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第54話 進撃!エンショウ大陣営!

 ブンシュウ捕縛の一報はエンショウを大いに怒らせた。


「ガンリョウに続き、ブンシュウまで失ったですって!


 リュービ、あなたのことは報告が上がっています。敵将カンウと話をしていて、ブンシュウの救援に動かなかったそうね。やはりあなたはソウソウと繋がっているのではありませんか」


 エンショウは俺に対して疑惑の目を向ける。真実をそのまま喋っても納得はしてくれないだろう。


「あれはカンウをこちらに引き込もうと説得をしていました。


 それに私はソウソウと一度戦い敗れています。何故、今さらソウソウにつけましょうか」


 多少の嘘は混じってるが、今さらソウソウに寝返れないのは事実だ。


「あなたの失態でガンリョウ・ブンシュウを失いました。あなたにこれ以上部隊を預けておくことはできません」


 赤髪に毛皮帽子をかぶったリュービの幼馴染み・ケンショウが反論する。


「お待ちください。リュービは優秀な指揮官。ガンリョウ・ブンシュウを失った今、彼女らの代わりが務まるのはリュービだけです」


 茶髪に金のネックレスをつけた男子生徒・カクトが横やりを入れる。


「それは聞き捨てなりませんね。我が軍の指揮官には私やジュンウケイがいますし、勇将ならチョーコー、コウラン、カンジュン、ショウキと揃っております。こんな裏切者に頼る必要はありません」


 北校舎を統べるお嬢様・エンショウはカクトの意見を(うなず)きながら聞き入っている。


「それもそうね。リュービ、あなたに預けた部隊は返してもらいます。


 そして、リュービ・ケンショウ、あなたたち二人は後方部隊に編入します」


 どうやら今度ばかりはエンショウを動かすことは叶わなかったようだ。


「わかったら、早くしなさい!」


「はい、わかりました」


 俺は部隊を返上し、ケンショウと共に部屋を退席した。


「すまない、ケンショウ。俺のせいで君まで降格させてしまった」


「気にするなよ、リュービ。


 それに前線でカクトたちに振り回されることを思えば、後方にいた方が気が楽かもしれない」


 リュービたちの退席と入れ替わりに教室に入ってきたのは、銀髪に褐色肌のやたら発育のいい女生徒・キョユウであった。


「エンショウ、ソウソウ軍が攻めてきたわ!」


「生意気ね。カクト、返り討ちにしてやりなさい!」


「お任せください!」




 ソウソウ軍の武将たちがエンショウ軍の陣営の前に参列していた。


「エンショウ軍、出てこい!ソウジンが相手だ!」

挿絵(By みてみん)


「我が名はジョコー!かかってこい!」


「ソウソウ軍将チョーリョー見参!」


「私の名はカンウ!お前たちの相手は私です!」


 女顔の男子生徒・ソウジン、赤髪の男子生徒・ジョコー、道着姿の男子生徒・チョーリョー、美しい黒髪の女生徒・カンウがそれぞれ部隊を率いて、エンショウ軍の周囲から攻撃を仕掛けた。


 迎え撃つエンショウ軍の陣頭指揮を執るのは茶髪の男子生徒・カクト。彼は攻撃を仕掛けるソウソウ軍の武将たちを見て嘲笑った。


「動きの素早い軽装兵で撹乱する作戦か。しかし、そんな兵力ではこのエンショウ軍はビクともせんぞ!」


 ソウジンたちは左右に素早く部隊を展開させていく。しかし、その兵力は少なく、エンショウ軍を包囲するにはどう見ても足りなかった。


 カクトはエンショウ軍に指示を出した。


「全軍、守りを固めて遠距離攻撃!


 怯んだところでチョーコー・コウランは出撃。敵に突撃して撃ち破れ!」


 エンショウ軍の主力軍・弓道部の攻撃を受け、ソウジンたちの動きが止まる。


 そこへエンショウ軍の武将、緑髪を一つ結びにした男子生徒・チョーコーと黄色い短髪の男子生徒・コウランの二人がソウソウ軍に切りかかった。


「私はエンショウ親衛隊・梁柱騎士団が一人・チョーコー!ソウソウの将よ一戦を交えん!」


「このジョコーが相手だ!」


「同じく梁柱騎士団のコウラン!誰が俺の相手だ!」


「このチョーリョーが相手をしよう!」


 エンショウ軍の左右にてジョコー対チョーコー、チョーリョー対コウランの一騎討ちが始まった。


 ジョコーもチョーリョーも共にソウソウ軍を代表する武闘派だったが、相手の二人もエンショウ軍の主力武将。その勝負は一進一退で互角の攻防戦が繰り広げられた。


「ふー、ガンリョウ・ブンシュウの他にまだこれほどの相手がいたか!」


「さすがはソウソウ軍の将。だが、私も遅れを取りはしないぞ!」


 カクトの右側手前で展開されるジョコー対チョーコーの一騎討ちはいつまでも終わりそうにない。左手奥で行われているチョーリョー対コウランも同様のようであった。


「チョーコー・コウラン!何をちんたらやっている!射撃部隊、援護しろ!」


「弓矢の攻撃が激しすぎる。全軍撤退!」


 弓道部の遠距離攻撃に耐えかねて、ソウジンの撤退命令に全軍が従った。


「はっはっは、逃げて行くぞ!見たか、これがエンショウ軍の強さだ!」




 ソウソウ軍拠点・中庭~


 臨時生徒会室のすぐ目の前、『内容のない思考は空虚であり、概念のない直観は盲目である。』と書かれた石碑が隅に立つこの中庭に、臨時生徒会室を防衛するような形でソウソウは陣営を築いていた。


