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解錠令嬢と魔法の箱  作者: アシコシツヨシ


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68 帰還

 指輪の指す方向に向かって暗闇を暫く歩き続けると、黒いモヤのかかった、禍々しい雰囲気を放つ錠前が、私の顔の高さ辺りに浮いているのが見えました。


 王妃殿下に付いていた呪いの錠前とは違って、私の両手を並べた位の大きさがあります。


 錠前の色は漆黒なのに、闇の中でもハッキリと見えるのは何故でしょう。


「レリック様、前方にある大きな錠前が見えますか?」

「いや、何も見えない。ただ、指輪はソレを指しているようだ。」


 どこへ動いても指輪は錠前の方向を指していました。

 あの錠前が魔溜まりの原因なのでしょう。

 錠前は特殊ですが、解錠出来ると分かります。


「箱は魔を吸引する筈なのに、暗闇に来てから、吸引していないように見えます。壊れてしまったのでしょうか?」


 上蓋が開いたままの箱を見つめました。


「いや、この上蓋は普段、パカパカとよく動く。私が持てば、直ぐに閉じている筈だ。しかし、セシルが持っている間、様々な衝撃があったにも関わらず、全く閉じる気配がない。きっと壊れていないだろう。」


「では、あの錠前を解錠すれば、箱は魔を吸引出来るでしょうか?そもそも、解錠しても良いのか心配です。私は閉じられませんから。」


「正直、どうなるかは分からないが、箱が魔を吸引しないなら、何かしら手を打つ必要がある。今、出来る事は解錠しかない。ならば、解錠してみるべきだろう。」


「それもそうですね。では解錠して……」


 錠前の禍々しい雰囲気が怖くて、錠前に近付く足が止まってしまいました。

 

「ゆっくりでいい。錠前はどの辺りだ?」


 私の腰に回っていたレリック様の手が、強く私を引き寄せました。

 離さないと言われているようで安心します。


「ここから真っ直ぐ、三メートルほど歩いた所に浮いています。」


 レリック様と一緒に錠前へと近付きました。

 目の前に浮かぶ錠前を指で触れると、ガシャンと音がして、簡単に解錠出来ました。


 錠前はボロボロと崩れて消え、周辺の黒いモヤが集まり、何かの頭部のような形に変化すると、鋭く光る赤い瞳と目が合った気がして、ゾクリと背筋が凍るような感覚を覚えました。


「……っ、こんな矮小な存在に邪魔されるとはぁぁぁ!魔がぁぁぁ魔がぁぁぁ……」


 どうやら箱が機能し始めたようです。

 叫び声をあげている頭部とモヤが長く伸びて、物凄い勢いで箱に吸引されています。


 赤い瞳が睨むように、ずっとこちらを見ています。


 怖いっ、今すぐ箱を投げ出したい。

 でも、ダメ。絶対に箱から手を離してはダメ!


 私の気持ちを察したのでしょう。

 レリック様が、後ろから支えるように私の手を包みました。


「セシル頑張れ。これからが本番のようだ。」


 四方八方から竜巻のように渦を巻きながら、黒いモヤが箱へ向かってきます。


「セシル、上を見ろ!」

「え!?」


 上空から全ての闇を集めたような黒い竜巻が、こちらへ向かって降りて来ます。


 待って待って!あんな巨大な竜巻見たことない。

 怖い、怖すぎる。もう逃げたい。


 そもそも恐怖で、腰が抜けて動けません。

 ふと、手元に違和感を感じました。


「レリック様!箱が!大きくなっています!」

「そのまま箱を地面に置いて、手は離すな。上から来るぞ!」

「!!」


 すぐさまレリック様とその場にしゃがんで、どんどん大きくなる箱を地面に置きました。

 

 ゴオオオオオォォォォォ……


 大きな音をたてながら、黒い竜巻が箱に吸引されています。

 飛ばされはしませんが、強い風で目を開けていられません。


 レリック様が後ろから覆い被さるようにして、箱を持っている私の風避けになって下さいました。


 必死に箱を持ち続けて、どれくらい経ったでしょう。

 結構長い時間だったと思います。


 パタン……カチャッ


 箱の閉じる音がして、気づけば辺りは静かになっていました。

 何だか暑いです。


「うわっ、眩しい!」


 太陽の光でしょうか、突然の眩しさに目を開けていられません。


 ようやく光に目が慣れて、目を開けました。

 ここは、すり鉢状になった穴の底、辺りのようです。


 元の大きさより全体的に、一メートル程大きくなった箱の上蓋は、完全に閉じています。

 再び解錠すると、箱は開いて、すぐに閉じました。


「どうやら終わったようだ。」


 頭の上から声がしたので振り向くと、レリック様が微笑んでいました。


「レリック様、お姿が……」


 闇の中では、どんなに近くにいても、姿を見る事は叶いませんでした。


 思わず手を伸ばすと、レリック様が私の手を掴んで、立ち上がるのを補助して下さいました。


「やっと、セシルの顔を見れた。」

「はい、レリック様も。姿が見えるって、幸せですね。」

「ああ。」


 レリック様の手に頬を包まれて、その手を上から覆いました。

 暗闇から抜け出せた安堵感から、互いに微笑み合いました。


 でも、安心するのはまだです。

 穴の上にいる皆さんが、魔に囚われているかもしれません。


「皆の状況が心配だ。早く戻って合流しよう。」

「レリック様、箱が!」


 大きくなっていた箱が、いつの間にか元の大きさに戻っていました。

 不思議に思いながら箱を拾って、レリック様と斜面を登り、穴の上にたどり着きました。


 皆さんは転移していなかったようで、全員その場で待機していました。

 私達に気づいたクリス副団が、駆け寄って来るなり頭を下げました。


「セシル嬢、ぶつかってしまい、大変申し訳ございませんでした。ご無事で何よりです。」


「クリス副団、お気になさらず。箱を落とさなければ、いつまでも魔を吸引出来なかったかもしれません。結果的に良かったと思っています。皆さんは大丈夫でしたか?」


「はい。お二人が魔溜まりの中へ行って直ぐ、黒い霧で視界が悪くなり、エド団長が描いた足止めの陣に全員避難して、祓いの陣を付与した剣を振る事で何とか魔に囚われずにいられました。

それでも体力の限界が近付いて、魔に囚われそうになった時、全ての霧が穴に向かって流れ出して、周囲が明るくなると、皆の気持ちも晴れて、魔物は弱って死滅していったので無事でいられました。」


 魔王領は見違える程明るくなって、太陽の日差しが降り注ぎ、ジリジリと暑いくらいです。


 レリック様が魔溜まりに反応する指輪に目を向けています。

 私達も指輪を見ました。

 指輪には×のマークが表示されています。


「これは、もう魔が無い時に出る表示です。」


 バルト副団の言葉にレリック様が頷きました。


「指輪によって、魔溜まりは無くなったと証明された。任務終了だ。帰還しよう。エド、転移陣を―――」


「レリック、もうとっくに描き終えている。さっさと帰ろう。もう午後三時だ。流石に腹が空いた。」


「確かに。」


 レリック様はいつものように私の手を握ると、転移陣へと歩きだしました。

 これで婚約の切っ掛けになった本当の任務が終わりました。


 それでも一緒にいたい。

 今夜、レリック様に本当の気持ちを伝えよう。


 覚悟を決めて帰還したのでした。

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2023年12月8日にOFUSEサイトにて、レリックとセシルのイメージイラストを投稿しました。 宜しければご覧くださいませ。 OFUSEサイト・アシコシツヨシ
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