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第36話 反逆!チンケイの智謀!

エンジュツ陣営~


「何ですって!リョフが私の会長就任を認めないですって!あの怪物、裏切りましたわね…」


小柄で幼い顔つきの女生徒・エンジュツにとってこの報告は不快極まりないものであった。


「チョウクン!それにヨウホウ・カンセン!」


「「「はっ!」」」


エンジュツに呼ばれ、灰色髪のメイド少女・チョウクン、短髪眼鏡の男子生徒・ヨウホウ、坊主頭の男子生徒・カンセンが前に進み出る。


「チョウクン、貴方にリョフ討伐の総大将を命じます。リョフを捕らえて連れてきなさい」


「しかし、相手はあのリョフですよ!私ではとても…」


いつもはイエスマンのチョウクンも、相手があのリョフと聞いて、エンジュツの指示に難色を示した。


「エンジュツ軍きっての将軍が何弱気なこと言ってるの!相手は百人足らずの弱小部じゃない!


貴方にはその三倍の兵を預けます。倒してきなさい」


「は、はい、わかりました…」


エンジュツの頑固さをよく知るチョウクンはやむなく承諾した。


「ヨウホウ・カンセン!貴方達にはチョウクン軍の先鋒を命じます!前回の失敗を償いなさい!」


「わかりました…」


「それとチョウシュウと連携を取り、ソウソウを牽制させなさい!


キョウズイ!その間にソウソウ征伐軍を編成しなさい!」


「わかりました!」


赤毛の男子生徒・キョウズイはチョウクンと並ぶエンジュツ軍の戦闘指揮官であった。




今回の陣容を聞き、ヨウホウとカンセンは意気消沈としていた。


「まさか我々があのリョフの先鋒とは…はぁ…」


さらに追い討ちをかけるように大将・チョウクンより過酷な指示が出される。


「いいこと、あなた達。とにかく突撃して敵戦力を少しでも削ぎなさい。それがあなた達ができるせめてもの奉公よ。わかった?」


「その上、特攻とは…俺達、無事に帰れそうにないぞ…」




リョフ陣営~


チンキュウがリョフのこもる準備室の戸を激しくノックする。


「リョフ様!エンジュツ軍がこちらに向かっております!出て来てください!」


「今は…戦う…気分…じゃ…ない…チンキュウ…お前に…任す…」


「 敵は我が軍の三倍です。リョフ様がいなければとても敵いません!」


しかし、準備室の戸が開けられることはなかった。


困り果て戸をひたすら叩くチンキュウを、茶色い短髪に、黒い眼鏡をかけた男子生徒・チンケイが止める。


「出てこないものは仕方がないでしょう。いる者だけで対処しましょう」


「何を呑気なことを!元はと言えばお前ら兄妹がソウソウと組めなどと(そそのか)さなければこんなことにならなかった!


お前らが責任を取ってエンジュツ軍をなんとかしろ!」


「わかりました。なんとかしてみましょう」


「なんだと?」


チンキュウの無理難題に顔色一つ変えず応じるチンケイに思わず聞き返した。


「では、なんとかするので少し出掛けてきます」


部屋にこもるリョフの表情は曇っていた。


「もう…戦いは…嫌だ…戦っても…戦っても…何も…手に…入らない…何故…


みんな…私より…弱い…の…に…」




エンジュツ軍・ヨウホウの陣~


「ヨウホウさん、文芸部のチンケイという人が来ました」


「何?もう敵が来たのか!敵戦力は何人だ!」


「それが…一人で来られました」


「何?たった一人だと?」


「降伏でしょうか?」


「うーん、そういえばチンケイはエンジュツ様と家族ぐるみで付き合いがあり、昔、その縁で参謀に招いたが応じなかったと聞いたことがある。我等に寝返る気だろうか?


