プロローグ
初めての投稿となりますが、ゆっくりと更新させて頂ければと思います。
――—あんな風に強く、なってみたかったな...
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「その夢、叶えてみるかい?」
「え?」
ここは、何処だろう?
「ここはね、所謂『神域』ってやつさ」
「神域?」
声がする方を見ると、なんだか胡散臭そうな笑顔の子どもが居た。
「失礼な。こう見えても君より年上だよ?少なくとも億単位でね」
…?そういう設定なのだろうか。というか、なんで俺はこんな所に居るのだろうか。
「それは勿論僕が呼んだからさ。一応確認しておくけど、鳳凰院 龍騎君だよね?」
「その通りだが…。さっきから、俺の思ってる事に返事してるのか?」
「あぁ、まぁこう見えても神様だからね。それぐらいは出来るよ」
「神様?」
「そうそう。君達の世界でも流行ってるだろう?異世界転生とかでよく出てくるあの神様さ」
胡散臭いなぁ…。自分で異世界転生とか言っちゃう辺りが余計になんというか。
「分かり易く説明してあげただけなんだけどなぁ。まぁいいや、とりあえずどうするの?
「どうするのって?」
「転生する?しない?僕はどっちでもいいけど、君が望むなら転生させてあげるよ」
「ちょ、ちょっと待って、転生ってマジなの?」
「マジだよ。言っとくけど誰でもって訳じゃないけどね。君は碌に"生きて"無かったでしょ?」
「まぁ…」
「子供のまま死んだ子、子供の頃から碌に生きたと言えない状態だった子――そういう子達に対しては、全員ではないにせよこうやって救済を与えてあげてるんだよ」
「ふーん。じゃあ、生き返してもらえるってことかい?」
「そうだね。アイラ、シバ、どう思う?」
「私は大歓迎よ〜!」
「儂もよいと思うぞ」
「うおっ!?」
急に誰かに話しかけたと思ったら、後ろから声が!?
「い、いつから後ろに?」
振り返ると、ハリウッドスターか?ってぐらい端正な顔立ちのお姉さんと、漫画やアニメでしか見かけないようなお爺さんが居た。
「ん〜、さっきから?」
「儂らはちょうどお主が此処に呼ばれた頃に、新たな転生者が来るとエルに呼ばれての」
「ぜ、全然気付かんかった...」
てかエルって?
「あぁ、それは僕だね。エルグランド、まぁ、気軽にエルって呼んでくれればいいよ」
「神様のくせにフランクだなぁ...」
「別に偉ぶる必要も無いしね。少なくとも、君が居た世界に僕を知る人は居ないし、僕が知られてる事も居ないだろう?そんな相手に偉そうにするのは、ナンセンスというものさ」
「そういうもんかねぇ…まぁ、遜らなくて良いってのは助かるよ」
「そうだろうそうだろう。それで、君は転生するってことでいいのかな?」
「じゃあ、お願いします」
「よし、じゃあ後の細かい事は二人と決めてくれ。僕はそろそろお昼寝の時間なんだ」
(やっぱり子供じゃねぇか)
「天罰投げちゃうよ?」
「すいませんでした…」
今、割と目が本気だったような...。
「はいはい、それじゃあ話進めるよ〜」
エルにアイラ、シドと呼ばれていた二人だ。どうやら、ここからはこの二人が話してくれるらしい。
「改めて、アイラよ。よろしくね、龍騎くん」
「エルが言っておったが、儂がシド・バルトウォーじゃ。儂らのことは御主が転生する世界を管理しとる者と思ってくれればいいわい」
「神様じゃないのか?」
「御主らの言葉で言えば神様じゃが説明するとちと面倒なんでな、とりあえず今は良いじゃろ。それよりも今は御主の話をしよう」
「俺の?」
「そうじゃ。儂らがこうして御主の様な者を転生させる際は、何かしらの望む力を与えておる。勿論限度はあるがの」
「前にどく○いスイッチが欲しいって言った子も居たわね~。流石に却下したけど」
「ド○えもんじゃねぇか!」
「今のは極端な例じゃが、例の通りそこまでの希望は叶えてやれんが何か希望はあるかの?」
希望、か...。
そう言われた時にふと思い出したのは、今よりも小さい頃、白い天井の部屋に備え付けられているテレビで見たある格闘技の試合だった。
(俺も、あんな風に...)
「ふむ、強さがあればよいのかの?」
「...いや、俺は自分で強くなりたい。ただ、強くなれる素質が無いってんなら、素質が欲しい」
「強くなる素質は誰しもが持っておるぞい。其処に差があるのは事実じゃがの」
「なら、それで良い。特に欲しいものは無い」
「欲のない子ね~。それとも抑えてるのかしら?」
「タダより高いものはない、って言うだろ?」
「別に裏など無いのじゃがのう...御主の魂を地球に残さない事が目的の様なものじゃからの」
「どういう事だ?」
そんな話は聞いちゃいないが、どういう事だ?
「御主のように、碌に生きる事も出来ずに死んでしまった者の中には魂が輪廻転生の輪から外れて、いずれは除去する必要のあるしこりのようなものに成ってしまう事があるのじゃ。それを、そうなる前にやり直させて、魂が輪から外れないようにしようということじゃな。御主らの言葉で言うリユースじゃの」
「た、魂のリユースかぁ...」
「尤も、そう成った後にしこりを除去してしまっても良いんじゃが、それだと御主らのような子らが報われなさすぎるじゃろう?じゃから、こうして救える魂は救おうと言う訳なのじゃよ」
「そういう訳だから、別に遠慮しなくても良いのよ~?」
「そう言われてもな...」
考えてみるが、何も思いつかない。欲しいものはあるかと急に聞かれても、何も思いつかないのが人間の悲しいサガという事か...。
「それであれば、強くなりやすくしてやろう。それでどうじゃ?」
「う~ん、それは良いのか?反則のような気もするんだが」
「全然そんな事ないわよ~。皆が持ってるとまでは言わないけど、名前の知れた人なら割と持ってるわ~」
「...そうか、なら、それでお願いしよう」
「相分かった。では、最後になるが御主が転生する世界の名はアレルガード、転生する国名はエルドじゃ。今は、それだけ分かっておればよい」
「気をつけるのよ~」
二人がそう言うと、俺の体が崩れ始めた。
「此処に居るのもあと僅かじゃ。何か聞きたい事はあるかの?」
そう言って笑いかけてくるシドの顔を見ると、本当に俺のことを気にかけてくれていると思えてくる。
「...俺は、俺は本当にもう一度生きられるのか?」
「なんじゃ、最初にエルからそう聞いておったじゃろ?」
「それは...そうだが...そんなの、夢としか......」
「うふふ、これは現実よ~?すぐに死んじゃダメだからね?ちゃんと、楽しんで生きないと☆」
「あぁ...あぁ...!」
「ほっほ、今更実感が湧いてきたのかの?安心せい、儂らは嘘などつかんのでの。龍騎、御主に幸のあらん事を祈っておるぞい」
「エルドには龍騎くんと同じように転生してる人も居るわ。彼らとも仲良くするのよ~」
「はい...!あの、本当に、本当にありがとうございました...!!俺、もし生き返ったら、自由に生きます!!」
「善哉、善哉。儂らは御主の事を見ておるからの。それに、龍騎が望めばまた会えるじゃろうて」
「うふふ、向こうに行ったらまた話しましょ」
「必ず、また会いに来るよ...!」
二人が手を振っている。どうやら、本当にお別れの時間のようだ。
もしも転生できたなら、俺は―――!