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第37話 俊足!姿なき鬼神!

ソウソウ陣営・臨時生徒会室~


ピンクのツインテールの女生徒・ソウコウは、反逆したチョウシュウ軍と戦ったが、勝利を得られず、撤退してきた。


「ごめんソウソウ、チョウシュウ軍に負けちゃった。ファン倶楽部のみんなもボロボロよ。まさかチョウシュウがあそこまで戦上手だったなんて…」


「おそらくカクの入れ知恵だろう。よし、チョウシュウは私自ら討つ」


しかし、そこに丸眼鏡の小柄な女生徒・ジュンイクから別の報告がもたらされる。


「大変です、エンジュツ配下のキョウズイがテニス部部室に向かって出陣したそうです」


この報告に隻眼の男子生徒・カコウトンが立ち上がる。


「恐らくキョウズイが率いるのはエンジュツ主力軍、規模からいってもチョウシュウよりこちらを優先すべきじゃないのか?」


「狼狽えるな。


ふん、エンジュツめ、チョウシュウの勝利で気を良くしたか。だが、チョウシュウは自分のために戦っているに過ぎん。あまり宛にすると痛い目みるぞ。


ウキン・ガクシン!それとリュービ!」


ソウソウに呼ばれた俺はウキン・ガクシンと共に返事をした。


「ウキンにはキョウズイ軍討伐の総大将を命じる。ガクシン・リュービはウキンに従い共に討伐に赴け。


我等ソウソウ本隊はチョウシュウ軍を蹴散らし、そのままエンジュツ本拠地を襲撃する!」


ソウソウの指示で生徒会室の面々が慌ただしく動き出す。


「カコウトン、お前は遊軍だ。ここに残り、万一の時はどちらにも救援に赴けるよう準備しておけ」


「わかった、任せておけ」


「では、全軍出撃!」




「あーあ、なんでアニキがウキンって奴の下なんだよ」


「仕方ないだろチョーヒ、俺達は兵力が少ないんだから。それにソウソウ軍の実力を見る良い機会だ」


「兄さん、ウキンさんとガクシンさんが来られました」


黒髪ロングに眼鏡、切れ長の目のお堅そうな女生徒・ウキンと白髪ポニーテールの、凛とした顔つきの小柄な女生徒・ガクシンの二人がわざわざ俺のところに来てくれた。


二人とは反トータク連合の時に面識はあるが、じっくり話すのは初めてだな。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

「リュービさん、改めてよろしくお願いいたします。私は宇ノ金則子(うのかね・のりこ)、ウキンです。こちらが岳真文(がく・まあや)、ガクシンです」


「どうも」


二人とも雑談を好むタイプではないようで、早速ウキンは本題に入った。


「リュービさん達には左翼をお願いしたい。私は右翼から襲いますので同時に挟み撃ちにしましょう。敵を押し止めたところへガクシンが突撃します」


「わかりました。しかし、ガクシン一人で突撃なんて大丈夫なんですか?」


「ふふ…ガクシンは我が軍随一の切り込み隊長、余計な心配ですよ」




キョウズイ軍副将・リホウが大将・キョウズイに敵のソウソウ軍の陣営を報告する。


「キョウズイ司令官、敵部隊です。左右に陣取っているようです」


「ソウソウじゃないのか。大した数でも無さそうだな。


ガクシュウ・リョウコウ、左右に展開、蹴散らしてしまえ!」


キョウズイ軍より二部隊が先行、左右に別れ、ウキンと俺達の部隊にそれぞれ進軍する。


「来たぞ!カンウ・チョーヒ、突撃!」


「行きますよチョーヒ!私達の力を見せてやりましょう!」


「へへ、こんな奴ら何人いたって敵じゃねーぜ!」


俺達の部隊はカンウ・チョーヒを先頭に、襲い来る敵部隊へ突撃した。


一方、右翼陣営のウキンの部隊は、自ら進軍はせず、その場で陣形を構築。敵を迎え撃った。


「白兵部隊第一陣整列!前進!


第二陣整列!前進!第三陣整列!前進!


