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解錠令嬢と魔法の箱  作者: アシコシツヨシ


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23 ダンスタイム

 王家専用の扉から会場へ入場すると、そこはいつも見上げていた階段上にある広い踊り場でした。

 私と殿下は指定されていた階段の直ぐ手前まで歩いて、並んで立ちました。

 階段下にいる沢山の参加者に注目されています。


 数日前の建国祭では、階下にいる参加者の一人でしかありませんでした。

 それがまさか王家側として注目される立場になるなんて……。

 人生とは本当に何が起こるか分からないものです。

 緊張しますが、淑女らしく微笑みを絶やさないよう心がけます。


「本日は、我が第二王子レリックと、アセンブル伯爵令嬢セシルの婚約披露パーティである。皆、楽しんでくれたまえ。」


 セブラン国王陛下の挨拶が終わると、私と殿下は参加者に一礼して階段を降りました。

 最初に私達がダンスを披露する決まりです。

 ホールの中央へ行き、互いに向かい合うと、楽団が演奏を始めました。


「緊張しているなら、存在を消そうか。誰も我々を認識出来なくなる。」


 互いに手を重ねて、殿下が私の肩甲骨を引き寄せた時、耳元で囁かれました。


「それではダンスを披露する意味がありませんよ。」


 ステップを踏みながら、思わずクスリと笑ってしまいました。

 お陰で緊張がほぐれました。

 それに、殿下のホールドとリードは安心感があるので、直ぐにリラックス出来ました。


「言い忘れていた事があった。」

「?」


 これまでの殿下を考えると、あまり良い予感はしません。

 内心、少し警戒してしまいます。


「今日のセシルは、一段と美しい。」


 それはそれは甘く微笑まれました。


「「「きゃあぁぁぁぁ!!」」」


 令嬢方が発する黄色い悲鳴の大きさに驚いたお陰で、冷静さを失わずに微笑みを返せました。


「有り難うございます。殿下こそ素敵です。」


 全く、急に落としにかかるような激甘な微笑みを向けないで欲しいです。

 ステップを間違えるかと思いました。

 ロイが愛を感じるダンスを要求していましたから、きっと仲良しアピールせねばと思い出したのでしょう。


 殿下が微笑むと、大抵、令嬢方はハートを打ち抜かれて、黄色い悲鳴が飛び交うのです。

 美しい者に対して美しいと言っても害は無いので、王家は黄色い悲鳴を容認しています。

 ですから、令嬢方は叫び放題なのです。


 黄色い悲鳴の中、殿下の微笑みに顔の熱が治まらないながらも、無事ダンスを終えてホッとしたのも束の間。

 これから約二時間、ダンス三昧です。


 主役は決められた時間まで、婚約を祝う方々からダンスを申し込まれたら、断らないのがルールだそうです。

 勿論、互いに申し込まれるのは異性です。


 事前に申し込みは完了していて、王家にとって重要な人物や、主役に親しい者が優先的に選ばれ、既に順番も決められているそうです。


 誰と踊るのか等、事前に情報を頂けると思っていましたが、何も知らされていません。

 どなたと踊るのか緊張します。

 最初に私の前に現れた男性は、とても、そう、とても良く知っている方でした。


「セシル様、私とダンスを踊って貰えるかね?」

「お父様!是非、喜んで。」


 ダンスの間、ダンスを申し込んだ相手は、主役と秘密の会話が出来ます。

 それがダンスを申込む方が殺到する理由だそうです。


 お父様もダンスを申し込んで下さったと思うと嬉しいです。

 ダンスが始まると、お父様が呆れた様子で口を開きました。


「殿下より嬉しそうにしてどうする。」

「そんな事は……だって、家族は特別ですもの。」

「それは、まあ、そうだな。」


 お父様はフッと笑って、少し嬉しそうでした。


「セシル、私とダンスを踊って貰えるかな?」

「カインお兄様!はい、喜んで。」


 カインお兄様もダンスを申し込んで下さったのですね。

 お別れが突然だったので嬉しいです。


「私とのダンスをそんなに喜ぶとは、我が妹は愛らしいな。」


 ダンスをしながら、カインお兄様が優しい笑みを向けてくださいます。


