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第62話 終局!生徒会総選挙!

 中庭・カントでの敗戦により、中央校舎に侵攻していたエンショウ軍は崩壊。エンショウは僅かな部下を引き連れて北校舎に撤退していった。


 ソウソウ陣営~


「チョーコー・コウラン、よく我が軍に来てくれた。心から歓迎する」


 赤黒い髪と瞳の少女、この戦いの勝者・ソウソウは、自身の前で(こうべ)を垂れる緑髪と黄髪の二人の男子生徒を前にして言った。


「ありがとうございます。これからは我らソウソウ様のために戦います」


 そう言って頭を上げたのは白の学生服に、狼の意匠の入ったブレスレット、緑色の髪を一つ結びにした男子生徒・チョーコーである。


 彼と隣で頭を下げる同じく白の学生服に、鷹のブレスレット、黄色の短髪の男子生徒・コウランと共に、彼ら二人はソウソウに降伏し、その勝利に貢献した。


 そしてソウソウの前にはもう一人、エンショウ軍の将がいた。


「そして、ソジュ。君も私の仲間になる気はないか?」


 ウェーブのかかった長い黒髪の女生徒・ソジュは、敗北し、混乱するエンショウ軍を、一人でも多く逃がそうと、最後まで止まり、指示を出し続け、ソウソウの捕虜となった。


 しかし、捕虜となったソジュであったが、その様はとても落ち着いていた。


「ソウソウ様、私は武勇と知略を使い果たし、あなたの捕虜となりました。もう私にはあなたにお渡しする力は残ってはおりません」


 ソジュは、顔色一つ変えず、ゆっくりとした口調でソウソウの誘いを断った。


 だが、ソウソウはそれぐらいで諦めたりはしなかった。


「今回の敗戦はエンショウが君を上手く使いこなせなかったからだ。これから共に学園の発展に励まないか?」


 ソウソウの更なる誘いに、ソジュは自身の身の上を語り出した。


「私は元々弓道部の一部員に過ぎなかったのを、エンショウが部を乗っ取り、更には主だった部員を処分してしまった為に私にまとめ役を任せ、いつしかエンショウ軍全体の指揮を執るようになりました。


 それは決して私の望んだことではありませんでした。今はただ元の一部員に戻る事を望みます」


 その固い決意にソウソウはついに諦めた。


「そうか、君の意思は尊重しよう。


 しかし、エンショウが健在な内は君を北校舎に帰すことはできない。悪いが拘束させてもらうぞ」


「はい、わかりました」


 ソジュはソウソウの指示に従い、奥の間へと連れていかれた。


 ソジュを仲間には出来なかったが、ソウソウは今回の勝利でチョーコー他、多くの味方を得ることとなった。だが、エンショウに一度勝利したとはいえ、その勢力は健在であり、ソウソウにはまだ戦いが残されていた。


「我らはこれより全軍を上げ、エンショウを討つ!」


 一方、北校舎に戻ったエンショウだったが、エンショウ敗北の報に今まで鳴りを潜めていた北校舎の独立勢力センウホ・エンジュウらは一斉に反旗を翻し、ソウソウと手を結んだ。


 一転、四方に敵を抱えることとなったエンショウは、反乱鎮圧のために軍を分散、結果的にソウソウへの備えが手薄となり、北校舎に侵攻してきたソウソウ軍に敗北、ついにエンショウはソウソウの捕虜となった。


 エンショウ不在のエンショウ軍は意見の対立からカクト派、ホウキ派に分裂。勢力が更に弱まったエンショウ軍は、そこをソウソウに突かれ、各個撃破され、崩壊してしまう。


 ここについにソウソウは北校舎を制圧、エンショウ軍を倒したのであった。


 ソウソウ、エンショウを破るの一報は瞬く間に学園中に知れ渡った。エンジュツ残党のチンラン達は降伏、東南部の寝返り組も帰順、ソンサクも成果なく東校舎に帰っていった。


 そして、それは南部のリュービにも届くこととなった…


「あ、我こそは!ソウソウ軍の猿臂(えんび)将軍!サイヨウ!


