遅れている行事が終われば、落ち着くと考えられている。」


 行事とは、青騎士団が担当している、魔王を封印している箱を百年毎に封印し直す行事の事です。

 封印が遅れているせいで箱が劣化して、魔が漏れているのでしょうか。


「心配しなくても、結婚式までには終わる。いや、終わらせる。」


 そう言いながら、レリック様はポケットから懐中時計を出して時間を確認すると、長い溜め息を吐きました。


「思ったより時間が経つのが早い。あと十五分か。」


 折角東屋で食事をしていたのに、楽しくない内容のお話ばかりで、お疲れになったのかもしれません。


 レリック様の昼休憩は、残り十五分ですが、少しでも安らいで頂きたいです。


 今こそルルーシェ妃殿下に教わった、東屋でも出来る癒しを実践する時でしょう。


「レリック様、お昼に少しでも仮眠を取ると、頭がスッキリして、疲れも取れるそうなのです。食事も食べ終わりましたし、まだ少しお時間がありますので、宜しければ、ここでお休みになりませんか?」


 恥ずかしさで、ちょっと早口になりながら、ドレスに覆われている膝を手でポンポン叩きました。


「ここ、で?」


 レリック様が、私の示す膝を凝視しています。

 この言い方では、伝わらなかったようです。


「膝枕はお嫌ですか?」

「嫌な訳が無い。」


 被せ気味に返事をされました。


「それは良かったです。少しお待ち下さいね。」


 東屋の椅子は長椅子なので、私が端に寄って座れば、足の長いレリック様も少し膝を曲げる程度で横になれます。


 見た事はありますが、自分が膝枕をするなんて初めてです。

 緊張しながら、長椅子の端に移動して、ドレスを整えながら座りました。


「どうぞ、頭をこちらに。」

「では、失礼する。」


 モテるレリック様は、膝枕もされ慣れているのでしょう。

 恥ずかしがりもせず、すんなり、膝枕をされて下さいました。


 仰向けのレリック様と目が合って、恥ずかしさから、思わずレリック様の目元を手で覆いました。


「さあ、目を閉じて下さいね。目を開けていては眠れませんよ。」

「……分かった。セシルも私の顔をじっと見ないように。視線が気になって眠れない。」


 レリック様の口元がニッと上がりました。

 レリック様の顔を見ているのがバレています。

 慌てて顔を上げました。


「では、お庭を眺めていますね。」


 なんて言いつつ、レリック様の目元を覆っている手を離して、チラリと寝顔を盗み見ました。

 均整の取れた美しい顔にかかる金色の髪がサラサラと、そよ風で揺れています。


 普段の就寝前に、レリック様の寝顔なんて見たら、緊張で眠れなく……いえ、結構ぐっすり眠っていますが、なるべく見ないようにして、さっさと眠るように心掛けています。


 夜は灯りも消すので、光と言えば、カーテンの隙間から射し込む月明かり位で、こんなに明るい場所で寝顔を見るのは初めてです。


 寝顔も美しいなんて、流石見目麗しい方は違います。

 じっと見ないように言われましたが、思わず見惚れてしまいました。


 六月でも今日のように晴れている日は汗ばむくらいの暑さですが、東屋の木陰は涼しくて、そよ風で運ばれてくる緑の香りや、近くにある噴水の水音が心地好いので、それだけで癒されます。


 レリック様はかなりお疲れだったのでしょう。

 気づけば寝息が聞こえて、眠りに落ちていました。


 ほんの十五分、されど十五分。

 知りませんでした。膝枕とは、思ったよりも足が痺れて、苛酷だったのです。

 ああ、レリック様が膝枕を気に入りませんように。


 勧めておきながら、少し後悔したのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2023年12月8日にOFUSEサイトにて、レリックとセシルのイメージイラストを投稿しました。 宜しければご覧くださいませ。 OFUSEサイト・アシコシツヨシ
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