「「「きゃあぁぁぁぁ!!」」」

「今の黄色い悲鳴は絶対、カインお兄様に対してですよ。」

「だろうね。私は結構モテるからね。」


 クスリと再びカインお兄様が笑います。

 自分で言いますか。と言いたいところですが、カインお兄様は本当にモテるのです。


「「「きゃあぁぁぁぁ!!」」」


 モテる方は令嬢の黄色い悲鳴を聞いても、顔色一つ変えません。

 殿下もそうですが、小鳥のさえずり位にしか感じていないようです。


「元気そうで何よりだ。辛いなら我慢しないで、いつでも帰って来いよ。」

「はい。有り難うございます、カインお兄様。」


 帰る場所があると思うと、頑張れそうな気がしました。


「セシル様、お初にお目にかかります、イース公爵家次男、アレクセイと申します。私とダンスを踊って頂けますか?」


 豪華な貴族然とした衣装を纏っていますが、アレク団長です。


「アレク、セイ様。はい、喜んで。」


 つい、アレク団長と呼びそうになりました。

 アレク団長がクスクス笑いながら私をホールドしました。

 アレク団長、いえ、アレクセイ様のリードもとても踊りやすいです。


「驚いたかい?」

「それは、はい。でも良く考えれば、騎士の姿をお見かけした事はありませんでした。」


 社交界でアレクセイ様と言えば、イース公爵家の次男で見目麗しく、令嬢に人気で王宮勤めらしい。との認識でした。


「我々は騎士である自体を秘密にしているから、ね。」


 黒騎士団は隠密、ですものね。

 コクリと頷きます。


「騎士服のセシル嬢も良いけれど、ドレス姿のセシル様も素敵だね。」


 アレクセイ様が微笑みました。


「「「きゃあぁぁぁぁ!!」」」

「この黄色い悲鳴はアレクセイ様に対してですね。」


 落ちない令嬢はいないと噂されているアレクセイ様です。

 殿下やカインお兄様に負けない見目麗しさがあります。


「嬉しいね。仕事もはかどって一石二鳥。」


 アレクセイ様は令嬢方にチラリと目を向けて、ウインクしました。


「「「きゃあぁぁぁぁ!!」」」


 もしかして、これも任務の一貫なのでしょうか?

 アレクセイ様は遊び人の噂もありますが、仕事振りはとても真面目で紳士的です。

 私の中では全く遊び人のイメージはありません。


「癒しのひとときが、もう終わってしまった。残念。」


 ポツリと呟いて、私とのダンスを終えたアレクセイ様は、予想通り令嬢方に囲まれていました。


「セシル様、お初にお目にかかります、グース伯爵家次男のグレンと申します。ダンスのお相手をお願い出来ますか?」


 黒騎士団のグレン副団です。


「はい、喜んで。」


 ダンスが始まって直ぐでした。


「セシル様、これからダンスを申し込む者は、全て黒騎士団の者です。」

「そうなのですか?」


「レリック殿下が、家族ではない者からの申し込みを、全て却下したせいです。穴埋めに黒騎士団が選ばれたのは、夜会で私服任務をしているのが、黒騎士団だけだからでしょう。」


 殿下の事です。何かお考えがあったのでしょう。


「私自身、男性の友人もおりませんし、男性とのダンス経験も多くはありませんから、知っている黒騎士団の方々の方が安心出来て助かります。」


 少しホッとして笑みがこぼれました。


「……なるほど、知らない奴より我々の方が、まだマシだと思われたのでしょう。」


 グレン副団の話から察するに、殿下は私に気を遣って、知らない方より知っている黒騎士団の皆さんをダンス相手に選んで下さったようです。


 グレン副団の言う通り、ダンスタイムが終わるまで、ダンスを申し込んで来たのは黒騎士団の方々だけでした。

 お陰で知らない方より、ずっと話しやすくて最後までダンスを楽しめました。


 私の中では、レリック様のリードが一番安心出来る気がしたので、もし踊る相手を選べるなら、レリック様にしたいと思ったのでした。


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2023年12月8日にOFUSEサイトにて、レリックとセシルのイメージイラストを投稿しました。 宜しければご覧くださいませ。 OFUSEサイト・アシコシツヨシ
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