第46話 決起!反乱者リュービ!
ここ文芸部の活動拠点である図書室に、現文芸部部長・シャチュウ以下、文芸部員が集められていた。
これはリュービからの指示であったが、ソウソウからの命令だとしかシャチュウは聞かされていなかった。
「リュービさん、突然みんなを集めてどうしたのですか?何か緊急の事件でも?」
「すまない、シャチュウ。我ら文芸部はソウソウと戦うことになった。ソウソウ配下の君を拘束する」
シャチュウは側にいた文芸部員たちにあっという間に引き倒された。
「な、なにをする!離せ!」
しかし、シャチュウの叫びはむなしく響き、そのまま縛られ、別室へと連行された。
「さて、これよりこのリュービがここの指揮を執る。
みんなはソウソウと戦うために、すぐ防衛準備に入ってくれ」
だが、そのリュービの命令を遮るように、茶髪にヘアバンドをつけ、胸を開いた学生服から赤シャツを見せている男子生徒が怒鳴り散らした。
「リョフに敗れ、ソウソウにすがったお前が今さら何を言い出す!
俺はお前をここの部長とは認めんぞ!」
彼は文芸部の副部長・ソウヒョウ。次期部長職を望んでいたが、その後、文芸部は熾烈な戦いに巻き込まれ、支配権が転々とした結果、今も副部長を続けることとなった生徒だ。
各勢力に眼を付けられたこの文芸部の部長をやれるほどの器量はないが、欲望が解りやすい分、動かしやすい。
「そうですね、俺はここの部長に相応しくないでしょう。しかし、このままソウソウに従えば第二、第三のシャチュウが送り込まれ、永遠に文芸部はソウソウの配下となることでしょう。
文芸部は文芸部の手で守るべきです。ソウヒョウ先輩、あなたが部長となってこの文芸部を率いてください。そしてソウソウの脅威を退けてください」
「お、俺が部長か…お、おう。いいだろう、文芸部は俺に任せろ!
共にソウソウと戦おうじゃないか!」
部長の話に一転、ソウヒョウは分かりやすく上機嫌になった。
「お願いします、先輩。今、エンショウと提携の話をつけております。
我らが側面からソウソウを脅かせば打倒ソウソウも夢ではありません」
「そうか、では、エンショウの話は任せる。俺が部長だ!みんな俺についてこい!」
得意満面なソウヒョウをよそにくせっ毛の女生徒・ビジクが俺のもとにやってきた。
「良かったのですか、彼に部長を任せて」
「肩書きはどうでも良い。部長になりたいというのなら彼に任せよう。
俺の狙いはあくまで打倒ソウソウ!」
中央校舎・臨時生徒会室~
エンジュツ軍の捕虜を連れ、シュレイ・ロショウの二将がソウソウのもとに帰還した。
「ソウソウ様、パーパス達成し、ただいま戻りました」
「つまり、用事終わらせました」
「シュレイ・ロショウ、戻ったか。
ん…リュービはどうした?」
出迎えたソウソウだったが、そこにいるべき者の姿はなかった。
「は、所在不明のエンジュツのサーチのタスクをこなすというリュービのサジェスチョンにアグリーし、残っていただきました」
「おい、ロショウ!」
ソウソウの一喝にビビったロショウが早口で説明する。
「ハッ!つまり、エンジュツを捕らえ損ない、リュービがその捜索任務を行うというので我らは任せて帰りました」
「何、それでお前たちは帰ってきたのか?」
「は、三つの理由によりそのように判断しました。
一つ、今回のプロジェクトリーダーはリュービにコミットメントされており、このグループのイニシアチブを握っているということ。
二つ、我らはエンジュツグループのプリズンを多く抱え、コストパフォーマンスが著しく低下していること
三つ、プレジデントのグレートシールを入手し、それをソウソウ様に届けようと思ったこと
以上、三つの理由によりNRしました」
「つ、つまり、総大将のリュービの指示であったこと、エンジュツ軍の捕虜が多かったこと、生徒会長の認証印を入手したので、それを一刻も早くソウソウ様に届けようと帰ってきました」
「ほぉ、会長の認証印が見つかったのか?」
シュレイ・ロショウの手より生徒会長の認証印がソウソウに手渡された。
生徒会長の認証印の持ち手には立体の龍の彫刻がついている特注の品だ。情報にあった通り、その龍の角は片方折れ、色は変色しており、間違いなく本物であろう。
「ジョキュウという者が持っておりました」
「会長認証印…これに今さらどれ程の価値があろうか…しかし、災いの種がなくなったとも言えるな。
ジョキュウが持っていたか。ジョキュウといえば黄巾党鎮圧にも功績あった人物だ。
どこに行ったのかと思っていたが、そうか、エンジュツのところにいたか。我らのとこに来たのならこのまま、生徒会にお招きするとしよう」
ソウソウの発言に、傍らに立つ茶髪に、ツリ目、高身長の女生徒・テイイクが一喝する。
「何を呑気な事を言われているのですか!リュービが野に放たれたのですよ!」
続けてポニーテールに、男装姿の女生徒・カクカが詰め寄る。
「そうです!ソウソウ様と距離を取ろうとした以上、危険です!
