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第8話 結成!反トータク連合!

「トータク様、トータク様に危害を加えようとしたジュンユウ、カギョウの二人を捕らえました。


おそらく他にも協力者がいると思いますので引き続き捜索いたします」


眼鏡の女生徒・リジュが我が物顔で生徒会長の椅子に座るトータクに報告する。


「リジュ、ご苦労。…で?」


キリッとした表情で聞き返すトータク。乱れ一つない七三の髪に、端正な顔つき。


この学園の生徒会長と紹介されれば、知らない人は信じてしまうだろう。


「は?で、とは?」


「ジュンユウ、カギョウというのは女か、男か?」


「両名とも女性です」


「ほぉ、それなら我輩のイチモツで詳しく事情を聴かねばならんな、クックック」


優等生そうな面持ちから、一瞬で下衆な男の表情に変わるトータク。


「そんなことよりトータク様、ソウソウ達が良からぬ事を考えているようです」


危害を加えようとした相手にもいつも通りの思考のトータクに、少々呆れるところだが、慣れているリジュは坦々と次の報告に移る。


「良からぬ事ぉ!…ふしだらなことか?」


「違います。反トータクを掲げて連合を結成しているそうです」


「やはり、あの女動きだしたか。エンショウ・エンジュツはどうした?」


「二人とも連合軍に加わったそうです」


リジュは眼鏡の横をクイと上げながら答える。


「クックック フハハハ ワーッハッハッハ


それは都合がいい。連合軍を叩き伏せ後漢学園を完全に支配してやる!」


「流石ですトータク様!」


どんなに冷静でもリジュは相槌を忘れない。


「ソウソウにエン姉妹が釣れたとなればジュンユウ、カギョウなぞ後回しだ。


待っておれソウソウ・エンショウ・エンジュツ!


