28 就寝
美丈夫ファンクラブの会報誌に載せても大丈夫そうな殿下の情報を伺って、紅茶でリラックスタイムを過ごした後、寝室に入室したのは深夜零時頃でした。
「え!?殿下、いえ、レリック様、これはどういう事ですか?」
入室して直ぐ、目を疑いました。
今朝まで私達が寝ていた二台のベッドが置いてあった場所に、キングサイズのベッドが鎮座しています。
それぞれにあった掛け布団も取り払われて、キングサイズの掛け布団一枚だけです。
唯一、二つあるのは枕だけでした。
「ベッドをくっ付けると、その隙間に嵌まって怪我をする危険がある。仕方なく、本当に仕方なく、ベッドを変えなければならなかった。」
殿下は溜め息を吐きながら、仕方なく、を強調していますが、納得出来ません。
「危険と言いますが、今まで嵌まった事なんてありませんでしたよね。結婚前に、その、何も無くても、やっぱり男女が同じベッドに入るのは、良くないと思います。」
色々と恥ずかし過ぎます。
私の主張を黙って聞いている殿下が、困ったような、何とも言えない表情をしています。
普段はあまり感情が顔に出ない殿下が、です。
え?もしかして、私は眠っている時、隙間に嵌まりそうになっていたのでしょうか?
「セシル、怪我する可能性は未然に防ぐ事が大事だ。睡眠中は咄嗟の判断力も無いから危険だ。分かってくれ。」
この言い方、きっとそうです。
殿下は敢えて口にしていませんが、私が隙間に嵌まりそうになったのを目撃したに違いありません。
ベッドの共用なんて恥ずかしいですが、余計な心配をさせるのは申し訳無いですし、殿下だって、うっかり嵌まって怪我をしたら大変です。
「分かりました。安全が一番ですものね。」
「分かって貰えて何よりだ。」
殿下が明らかにホッとしています。
殿下は案外心配性な所があるようですから、余計な心配はかけないようにするべきでしょう。
諦めてベッドに入りました。
いつものように私は左側、殿下は右側に並んで横になります。
そして、互いに手を繋ぎました。
なるべく距離は取っていますが、掛け布団が一枚だけだからか、ベッドの境界線が無いせいかは分かりませんが、昨日よりも近い気がします。
それを気にしているのは私だけのようで、殿下は至って普通でした。
「お休みセシル。」
「……お休みなさいませ、レリック様。」
困った事に、殿下はこちらに体を向けて寝る癖があるのです。
見られているようで凄く、そう、すご~く気になりますし、ベッドを共用するのも恥ずかしくて、悶えそうですが、安全の為に必死で耐えます。
殿下の存在を気にして寝不足になれば、任務にも支障が出るかもしれません。
体調不良で騎士団の皆さんに迷惑をかけるなんて、絶対に駄目です。
だから、しっかりと体を休めなくてはいけません。
目を閉じて、なるべく早く眠るように心掛けました。
心掛けたからでしょうか、一段と寝つきが良くなった気がします。
例え殿下が声をかけていたとしても、当然分からないのでした。