よし、敵の進軍が鈍りましたね。射撃部隊!構え!射て!」


ウキンの指示に従い、太鼓の音が響き渡る。彼女の部隊は一切の乱れなく敵を殲滅していく。


この状況下で一切隊列が乱れず、整然と進軍していく。あれがソウソウ軍の実力か。


「そろそろいいでしょう。ガクシンに連絡、突撃開始!」


ウキンの合図と共に後方に潜伏していたガクシン隊がキョウズイ軍に向けて動き出した。


「あれだけの兵数で何を手こずっている。押し返さんか!」


キョウズイは声を張り上げて前線部隊を叱咤するが、既に前線の二部隊の劣勢は覆しにくい状況まで追い込まれていた。


「キョウズイ司令官、後方より伏兵!猛スピードで進んできます」


「そんなもの人の盾を作り押し止めよ。その間に前の陣を切り崩せ!」


「敵将止まりません。真っ直ぐこちらに向かってきます!」


「真っ直ぐってお前…」


「敵襲…ぐはっ!」


後方より一直線に大将を目指したガクシンは副将・リホウを討ち取り、キョウズイの前に現れた。


「ホントに真っ直ぐ進んで来やがったのか、こいつ!」


「名はガクシン。キョウズイだな、覚悟!」


「待…ぐはっ!」




リョフ陣営・文芸部準備室 ~


「チントウ…それは…本当…か…」


「はい、たった今入った情報です。エンジュツのキョウズイ軍はソウソウのウキン・リュービ・ガクシン軍に敗れました。これでエンジュツの威光はより一層弱まるかと…


リョフ様…?」


チントウの話が終わるより先にリョフは部屋を飛び出していた。


「コウジュン…チョーリョー…頼み…が…ある…」


「リョフ様、流石にそれはいくらなんでも…」


「わかりました」


「コウジュン殿!」


「リョフ様の指示は絶対だ。チョーリョー、行くぞ」




キョウズイ達、指揮官が敗れるとエンジュツ軍は蜘蛛の子を散らすように逃げ去ってしまった。


キョウズイ・リホウを捕らえたガクシンはそのままウキン隊に合流した。


「ガクシン、大丈夫でしたか?」


「どうということもなく」


「貴方らしい」


戦闘を終えたウキンから、俺のスマホへと連絡が入った。


「ウキンです。こちらはキョウズイ・リホウ・リョウコウの三将を捕らえました。リュービさんの方はどうですか?」


「こちらでもガクシュウを捕らえました」


「これで4人とも捕らえましたね。では、我々は帰還します。まだエンジュツ軍が残っている可能性があります。リュービさん、殿(しんがり)をお願いするので警戒しつつ帰還してください」


「わかりました」


生徒会室に帰還しようと俺達が移動を開始したその時、ビジクより急報が告げられた。



「リュービさん、後方よりリョフ軍です!コウジュン・チョーリョーが部隊を率いて全速力でこちらに向かってきます!」


「なんだって!リョフはエンジュツと手を組んでたのか?まさか、狙いは俺…?」


ウキンの方でもリョフ軍を確認したようで、再び電話が入った。


「リョフ軍がこちらに向かってきてます!これより全力で撤退いたします!」


「リョフ軍の目的は俺の可能性が高い。恐らくあの速さでは追い付かれます。二人は捕虜を連れて構わず逃げてください。我々もすぐ後を追います」


「わかりました。カコウトンに救援を依頼しています。後武運を」


ウキンからの通話が切れると、彼女達の部隊は全速力で移動を開始した。


「とにかく我々も逃げるぞ!」


「チョーヒ、兄さんの側についていなさい。絶対に離れないように!」


「わかったぜ!カン姉はどこに行くつもりなんだぜ?」


「私は最後尾を守ります!」


「カンウ、気をつけて!」


「はい、兄さん!」


リョフ軍の先頭を走るのは顔に傷のある、ガタイのいい男子生徒・コウジュン。チョーリョーと並ぶリョフ軍の武将だ。


「いたぞ!リュービを捕らえろ!」


「行かせません!」


長く美しい黒髪の義妹・カンウが最後尾でコウジュンを迎え撃つ。


しかしそこに、薄い青髪の道着姿の男子生徒・チョーリョーが参戦する。


「カンウ、お前の相手は私だ!


