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第39話 戦慄!美しき暴将!

包囲網を突破し、エンジュツの元に赴く使者に、リョフ自ら名乗り出た。


彼女はチンキュウの制止も聞かず、リュービのみを連れ出し、教室を飛び出した。


「リョフ様、お考え直しください!リョフ隊、何をしている。早く準備してリョフ様を止めろ!」


チンキュウは急いでリョフの親衛隊をかき集めようと叫んだ。


「リョフが出るぞ!指揮官及び腕に覚えのあるもの!南階段に至急集結せよ!」


ソウソウの指示に、ソウソウ軍の将達がリョフを待ち構える。


「私は…リョフ…最も…強い…者…だ…道を…空けろ…!」

挿絵(By みてみん)


「リョフを止めろ!」


「邪魔…!」


「指弾の威力、くらいな!」


「邪魔…!」


「怯むな!続け!」


「邪魔…!」


「ここを通すな!」


「邪魔…!」


「行くぞ」


「邪魔…!」


カコウトン・カコウエン・ソウジン・ジョコー・ガクシン…ソウソウ軍の武芸自慢の将達が、リョフに次々と蹴散らされていった。


続いて小柄な、空手着姿の少女がリョフの前に立ち塞がった。


「リョフ!次はこのキョチョが相手だ!」


「邪魔…!」


空手着姿の少女・キョチョは、リョフの一撃を受け止め、リョフに組み付いた。


組み付いたキョチョは、そのまま力任せにリョフを押し返していく。


「お、キョチョが善戦してるね!このままいけるじゃない!」


「いや、カクカ。あれでは無理だ」


リョフは組み付くキョチョを持ち上げると、そのまま投げ飛ばした。


「リュービ…行く…ぞ…!」


拘束した俺は、リョフに引っ張られるまま後ろに付き従う。


「待ちなさい!兄さんを返しなさい!」


「リョフ!決着つけるぜ!」


「カンウ!チョーヒ!」


「リュービ…やら…ない…!」


カンウ・チョーヒは、次々と突き、蹴りを繰り出し、リョフを牽制、隙を見てリュービ奪還を謀ったが、リョフはその手を薙ぎ払い、二人を弾き飛ばした。


「リュービは…誰にも…渡さ…ない…!


我は…リョフ…天下…無双の…リョフ…だ!!!」


リョフの怒りの一撃がカンウ・チョーヒを襲う。二人は悲鳴を上げて後方に吹き飛ばされた。


「カンウ・チョーヒ!


リョフ、これ以上闘うのはやめてくれ」


二人は満身創痍になりながらも、再び立ち上がった。


「諦めねーぜ、アニキを…俺達のアニキを返してもらうまでわな!」


「そうよ…その人は私達の兄さんよ!返しなさい!」


「うう…うう…」


鬼気迫る二人の様子に、怯んだリョフは一歩後ろに下がった。


「まずい、リョフ様までやられたら終わりだ!リョフ様!早くお戻りください!リョフ隊、早くリョフ様を助けよ!」


「クッ…うぉぉぉぉーーー!