文芸部にいるゾウハやシャチュウと連絡を取り速やかに奴を拘束しましょう」
テイイクやカクカの諫言に、少し寂しそうにソウソウは答える。
「あいつがその気ならもう間に合うまい…
一応、連絡は取ってみるか」
中央校舎・文芸部付近~
「ソウソウから連絡を受け、来てみれば…
まさか、リュービが文芸部を占拠して独立しているとは」
茶髪に長身の、チントウの兄・チンケイは黒フレームの眼鏡をかけ直しながら嘆いた。
その隣の銀髪ショートの妹・チントウが文芸部の教室を見つめながら答える。
「エンショウ対策で出動していたゾウハたちを除き、多くの文芸部部員がリュービの反乱に与しているようです」
淡々と答える妹を、チンケイはじっと見つめた。
「チントウ…珍しく私に勉強を教えて欲しいと言ってきたが、本当は私の足止めが目的ではないのか?」
「に、兄さん、何を言うのですか!
私はリュービなんて…もう…」
「そうか…」
そのチントウの寂しげな目に、チンケイはおおよそを察し、それ以上の追及を止めた。
「私はソウソウの元に行き、直接報告する。お前はどうする?」
「私も…共に参ります」
「来ればもう、リュービとは敵同士だぞ」
「わかっています。私はリュービと戦います」
チンケイ・チントウ兄妹は臨時生徒会室に赴き、事の顛末をソウソウに報告した。
「チンケイ・チントウ、報告ご苦労だった。やはり、リュービは叛いたか。
なれば、私自らリュービを攻めよう」
ソウソウの発言に小柄な、眼鏡をつけた女生徒・ジュンイクが驚いて割って入った。
「いけません、ソウソウ様。
ソウジンたちがスイコを倒しましたが、まだ合気道部は不安定です。あそこをエンショウに渡してはなりません。
ソウソウ様は予定通り合気道部に行き、しっかり抑えておくべきです」
「ふぅ…仕方がないか。
オウチュウ・リュウタイの二人にリュービ討伐を命じろ。私は予定通り合気道部へ出陣する。
それとジュンイク、我が陣営で妙な動きをする者がいないか監視しておけ」
「ソウソウ様、そこまでは…いえ、わかりました。注意しておきます」
ジュンイクが下がると、ソウソウの前に、黒のインナーにメガネの男子生徒・シュレイが歩み出る。
「ソウソウ様、この度のリュービのコンプライアンス違反は私のミスです。私にペナルティをアサインしてください」
「つまり、俺たちに今回の失態の罰を与えてください」
隣の日に焼けた男子生徒・ロショウがシュレイの発言を解読する。
「ふぅむ、罰か。そうだな、別に無くてもいいが、それでは納得せんか。
では、お前たちの将の地位を剥奪し、兵を取り上げる。今、対エンショウの最前線にいるウキンの配下となり、エンショウに備えよ」
「アグリーです」
「つまり、わかりましたです」
シュレイ・ロショウの二人は教室を退出した。
「どうもシュレイの話し方は好きになれんな。
働き自体は悪くないんだがな」
ソウソウは一息つくと、微笑みながら空を見上げた。
「しかし、リュービよ。私に逆らう道を選んだか。ここにいれば私が栄華の道を用意してやったというのに…
ふふふ…リュービ、この軍の主としては悲しく思うが、私個人としては嬉しく思うぞ。
リュービよ、もう容赦はしない。どちらが真の英雄か決めようではないか!」
リュービもまた同じく空を見上げいた。
「ソウソウ、お前が俺を英雄と呼ぶのならどこまでも抗って見せよう。
だが、俺はお前を英雄とは呼ばない。お前は奸雄だ。
乱世の奸雄よ、決着をつけようじゃないか!」