我が名は張本遼(はりもと・はるか)、人呼んでチョーリョー!君も名を名乗れ!」


「人の名を呼んでおいて名を聞きますか!」


「それが武の礼だ!」


「なるほど、嫌いじゃないですよ、そういうの。我が名は関羽美(せき・うみ)、人呼んでカンウ!」




「ギリギリ間に合ったか!」


リュービ軍とリョフ軍が戦闘を開始したのと時を同じくして、遊軍・カコウトンの部隊が到着した。


「気焔万丈、カコウトン軍の精鋭に告ぐ!我等の目的はリュービ軍救援だ!かかれ!」


「アニキ、カコウトン軍だぜ!」


「来てくれたか!」


カコウトンはそのままコウジュン隊に突撃した。


「お前が大将か!」


高見順兵(たかみ・じゅんぺい)、コウジュンだ!邪魔をするな!」


「それが俺の役目よ!」


リュービ軍から引き剥がすように、カコウトン隊はコウジュン隊の動きを妨害した。


「さすがリョフ軍、兵一人一人が強く速い。いやこのコウジュンの指導力か?」


「コウジュン隊反転!目標カコウトン軍!突貫!」


「何!…ぐはっ!」


コウジュン隊の突撃にカコウトン隊は吹き飛ばされた。


「我が部隊(営)の突破力は如何なる敵陣をも砕き陥落される、故に名付けて〔陥陣営(かんじんえい)〕!」


「クソ!お前達、部隊を立て直せ!」


「一度崩れた部隊なぞすぐに立て直せるものではない。そこでゆっくりしていろ!


陥陣営、次目標はリュービ!突貫!」


「何が陥陣営だ!めんどーなこと言ってんじゃねーぜ!」


一人飛び出したチョーヒは、コウジュン隊もろとも一撃で吹き飛ばした。


「我が陥陣営が崩れた!これがチョーヒの武勇か!」


「武将なら一騎討ちを挑んできな!」


「チョーヒ、残念だが、我ではお前には勝てん。だが、我らの目的は既に達せられた」


「っぜ!」


チョーヒの横をスルリと抜ける一つの影は、先頭まで一目散に駆け抜けて、そのまま俺を呑み込んだ。


「リュービ…貰った…」


「リョフ!いつの間に!」


気付けば俺はリョフの脇に抱えられていた。


「テメー!アニキを返しやがれ!」


「撤…収…!」


「全軍撤退!」


リョフは俺を抱えているとは思えない俊敏さで遁走し、合わせてコウジュン隊も撤退を開始した。


「せいや!」


「ぐっ!」


一方、後方ではカンウが、チョーリョーを地面に叩きつけ、勝利を得ていた。


「私の敗けだ…カンウ。だが、どうやら役目は果たせたようだ」


勝利したカンウの目に写ったのは義兄・リュービを抱え、疾風のように去っていくリョフの姿であった。


「兄さん!まさかリョフ程の武将が気配を殺し、ただ兄さんを捕らえる事だけに専念するなんて…」


「待て!アニキを返すんだぜ!」


兄を奪われ、チョーヒはリョフ目掛けて駆け出していた。


「待ちなさい、チョーヒ!今の私達では取り返せない。軍を立て直すことが先です」


「カン姉!でもこのままじゃアニキが!」


「ソウソウ軍と合流しなければ私達だけでは無理です!


チョーリョー、帰ってリョフに伝えなさい!必ず兄さんを取り戻す!もし兄さんに不埒な事をしたら私はあなたを許さないと!」


「私を捕らえはしないのか?」


「貴方ではリョフは人質交換に応じないでしょう」


「そうだな…


今回の件、わかってくれとは言わない。すまなかった。では…」


去っていくチョーリョーを見送りながら、チョーヒは不安そうにカンウの方を見た。


「カン姉…」


「チョーヒ、必ず兄さんを取り戻しましょう。リョフとの最後の戦いです!」

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