勝負…お預け…だ!」


「逃がしません!」


「待ちやがれ!」


「リョフ隊!押し返せ!カンウもチョーヒも弱ってるぞ!」


チンキュウの指示でリョフの親衛隊が出撃。カンウ、チョーヒの行く手を阻み、後一歩のところでリョフを取り逃がした。




「リョフは捕まえられませんでしたね」


「リョフは強いと聞いていたが、あの強さは次元が違うね」


ソウソウ本陣ではリョフ戦の一部始終を見ていたジュンユウ、カクカがソウソウに対して語った。


「美しい…」


「へ?ソウソウ様?」


「リョフは気高く、気まぐれで、一途で、傲慢、自らを最上と信じて疑わない。まさに絶世の美女。


初めリュービを独り占めするリョフに嫉妬を覚えたが、今はリョフを独り占めするリュービに嫉妬すら覚える。


いっそリョフとリュービを並べて一夜を共にしたいものだ」


恍惚な表情を浮かべ、ソウソウはカクカの肩に手を回す。


「だが、カクカ、今は…」


「ソウソウ…さ…ま゛


んっ、ん…ンッ!ンン…ンー!ンー!」


「ぷはっ…はぁ…はぁ…今はリョフ捕獲に専念せねばな」


「はぁ…はぁ…ソウソウ様…そういうキスはベッドの上だけにしてくれ…」


「うーん、来るとこ間違えましたかね」




リョフ陣営~


「リョフ様、無事で良かった」


リョフの帰還にチンキュウはホッと胸を撫で下ろす。


「リュービ…怪我…ないか…」


「あ、ああ、大丈夫だよ」


「私達…部屋…戻る…少し…休む…」


「ここでもリュービか!」


床に当たるチンキュウに、チョーリョーが言いづらそうに報告に来る。


「チンキュウ殿、先程の出陣でリョフ隊のセイレン殿が敵の捕虜になったようです」


「何!…セイレンは確かテニス部占拠の時には部下にいた奴だったな」


「はい、トータクに風紀委員長に任命された時以来の部下です」


「最古参じゃないか。それについてリョフ様は何か言われなかったか?」


「特には…リュービ殿の心配ばかりで…」


その報告にチンキュウは愕然とした。


「まずい、まずい、まずい。古参の勇士の捕縛にさえ無関心で、リュービの事ばかりとなれば皆の心は離れる。


隠蔽するか…いやすぐバレる。とにかく戦わなければ、戦果がなければとても士気が維持できない!」


リョフの籠る準備室の戸をチンキュウは激しく叩いた。


「リョフ様、戦いましょう!出て来てください!」


「さっき…戦った…勝てな…かった…もう…いい…」


「先程は突然の出撃で備えがなかった。作戦を立てましょう。


リョフ様がまず出陣し、敵を集めます。そこを私やコウジュン達で後ろから攻撃します。私達をソウソウが攻撃したら今度はリョフ様が背後から攻撃するのです」


「無理…だ…私でも…勝て…なかった…お前達…私より…弱い…集ま…っても…弱い…」


「それでも…弱くても戦わなければならない時があるんです!」


チンキュウは体を震わせながら怒鳴った。


「出てこいリョフ!


このままでは…何も出来ずに負けてしまう…今まで多くの人を裏切り、騙し、巻き込んだ。


それも全ては勝つためにしたこと。負けてしまっては何も残りはしない…」


リョフは何も答えない。戸を挟んで長い沈黙が流れた。


俺はリョフを、彼女を警戒し過ぎたのかもしれない。俺はカンウ・チョーヒの元に戻りたい。だけど、ここでうつむき、弱りきった少女を見捨てることはできない。俺はどうすればいいんだろうか…


しばらくの沈黙の後、戸の向こう側から何の音も聞こえなくなり、リョフは頭を上げた。


「チンキュウ…」


しかし、外からは物音一つ返ってはこなかった。


「チンキュウ…?」


リョフは立ち上がり、戸を開けたが、そこには誰もいなかった。




「お前達はコウセイ、ギゾク、ソウケン!これは何の真似だ」


チンキュウは、三人の部下に拘束され、外に連れ出されていた。


「余計な口きくんじゃねぇ」


「俺達はソウソウ軍に投降する。お前はその土産だ」


「馬鹿なことはやめろ。引き返せ!」


「馬鹿なことだと?


お前やリョフの方が余程馬鹿な事をしてるじゃないか!多くの人を巻き込み、振り回したお前達の方がな!」


「もうすぐ出口だ。急ぐぞ!」


「お前達、そこで何をしている?」


外を警戒していたチョーリョーが、その様子に気づいた。


「チョーリョー、助けてくれ!」


「まずい、見つかったぞ、走れ!」


「チンキュウ殿!お前達待て!」


チンキュウを連れ出した三人は出口を開け、ソウソウ本陣に走った。チョーリョーは阻止しようと急いで外に飛び出したが、外には既にソウソウ自ら軍を率いて待機していた。


「チントウの知らせ通りだな。チンキュウを連れてコウセイ達がやって来た!全軍突撃!」


「ソウソウ軍に連絡済みだったか!」


「チョーリョー、私に構わず戻れ!このままでは全軍に指示を出せる者がいなくなる!」


「しかし!」


「入口が空いたぞ!全軍突撃!部室まで駆け抜けろ!」


カコウトン指揮の下、開かれた玄関口にソウソウ軍が殺到した。


「まずい、押し返せ!」


しかし多勢に無勢、チョーリョーはカコウトン達に押されていった。


その中を一人の少女が進んできた。その少女は長身で、腰まで伸びたポニーテールに紅のリボンを巻き、深いスリットの入った長いスカートを履いた少女だった。その表情は怒りに満ち、その気迫は他を圧倒した。


「チンキュウを…返せ…!」

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