表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
解錠令嬢と魔法の箱  作者: アシコシツヨシ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/114

70 レリック様の話

 唇をおでこから離した時、目を見開いたレリック様と目が合って、我に返りました。

 私ったら、何て事をっ!


「ご、ご免なさい。きゃっ!」


 恥ずかしさから、慌てて後ろに下がると、ローテーブルに、ガンッと足をぶつけてしまいました。


「大丈夫か?」

「はい、少し痛いですが、平気です。ご免なさい。本当にご免なさいっ。」


 ううっ、恥ずかしすぎます!

 両手で顔を覆って俯くしかありません。


「セシルには驚かされてばかりだ。勿論、良い意味でだ。私は随分翻弄されている。それが楽しくて仕方がない。」


 レリック様が怒っていないようで、良かったですが、両手首を掴んで、顔を覆っている手を引き剥がそうとするのは止めて欲しいです。


「顔を見せて、セシル。それでは好きだと言えないではないか。」

「言えないなんて、もう言って……え?」


 顔を上げると、レリック様が素敵な笑顔で立っていました。


「任務と割りきっていたのは最初だけだ。随分前から好意を寄せていた。じゃなければ、不必要に手なんて繋がない。」


「え?不必要な時があったのですか?」


 目をパチクリさせていると、レリック様にフッと笑われてしまいました。


「それで、私の話だが。」

「あ!はい、そうでした。」


 レリック様もお話があると言っていましたのに、色々脱線したせいで、すっかり忘れていました。

 私達は一旦、ソファーに座り直しました。


「もう全て話してしまったが、私達の結婚は、王宮の地下に封印されている魔王の箱を、再封印する行事が終わった後になる。と話すつもりだった。」


「そう、だったのですね。」


 今までの説明を分かりやすく凝縮したような内容です。

 レリック様の気持ちを知らなかったから仕方がないのですが、レリック様の話から聞いていれば良かったです。


 私が先に話した事を、少し後悔しました。


 どちらにしても、今日、魔王の話を聞くのは運命だったようです。

 魔溜まりの次は本物の魔王ですか。

 本当に、次から次へと厄介な話が湧いて来ます。


「今度は魔王を吸引する任務ですか?」


「いや、セシルが関わる必要は無い。この魔王再封印行事は、百年毎に行われて、青騎士団が担当している。重要度は高いが、新しく作った箱に、古い箱を入れるだけの簡単な行事だ。ただ、エドが失踪していたせいで、箱の製作が遅れている。その為、当初予定していた三日後に間に合わず、二週間程、遅れるらしい。」


 三日後にそんな行事が控えていたなんて、妃教育の本にもありませんでした。

 きっと予定通りに行われていたら、何も知らされずに終わっていたのでしょう。


「遅れても大丈夫なのですか?」

「今のところ特に問題は起きていないと聞いている。大丈夫だろう。」


 背伸びをしながら立ち上がったレリック様が、私の方へ振り向きました。


「それより、まだ大事な話をしていなかった。」

「大事な話ですか?」


 魔王より大事な話なんて、物騒な内容に違いありません。


 私の返事を待たずに、レリック様は私の左手を取ると、スッと跪いて、流れるような動作で、私の左手薬指に口付けしました。


「っ!」


 これは予想外すぎます!

 レリック様の柔らかな唇の感触に驚いて、ピクッと手が動いてしまいました。


「任務を終えて、お互い五体満足で無事帰還出来た。直ぐに結婚出来ないのは残念だが、必ず結婚する。私が愛する女性はセシルだけだ。」


 力強い声と私を見上げる強い眼差しに、思わず魅入ってしまいました。

 レリック様が令嬢に跪く姿なんて、見たことがありません。


 私はそれ程、レリック様に想われているのだと実感出来て、嬉しさと幸福感で、胸が高鳴らずにはいられませんでした。


「有り難うございます。私もお慕いしているのは、レリック様だけです。レリック様とずっと、ご一緒出来るのならば、結婚式が遅れても構いません。」


 王家には色々予定がありますから、婚約破棄されないのならば、挙式はいつでも良いと思ったのですが、レリック様は違うようです。


「私は早く結婚したい。私は思ったより忍耐力が無いらしい。」


 立ち上がったレリック様を見上げて、首を傾げました。


「結婚まで、何をそんなに耐える事があるのですか?」

「……色々だ。」


 レリック様は再びソファーに座りながら、遠い目をしています。


 秘匿事項だらけの王家です。

 何かは分かりませんが、王子は結婚式まで、何かを耐える特別な儀式をするようです。


 王子の儀式なら、きっと私には話せない内容なのでしょう。

 経験上、それが何かは聞かない方が良い気がします。


 結婚する事で、耐える儀式から解放されるのだとしたら、結婚を急ぐのも納得です。

 今後も任務をしながら、何かを耐えなければならないなんて、ストレスが溜まりそうで心配です。


 ふとテーブルの上にある紅茶に目が向きました。


 寝る前に淹れてくれる紅茶は、リラックス効果の高い茶葉を使うとされています。

 だから、冷めても効果はあるでしょう。


「冷めてしまいましたが、紅茶でも飲んで、少しゆっくりしてから、休みませんか?」


「ああ。そうしよう。」


 レリック様が、フッと力が抜けたように微笑みました。


 寝る前の時間、私はレリック様と想いが通じ合った幸せを噛み締めながら、ようやく心穏やかな時間を過ごせたのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2023年12月8日にOFUSEサイトにて、レリックとセシルのイメージイラストを投稿しました。 宜しければご覧くださいませ。 OFUSEサイト・アシコシツヨシ
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