ボロアパート13
次の日、学校がいつもより騒がしく先生達が慌てているのがわかった。
廊下で集まっている子達が話しているのが聞こえてきた。
「保健室の先生が死んじゃったって…。」
「えっ!嘘!?あの先生好きだったのに。」
「なんで?」「わかんない。」
みんな口々に喋る。
私は、何を言っているのか理解出来なかった。
だって昨日の帰り、先生「ごめんね。」って言ってた。
なんで先生に「大丈夫です。」って言えなかったのかな…。私がちゃんと先生の顔を見て話さなかったから、だから先生死んじゃったのかな…。
大人になった今ならわかる。
きっとどうにもならなくて、私の為に動いてくれた事で先生を苦しめたんだって。
けど、当時の私は自分を責める事しか出来なかった。
家に味方はいない。学校ですら居場所のない辛い場所になってしまった。
なんで、こんな事思い出したのかな…。
私の人生って思えばしんどい事ばっかりな気がする。
どうしてなのかなぁ…。
幸せになりたいって願ったらダメなのかな。
気づけば外は暗くなっていて、真っ暗な部屋で泣いていた。さすがに電気はつけよう。このままじゃ気が滅入る。
……
スーパーで買い物を済ませたが、あの人に渡す物を選んでたら遅くなってしまった。
タオルと石鹸。
ネットで調べたら日用品がいいらしいって書いてたし。使ってもらえたらいいけど…。
今日はもう微妙な時間だし、明日またご挨拶がてら伺うか。そう思い部屋へ入る。
真っ暗なはずの部屋にうっすら光が見える。
「ん?なんで灯りがもれてるんだ?」
お隣の102号室かららしい。
床に座って覗ける高さにかすかに色の違う壁紙が小さく貼ってあり、そこから光がもれていた。
昼間はそんな事に気づきもしなかった。
その壁紙が少し剥がれかけていたのだ。
「え?これって、もしかして穴あいてんの?マズくないか…?」
どうしよう。引っ越したばっかだけど、大家さんに頼んで直してもらおうか…。
悩んでいると、鼻を啜る音がした。
…えっ?泣いてる?
気になる。でも、覗きは犯罪だ。わかってる。
でも…。なんで泣いてるんだ?
もし何か困った事になってるなら助けないと。
でも、覗いてるのがあの人にバレたら…。
…散々悩んで、結局誘惑に勝てなかった。
音が出ないように少しずつ壁紙を剥がす。
ドキドキしながら覗いた…。
彼女は小さく座って泣いていた。
まるで子どものように。
…さっきとは別人のようだった。
僕はいけないとわかっていて覗くのをやめられなくなった。






