表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
解錠令嬢と魔法の箱  作者: アシコシツヨシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/114

71 妻として

 朝、八時。

 私が侍女のレミに起こして貰う頃、レリック様は既にベッドにはいませんでした。


 身支度を整えて大部屋へ移動すると、レリック様はいつも通り、テーブルに着いて、私を待っていて下さいました。


「おはようございます、レリック様。」

「おはよう、セシル。」


 席に着席して、朝食を一緒に頂きます。

 婚約破棄の心配も無くなって、こんな風に穏やかな朝を、これから毎日過ごせるのかと思うと幸せです。


 私のやるべき本当の任務は無事終わって、もう騎士棟へ行く必要が無くなってしまいました。

 だから、騎士棟の食堂で、騎士団の皆さんと昼食をご一緒するのも、もう終わり。


 今日から昼食は、この大部屋で一人きりです。


 毎回、いつものメンバーに、食べるのが遅い私を待たれてしまう、見守られタイムは緊張しましたが、賑やかで楽しい昼休みでした。


 少しだけ寂しい……。


 そんな事を思いながら、一つ目のパンを食べ終わった時でした。


「今日から私も昼食はここで取る。もう少し落ち着いたら、たまには庭園の東屋で食べるのも良いかと思うが、どうだ?」


 庭園の東屋はレリック様と初めてランチをした場所です。


 東屋からは目視出来ませんでしたが、水音が聞こえていましたから、きっと噴水が近くにあるのでしょう。

 早咲の薔薇が咲いていて、とても素敵な庭園だったと記憶しています。


「嬉しいです。でも、レリック様は食堂に食事が用意されるのではないですか?」


「出勤した時に伝えれば、食事は取り消せるから大丈夫だ。」


 騎士棟にある食堂の方が食事量も多いですし、移動時間が少ないので、ゆっくり休める筈です。

 それなのに、私が一人で食事をしなくても良いように、寂しくないようにと考えて下さったのでしょう。


 その優しい気持ちが、とても嬉しいです。

 でも、レリック様が無理をしていないか、心配になります。


 朝食後、レリック様の部屋へ移動して、転移陣の前で、祓いの鐘が鳴るのを一緒に待ちます。


「ああ、そうだ。今日の午後五時から、褒美の授与式がある。陛下に謁見して、その後、立食パーティーの予定だ。四時半頃、迎えに戻るから、赤騎士団の騎士服に着替えて待っていてくれ。」


「分かりました。」


 話が終わった頃、九時になったようで、祓いの鐘が鳴り始めました。

 目を閉じ、胸に手を当てて、深呼吸を繰り返します。


 毎日、レリック様は、祓いの鐘で心を落ち着かせてから、騎士棟へ出勤していますので、私も一緒に鐘を聞いてから、お見送りをします。


 今まで、私がお休みの時は寝坊していましたので、お見送りは今日が初めてです。

 祓いの鐘を聞き終わって、目を開けようとした時でした。


 不意に手首を捕まれて軽く引き寄せられると、あっという間に、レリック様の腕の中に閉じ込められてしまいました。


 今日、私は騎士棟へ行きません。

 それに、まだ陣の手前です。


「行って来る。」


 耳元で、色気のある良い声で囁かれましたので、肩がピクッと跳ねてしまいました。

 これはお父様とお母様がしていた、お見送りやお迎えの時にするハグです。


「……っ、行ってらっしゃいませ。」


 恥ずかしながらもレリック様の背中に手を回して、少しだけ力を込めると、更に強く抱き締められました。


「!?」


 私の知っているお見送りのハグと流れが違います。

 この次はどうするべきなのでしょう。

 私も力を入れるべきでしょうか。


「困った、行きたくない。」

「え?」

「そんな訳には、いかないか。」


 レリック様は長い溜め息を吐いて、渋々という感じで抱き締める手を解いて下さいました。

 そして転移陣へ移動して、陣の中に入りました。


「行ってくる。」

「はい、行ってらっしゃいませ。」


 二回目の挨拶を交わして、レリック様は転移して行きました。

 仕事人間のレリック様が、行きたくないと言うなんて珍しいです。


 結婚まで、何かを耐えなければならないようですし、余程お疲れなのでしょう。


 何か癒して差し上げなければ。


「未来の妻として。」


 一人で呟いて、暫くレリック様の部屋で、顔を赤らめていたのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2023年12月8日にOFUSEサイトにて、レリックとセシルのイメージイラストを投稿しました。 宜しければご覧くださいませ。 OFUSEサイト・アシコシツヨシ
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