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或る男の独白1
今朝夢を見た。昔の夢だ。
忘れるには日が浅く、向き合うにはとうに取り返しの付かない、そんなどうしようもない話。
清算するにも、掛け替えの無い値はもう亡くて、解けるはずの無い方程式は捩れて拗れて歪んで、心の芯を侵食していくだけ。
許してほしいわけじゃない、ただ正面から糾弾されたかった。
けれど彼はもう何も言ってはくれなくて、ただあの日のことを思いながら、悔いと惰性だけの日々を送っている。
全てに後ろめたさを感じながら、彩のない景色を見て、くぐもった音を聞き、味のしない飯を食らうだけの唯の廃人だ。