 エンショウはソウソウ様に敗れた!リュービ!大人しく降伏せよ!」


 歌舞伎のような隈取りをし、大仰なポーズをとる男子生徒・サイヨウが、リュービ討伐にやってきた。


 だが、彼を待ち受けていたのは、お団子ヘアーの小柄な女生徒・チョーヒに、野球帽に、体操着の女生徒・チョーウン。共に一騎当千の強者である。


「何かイタイ奴が現れたぜ」


「じゃ、こいつはボクがいただくね」


「あ、ずるいぜ、チョーウン!」


 チョーウンは愛用のスケボー・白龍を駆り、一瞬にしてサイヨウの真後ろに回った。


「なーにー!」


 サイヨウが大袈裟に振り向くと、チョーウンは顔を突きだし、サイヨウに笑いかけた。


「歌舞伎クン、そんな遅いとボクには勝てないよ」


 チョーウンは目にも止まらぬ早業で、サイヨウの顔、胸、腹と連続で拳を三撃与えると、うずくまる暇も与えず、足払いで引き倒した。


「見事なり…バタン!」


「さて、次は誰がボクの相手かな?」


 そのあまりの速さに怖じ気づき、サイヨウの率いた部隊はあっという間に逃げ帰っていった。


「なんだったんだぜ?」


「とりあえずリュービさんに報告しておきましょう」


 俺たちリュービ軍は中央校舎南部の一角を占拠。そこを拠点にソウソウ領へ攻撃を仕掛けていた。


 その最中、チョーヒ・チョーウンによってサイヨウの襲撃の報が告げられた。


「アニキー!ソウソウんとこのザコが攻めてきてたぜ」


「ま、ボクの敵じゃなかったけどね」


「やはり来たか」


「まさか、こんなに早くソウソウさんがエンショウに勝つとは思いませんでしたね」


 俺の隣で指揮を執る、長く美しい黒髪の女生徒・カンウがそうもらした。


「その間、俺たちはフットサル部の部室を占拠するのがやっとか。


 しかも、敵の指揮官のトシュウは取り逃がすし、戦力はあまり削れなかったな。


 仕方がない、ここを放棄して逃げよう」


 俺の提案に、義妹・チョーヒが反発する。


「こんなザコが来たくらいで大袈裟だぜ。


 まだ戦力は残ってんだから戦おうぜ!」


 だが、俺はチョーヒの提案を退けた。


「チョーヒ、文芸部の時、リュウタイたちを撃退後、すぐソウソウが来ただろ。


 今、サイヨウが来たのは、ソウソウが出陣するための時間稼ぎの可能性が高い。下手に粘らず、すぐに撤退したほうがいい」


「それなら我らの南校舎に来ないか?歓迎するぞ!」


 後ろから大きな声でそう言ってくれたのは、学生には見えない、ゴツい体に、無精髭を生やした強面の男子生徒であった。


 彼は名はリュウバン。南校舎の雄・リュウヒョウより俺たちのもとに派遣された援軍の指揮官で、リュウヒョウのイトコである。


「リュウバンさん、いいのですか?


 一応、リュウヒョウさんに確認とった方が」


「なーに、俺を指揮官にしたのだからそのぐらいの裁量は認めてもらわんとな、ハッハッハ。


 まあ、心配なら俺が一足先に戻ってリュウヒョウに伝えておこう」


「わかりました。では、お言葉に甘えて南校舎に向かわせてもらいます。


 ビジク・ソンカン、君たちはリュウバンさんと共に一足先にリュウヒョウさんのところに行って挨拶してきてくれないか。俺たちは軍をまとめてから向かう」


「「はい、わかりました」」


 メガネにくせっ毛の女生徒・ビジクと、青髪にスーツ姿の細身の男子生徒・ソンカンが同時に返事をし、リュウバンと共に南校舎へ向かった。


 俺はソウソウのいるであろう中央校舎の北部を睨んだ。


「俺たちの選挙戦はここまでか。


 だが、まだ一年目。ソウソウ、来年こそ俺はお前を倒す!」




 ソウソウ陣営~


「リュービは南に逃げたか。


 これで今年の勢力図はほぼ決まったかな」


 自室に戻ったソウソウは、一息つきながらリュービの報告を受けた。


 そして、ソウソウの隣には薄紫のウェーブのかかった長い髪の女生徒が立っていた。


 ソウソウに敗れ、その捕虜となったエンショウである。


「まさか、この私があなたに負けるとは思わなかったわ」


 エンショウは遠い目をしながら、話を続けた。


「中学時代、共に生徒会に所属して、私は生徒会長だったのに、いつも後輩たちはあなたの方を取り囲んでいたわ。


 思えばあの頃から私とあなたの間には差が出来てたのかも知れないわね…」


 昔を振り返り、しんみりとするエンショウ。


「エンショウ、何を勘違いしてるか知らんが、あれはそういうのじゃないぞ」


「でも、あなたの周りにはいつもあなたを慕う数人の後輩たちが…」


「あれは私の女達だ」


「女って…もちろん、女子校ですから女性ですわ」


 ポカンとするエンショウに、ソウソウはニヤリと笑いながら近づいた。


「察しが悪いな。肉体関係を持った愛人ということだよ」


「え、え、え、だ、だって、女の子同士でそんな…え…」


 顔を赤らめ取り乱すエンショウに、ソウソウは優しい口調で話を続けた。


「女子校だったからな。割りとこういう関係は普通にあったよ」


「私も同じ学校ですが、そんな文化はありません!」


「そうか、エンショウ、嫉妬していたのか。可愛い奴だな」


 ソウソウのエンショウの頭を撫でた。


「やめなさい、ソウソウ」


「エンショウ、いつも付けてる小鳥の髪飾りはどうした?」


「あれは…逃げてる最中に失くしましたわ」


「そうか、確かあれは父からの贈り物だと言っていたな。


 エンショウ、君はもう父の籠の中の鳥では無くなったのだ。私のところに来い」


 ソウソウは、エンショウの唇を優しく指で撫でた。


「ま、待ちなさい、ソウソウ!


 こういうことは愛し合った者同士ですることです!」


「そうか、じゃあ愛してくれ。私もお前を愛すから」


「そういう話じゃ…んっ…」


 ソウソウはエンショウに口づけすると、そのままソファーに押し倒した。




「はぁ…はぁ…ソウソウ…」


「エンショウ、君の処分だが、私の愛人にならんか?」


「はぁ…はぁ…愛人?馬鹿な事言わなっ!んん!」


「愛人にならないか?」


「んっ…は、はい。あなたの愛人になります…」




 エンショウを降したソウソウは中央校舎と北校舎を支配し、学園一の勢力となった。


 ここに選挙戦は決着がつき、ソウソウ新生徒会長が誕生したのであった。


 ソウソウ新生徒会長はジュンイクたち腹心で生徒会執行部を編成し、新体制を作り出した。


 そして新たな学園生活が始まった。




 一方、俺、リュービは南校舎のリュウヒョウに迎えられ、彼女が部長を務める弁論部に所属することとなった。


 だが、ソウソウとの戦いを諦めたわけじゃない。俺を含め、東校舎のソンサク・南校舎のリュウヒョウ・西校舎のリュウショウとまだまだソウソウに従わない者は多い。


 俺たちの目は次期生徒会選挙に向けられていた。


 そして、時は流れ、俺たちは二年生に進級した。


 第四部 完

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