 撤退したソウジンたちは軍団の女党首・ソウソウの前に出頭した。


「いやぁ、負けました。エンショウ軍は強い」


 ソウジンは苦笑しながらソウソウに報告した。


「それで、どうだった?」


「前軍の指揮はカクトがとっています。射撃部隊を中心とした編成ですな。前線指揮はガンリョウ・ブンシュウに代わってチョーコー・コウランがとっています」


 続けて赤髪の男子生徒・ジョコーが報告を行う。


「そのチョーコーと手合わせしましたが、ガンリョウ・ブンシュウにも引けを取らない猛者。部隊も統率がとれており、相手にするのはなかなか苦戦するかと思われます」


 次に道着姿の男子生徒・チョーリョーの情報が伝えられる。


「コウランもなかなかの手練れでした。しかし、こちらは率いている部隊に乱れが見えました。猪武者という印象です」


 さらに美しい黒髪の女生徒・カンウが付け加える。


「他に遊軍はカンジュン・ショウキ。どちらも兵数は少ないですが、かなり足の速い部隊です。


 それと…リュービはいないようでした」


 報告を終えたカンウは寂しげなような、安堵したような表情であった。


 その報告を受けて赤黒い髪と瞳の女生徒・ソウソウは答えた。


「そうか…リュービは先のブンシュウ戦で戦わなかったからな。降格したか、後方に回されたか…


 このまま前線に出てくれなければ私としてはありがたいがな」


 そこに新たに白髪ポニーテールの女生徒・ガクシンが入ってきた。


「ガクシン、只今戻りました」


「戻ったか、後軍の様子はどうであったか?」


「はい、後軍の全体指揮はジュンウケイ。部隊数は前軍の半分程度と思われます。


 しかし、固く守って我々の挑発には応じませんでした」


 ソウソウは、ガクシンの報告にあったジュンウケイの名に反応した。


「後軍はジュンウケイか。


 あの男は昔、風紀委員にいたから面識があるが、本来せっかちな男でじっくり腰を据えるタイプではない。付け入る隙があるかもしれんな」


 新たにソウソウ軍に加わった黄色いパーカーを着た女軍師・カクがソウソウに助言する。


「やるなら後軍でしょうね。隙なら前軍の方が多そうですが、いかんせん数が多すぎます。


 それに上手く後軍を崩壊させれば連鎖的に前軍も崩壊させることができるかもしれません」


「しかし、後軍の全容がわからなければ迂闊(うかつ)に攻められなんな」


「密偵を放ち、探ってみましょう」


 カクは素早く数名の者に指示を出した。彼女は新参だが、既にソウソウの軍師として馴染んでいるようであった。


 そこへおさげ髪の女軍師・ジュンユウが入ってソウソウに報告した。


「エンショウ軍が全軍を上げて、ここカントの中庭に向けて、進軍を開始したようです」


「ついに来たか!ウキン、防衛の準備は出来たか」


「準備は万全です!」


 ソウソウの呼び掛けに、切れ長の目の女生徒・ウキンはメガネに手を掛けながら答える。


 防衛指揮官・ウキンの指揮の下、ソウソウ軍は迅速に防衛隊形をとり、エンショウ軍の襲撃に備えた。


 その様子を睨み付けるように眺めるエンショウは部隊への指示を出そうとしていた。


「中庭に陣地なんて小賢しいわ。弓道部、前へ!」


 しかし、そのエンショウの指示を遮る者がいた。白い厚手の外套を羽織った長身の女生徒・サイエンであった。


「お待ちくださいエンショウ様。


 ソウソウ軍の真後ろは臨時の生徒会室、その隣は学園長室です。矢を射て、もしも学園長室にその害が及ぶ事があれば遊びでは済まなくなります」


「うるさいわよ、サイエン!」


 そこへ現れた銀髪、褐色肌の女生徒・キョユウがエンショウをなだめた。


「まあまあ、エンショウ。最近のあなたは怒りすぎよ。


 では、学園長を北校舎に移すのはどうかしら。生徒会長代理はあなたなのだから、そのまま生徒会の機能まで奪っちゃいましょう。そうすれば私たちが勝ったも同然よ」


 だが、その言葉はエンショウを怒りを収めることは出来ず、反対に怒りを増幅させるばかりであった。


「このエンショウ以外に(にしき)御旗(みはた)は必要ないわ。下がりなさい!」


「…わかったわ」


 勝利を目の前にしたエンショウは、学園長の権威を必要とはしなかった。むしろ、自分の権威を弱めるものという認識であった。


 一喝されたキョユウは引き下がるしかなかった。


「幼馴染で大親友のこの私の意見を退けるなんて、偉くなったわね、エンショウ…」

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