とにかくエンジュツ様の友人でもある、丁重にお通ししろ」


ヨウホウの部下に通され、チンケイは陣地の奥でヨウホウと対面した。


「君がヨウホウか?」


「はい。チンケイさんは何用でこちらに来られたのでしょうか?」


「少し二人で話がしたい。ついてきてくれないか?」


「…はい、わかりました。あまり遠くでないなら構いません」


ヨウホウは言われるまま、部下達から離れ、チンケイと二人きりになった。


「それで、チンケイさんは何用なのでしょうか?」


「エンジュツは新会長代理と名乗ってるそうだな」


「名乗ってるというか、就任されまして…」


「なら君達は滅びる。だから別れの挨拶に来た」


「何故、そんなことを…」


「君自身がよくわかってるんじゃないか?ワガママ娘が勝手に会長を名乗って周りが従うはずはないということを」


「それは…」


「君が助かる道はただ一つ。エンジュツから離れなさい」


「そ、そんなことできるはずがない!」


「君が気にしているのはリカク・カクシに荷担した過去だな。おおよそエンジュツの差し金だろう」


「何故それを…」


「誰でもわかるさ。エンジュツに保護してもらってるかも知れないが、エンジュツが敗れれば君はすぐ捕まるぞ」


「 …どうすればいい」


「リョフにつけ。そして共にエンジュツを捕らえ、彼女の差し金であったことを暴露し、謝罪しろ、それしか道はない」


「しかし、エンジュツは強大だ。俺がついたぐらいで戦局が変わるとは思えない」


「貴方はカンセンとは仲がいい。彼も味方につけろ。こちらには鬼神リョフがいる。リョフ・ヨウホウ・カンセンが合わさればチョウクンを撃退できる。


おそらく今頃エンジュツは対ソウソウ軍でも組織しているだろう。ならこちらにこれ以上の兵は投入できない。


その間に我等はソウソウと手を結びエンジュツを挟撃する。生徒会代行のソウソウに協力すれば君らの印象も少しはよくなろう」


「上手くいくでしょうか?」


「このままいってエンジュツが勝利すると思うか?土壇場で裏切っても学園の印象は悪いままだぞ。


どうせワガママに振り回されてきたのだろう。今さら何を忠義立てる」


「わかりました…我等はリョフにつく。カンセンにも私から話してみます」


「君が賢くて良かったよ」




ヨウホウとの交渉を終えたチンケイは、そのまま文芸部に戻り、チンキュウに報告した。


「チンキュウ、話はつきましたよ」


「な、何をしてきた?」


「敵将ヨウホウ・カンセンはこちらの味方です。合図と共に反転し、チョウクンを討ちます」


「本当だろうな?」


「違っていても今より悪化することはないですよ」


「…コウジュン、チョーリョー出撃!ヨウホウ・カンセンとほどほどに戦い、チョウクンが近づいたところで、協力してチョウクンを討て!」


コウジュン・チョーリョー隊とヨウホウ・カンセン隊の偽りの戦いが始まった。彼らの裏切りを前提とした戦いだったが、後方から見ていたチョウクンには、ヨウホウ達が善戦しているように写った。


「おお、ヨウホウ・ヨウホウがリョフ軍を押してるじゃない。さて、手柄を奴らだけにやるわけにはいかないわね」


チョウクンが文芸部に近づいたところで突然、ヨウホウ・カンセンが反転し、リョフ軍とともにチョウクン軍に襲いかかった。


三軍の攻撃を受け、チョウクン軍は壊滅。チョウクン自身はなんとかエンジュツの下まで逃げ帰った。


「チョウクン、まさか貴方がおめおめと逃げ帰ってくるとはね」


「申し訳ありません、エンジュツ様。ヨウホウ・カンセンの突然の裏切りでとても対処できず…」


「今回はヨウホウ・カンセンの裏切りが原因ですし、貴方のこれまでの功績から不問とします」


「寛大な処置ありがとうございます」


「埋め合わせはしてもらいますからね」


「は、必ずや」


「それで元テニス部のカキに任せていたソウソウ配下の寝返り交渉はどうなりましたか?」


エンジュツの問いに武装メイド少女・キレイが恐る恐る答える。


「それが…カキは職務を放棄し、脱走した模様です…」


「何ですって!もーどいつもこいつもなんて役に立たないの!


そうよ、ソンサクがいたわ!あの子にリョフを討たせましょう!」




東校舎・ソンサク陣営~


「サクちゃん、エンジュツが会長を自称したそうですね」


「ああ、ユーちゃん。その上、うちらにリョフ討伐をしろとのお達しじゃ」


「それは…時が来ましたね」


「そうじゃね。うちらはエンジュツと絶縁する」


ソンサクは水泳部奪取後、近隣の中小部を打ち倒し、吸収、今やエンジュツにも対抗しうる大勢力を築いていた。その強さから人々は彼女を小覇王ソンサクと呼んで讃えた。


ソンサクはその勢力を背景に、正式にエンジュツと手を切ることを宣言した。


「ソンサクが絶縁ですって!あの恩知らず!コウソンサンはどうなってますの」


「コウソンサンは一応祝福はしていますが、エンショウ戦で忙しく救援は送れないと…」


「どいつもこいつ…ホントーにどいつもこいつも…」


「エンジュツ様、チョウシュウ軍がソウソウの先鋒を撃ち破ったそうです」


チョウクンよりもたらされた朗報に、エンジュツの表情は晴れやかに変わる。


「…やればできるじゃない。


ソウソウよ!ソウソウさえ討てば私達の勝利よ!ソウソウ軍を吸収すれば一大勢力になるわ。そうすればリョフもソンサクも従うしかなくなる。あの子達を従えてコウソンサンと共にエンショウを討てば私が名実共に会長よ!


チョウシュウにはこのままソウソウ軍を引き付けさせなさい。


キョウズイ!ソウソウ討伐軍の準備は出来てるわね!」


「は、ぬかりなく」


「キョウズイ!貴方にリホウ・リョウコウ・ガクシュウの三将を付けます!ソウソウのテニス部を強襲し、奪い取りなさい!」


「は、わかりました!」


「二方面から攻めれば、ソウソウだってきっと対処できないはずよ。見てなさい、私を軽んじた全ての生徒にめにもの見せてあげるわ!」

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