今度こそお前らの裸体を我輩のベッドの上に並べて見せよう!」


立ち上がり、両手を広げ、高らかに笑うトータク。その挙動はいちいち芝居がかっていて大げさだ。


「リジュ!皆を集めよ!戦争に向けて作戦会議だ!」


「はい、トータク様!」




トータクの号令で、リジュの他、三人の女生徒と四人の男子生徒が生徒会室に集められた。


「よく集まってくれた我が同胞よ。まもなく戦争が始まる。各自準備に入ってもらいたい」


トータクに対し、返事をする一同。


「だが、その前にやることがある。リョフ、チョーオンを取り押さえ、スマホを取り上げろ!」


「はい…」


長身、ポニーテールの女生徒・リョフが、側にいた小太りの男子生徒・チョーオンを取り押さえる。


「な、何をするのですか、トータク様!リョフ様!」


「チョーオンよ、お前が兼ねてよりソウソウに内通していたのは知っていた。


戦争を起こさせるためにわざと泳がせていたが、その役目も終わった。リョフ、資料室に監禁しておけ」


リョフは頷くと、そのままチョーオンを力ずくでなぎ倒した。


「何かの間違いです。助けて下さい。ああ…」


リョフとチョーオンの力の差は歴然で、彼がいかに抵抗しようが、リョフは表情一つ変えず、彼を引きずりながら部屋を後にした。


「オーイン」


トータクの呼び掛けに、鋭い目付きの眼鏡をかけた男子生徒・オーインが応じる。


「オーイン、お前の報告のおかげで裏切り者を見つけ出すことが出来た」


後ろの向き、数歩歩いた後、大げさにオーインに向き直るトータク。


「お前は旧生徒会役員で唯一我が新生徒会に残った。その忠誠変わりないな?」


「はい、もちろんでございます」


オーインは眼鏡に添えていた右手人差し指を下ろし、トータクに頭を下げて答えた。


「第2のチョーオンにならんことを願っているぞ。


クックック フハハハ ワーッハッハッハ」




ここはソウソウ邸。一階の広間に反トータク連合参加の面々が集められていた。


「ソウソウ、凄い数になったね」


「リュービか、こんなに集まるならエンショウん家を集合場所にすべきだったか。家では少し手狭だな」


「いや、充分広いと思うけど…」


シャンデリアのある大広間なんて一般家庭では普通見かけないもんな。これより大きいエンショウ邸ってどんなんだよ。


「ソウソウ、凄い人だな」


厳つそうな男子生徒がソウソウに声をかけた。


「これはキョウボウ先輩、よく来てくれました。


リュービ、彼は書道部のキョウボウ先輩だ。顔は怖いが、根は優しい先輩だ。


今回配ったトータク打倒の檄文作成も手伝ってもらった」


「顔が怖いは余計だ。


君がリュービか。君の事はソウソウから聞いている。よろしく」


俺はキョウボウ先輩と握手して挨拶した。


「しかし、ソウソウ、我が兄キョウゲンが君の事を学園の平和をもたらす者と高く買っていたが、まさかここまでの人を集めてしまうとはな」


「いえいえ、これは盟主エンショウの人望ですよ」


「ははは、そういう事にしておくか。


しかし、兄の友人キョショウは君の事をこう言っていた『乱世の奸雄(かんゆう)』と」


「奸雄?」


聞き慣れない言葉に思わず質問してしまった。


「悪知恵に長けた英雄という意味だ」


「ふふふ、それこそ冗談で言ったんでしょう。私はただの女子高生ですよ」


「ソウソウ、どこ行ってますの!そろそろ集会を始めますわよ!」


壇上からエンショウのソウソウを呼ぶ声が聞こえる。


「ソウソウ、君が平和の使者か、乱世の奸雄か。兄達程の慧眼のない私にはわからん。


だからこそこの戦い、じっくり見させてもらうぞ」


「ふふふ、ご存分に」


『乱世の奸雄』颯爽と壇上に上がるソウソウの後ろ姿を見ながら俺はこの言葉を口にした。


俺がこの言葉を再び口にするのはもう少し先のことになる。




「遅れて悪いなエンショウ、さぁ、決起集会を始めよう」


ソウソウに促され、薄紫の長い髪の少女がマントを翻し、マイクを手に挨拶を始める。


「皆様、我が反トータク連合によく集まって下さいましたわ。私が盟主の円紹子(まどか・しょうこ)ですわ。


共にトータクを倒し、学園の平和を取り戻しましょう」


財閥のお嬢様というだけあって、場慣れしているのか、年不相応の堂々とした挨拶をするエンショウ。


集まった連合の人達もエンショウに歓声を送っている。


「トータクは他校の人間でありながら、我が校の政変に乗じ、権力をほしいままにしている」


エンショウに続いてソウソウが話を始める。こちらも場慣れしているのか堂々としたものである。


「我が校の自主性を取り戻すためにトータクを必ず取り除かねばならない。今日は決戦前夜の決起集会。作戦を伝えたいと思う。


生徒会室への道は大きく分けて北と南の2つ。我が軍も二手に別れ同時進行でその逃げ場を封じようと思う。


まず先鋒を決めたい。真っ先に敵と戦ってくれる者はいないだろうか?」


ソウソウの発言に会場はシンと静まり返る。


俺ももう少し仲間がいれば立候補するんだが、たった三人じゃさすがに無謀だ。


「その役目ワシが引き受けよう!」


赤いスカーフを巻いた男が、人混みをかきわけ前に現れた。空手部部長のソンケンだ。


「おお、ソンケンなら心強い。もう一人先鋒希望は誰かいないか?


…いないようなら私が行こう。ソンケン、君は南口から攻めろ。私は北口から行こう。


他の者は勢力が南北で均等になるように分ける。追って沙汰を待て」


「先鋒か…」


ソンケンは周りに聞き取れない程の音量で呟いた…




決起集会前日、エンジュツの部屋~


「ソンケン!貴方トータクを捕らえて私に引き渡しなさい!」


ソンケンに命令を下すのはこの部屋の主、エンショウの双子の妹・エンジュツ

挿絵(By みてみん)


「今回の連合は何人も参加しとる。そんな都合よくはいかんじゃろ」


「明日、決起集会で先鋒を決めるわ。貴方が先鋒になって生徒会室に一番乗りしなさい!」


エンショウより濃い紫の長い髪に、大きな金色のリボンをつけ、顔はエンショウとよく似ているが幼げで、体つきも小柄で子供の様だ。だが、胸は同程度あるので体が小さい分、より大きく感じる。


「はぁ」


エンジュツの命令にため息を漏らすソンケン。


「あのバカエンショウが盟主なんて信じらんない。これでトータクを倒したら次の生徒会長になっちゃうじゃない!」


ソンケンのため息は聞き流し、激昂しながらエンジュツは更に話を続ける。


「双子なのにちょっと早く産まれただけで姉だなんだとチヤホヤされてるのも我慢ならないのに、生徒会長にまでなられたら堪らないわ!


必ず私が次期生徒会長になって、ゆくゆくは円財閥を私が引き継ぐんだから!」


「うちのお姫様は無理を言いなさる」


ソンケンはエンジュツの傍らに立たったまま、隣で大かな椅子に深く腰かけ、ふんぞり返っているエンジュツを見てため息まじりに呟く。


「貴方が始めた空手同好会が今や道場まで構えるようになったのは誰のおかげ?」


にこやかな笑顔でエンジュツはソンケンに訊ねる。


「エンジュツお嬢様のおかげです」


答えるソンケン。彼女がソンケンに命令を出す時、何度となく繰り返された言葉だ。


「貴方を援助してあげたのはこの日のためよ。せいぜい恩を返しなさい」


「わかっとる。このソンケン、受けた恩は必ず返す。例えこの身に代えてでも」


覚悟を決めた顔でソンケンはそう答えた。

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